第8話

 ヤノフスキー市一番街、ボロノフ通りの『ボルトン』にて。

 いい気分でマカールおすすめのウイスキーを堪能していた俺の背中に、声をかけてくる者が今日もいた。


「失礼いたします、ナザロフさんでございますか?」

「ああ、そうだが……?」


 応答しながら振り返ると、そこには黒髪を短く刈り込んだ上に毛糸の帽子を被り、分厚いジャケットを着込んだ人間の男性が立っていた。

 固さの目立つキルク語に、鼻の低い顔立ち、黒髪。ルージア人でないことは容易に判断がついた。

 俺が目を見開きながら返事を返すと、その男性はホッとした笑みを向けてくる。


「よかった、やっとお会いできました。私、こういう者でございます」


 外国人にありがちな、わざとらしすぎる丁寧なキルク語をそのままに、男性は懐から紙製の名刺を差し出してきた。

 ヤパーナ帝国エージェント協会、清宮支部所属。特級エージェント。エージェント識別番号ジェイ-101429。斎藤サイトウ 篤志アツシ。紙面には箔押しされたヤパーナ帝国エージェント協会のロゴが輝いている。

 名前だけでもすぐに分かる。やはりこの男はヤパーナ人だ。


「丁寧にありがとう、遠くヤパーナからご苦労なことだ。とりあえず、座るといい」

「お邪魔いたします」


 名刺を受け取りながらアツシに右隣の席を勧める。彼は帽子を外しながら深く一礼して、俺の隣に座った。

 その身体つきはか弱く見えるが、それでも特級エージェント。物事の裏側で的確に動いて、着実に仕事を完遂するタイプのエージェントなんだろう。俺と似ている。

 カウンターの奥を眺めるアツシへと、俺はほんのり申し訳ない表情を向けた。


「すまないな、ヤパーナ語で話が出来ればスムーズなんだろうが、俺はキルク語しか喋れないから」

「いえ、お構いなく。こうして酒席を共に出来るだけでも、有難いことでございます」


 ルージア連邦の公用語であるキルク語しか喋れないことを謝ると、彼も彼で丁寧に頭を下げてきた。

 アツシの語ったところによると、エージェントとして活動する上で、現地の言葉で会話することは重要らしい。彼も世界のいろんなところで仕事をするので大概の言語を話すことはできるが、流暢な会話は難しいということだ。

 そんな話をしながら人の好さそうな笑みを見せる彼に、俺も口角を持ち上げつつカウンターに頬杖を突く。


「そうか、ならいい。さて……サイトウ、と言ったな。特級エージェントということは、お前がヤノフスキーに来た理由は『光の家教会』の案件か?」

「さすがの慧眼。仰る通りでございます」


 俺が水を向けると、アツシは笑みを見せたままでこくりと頷いた。それを受けて、俺は深くため息を吐きながら手元のロックグラスを揺らす。


「やれやれ、世界各地のエージェント協会から特級や一級を集めて事に当たっているとは聞いたが、本当にそうだったとはな」

「はい、ヤパーナ、アマリヤン、ブレトン、世界中の腕利きが、ルージアに集まってきております。『光の家教会』およびそこに資金を落としていた諸貴族の腐敗は、非常に大規模な事件と判断されております」


 苦笑を見せながら、アツシもシャツの襟元を直した。

 『光の家教会』とそこに多額の寄付をした貴族を追い詰めるべく、連邦のエージェント協会は日々動いている。既に計画の実行は間近らしく、ヤノフスキー市内には多数のエージェントが世界各地から集っていた。

 俺は昨日も、アマリヤン連合国からやってきた一級エージェントの集団に情報を売っていた。今日はこの男と会う前に、『シルバニ』でクリコフ領からやってきたとある特級エージェントと情報を交わし合っている。

 この数日で一ヶ月分くらいの金を稼げる程度に、俺はエージェントと情報のやり取りをしていた。ヤノフスキーに他にもいる情報屋も、俺と同じくらいに稼いでいることだろう。教会の連中には悪いが、俺達は他人の悪事で美味い飯が食えていた。


「確かにな……さて、仕事に移らせてもらおう」


 そう話して、俺は手元のロックグラスの中身を干す。カラン、とグラスの中の氷を鳴らして、俺がアツシに差し出すのは、手元に置いてあった小皿だ。正方形にカットされたチョコレートが、五粒ほど盛られている。


「このチョコレートに合うと思う酒を、一杯俺に奢ってくれ」

「こちらに、ですか? 一つ失礼いたします」


 一言断りながらチョコレートを口に運んだアツシが、口を閉じるや目を見開いた。

 やはり、ヤパーナ人にとっては連邦のチョコレートはとても甘く感じるらしい。


「うわっ、すごく甘い……ですがなかなかに美味でございますね」

「グルカロフ手製の生チョコレートだ。美味いだろう? この店のウイスキーのいずれとも相性がいいが、その中でも向き不向きはあるものだからな」


 口をむぐむぐさせながら感想を述べるアツシに、俺は笑みを向けた。カウンターの向こうでマカールも自慢げに笑っている。

 マカール手製の生チョコレートは、この店のウイスキーのどれにも合うように作られている。俺もよく注文しては、酒とのマッチングを楽しんでいた。彼曰く、生クリームの配分が重要らしい。


「なるほど……失礼します、メニューブックを拝見しても?」

「ああ、どうぞ」


 アツシがマカールに声をかけて、マカールもさっとメニューブックを取り出して彼に渡し。

 メニューブックに列記されたウイスキーの銘柄に視線を落としながら、ふとアツシの視線が俺の方、空になったロックグラスに向いた。


「ちなみにナザロフさんは、今は何を飲まれていらっしゃいますか?」

「これか? 『クライネッシュ』14年だ。ブレンデッド用を中心に作る蒸留所じょうりゅうじょだからあまり知られていないが、美味い」


 アツシの問いかけを受けて、俺は自分の前に置かれていた『クライネッシュ』のボトルを持ち上げた。シンプルな寸胴型ずんどうがたのガラス瓶の中で、琥珀色をした液体が揺れる。

 瓶に貼られたラベルを見て、アツシが小さく首をかしげた。


「あまり世の人に知られていないお酒や、隠れた銘酒といったお酒が、お好きでいらっしゃる?」

「いや、どうかな。美味ければ有名だろうが無名だろうが、特に気にしない。仕事柄、大衆酒も飲まなければならないから……おっと」


 さりげなく、俺の好みを探る問いを投げてきたアツシ。それに何の気なしに答えた俺は、気付いてすぐに口を噤んだ。

 いけない、自分の口でさらさらとヒントを並べ立てそうになってしまった。とはいえ、俺の酒の好みは幅が広いからそこまで答えを探すのに役立ちはしないし、初対面の相手ならそうするのがむしろ正解だけれど。

 アツシも俺から答えを引き出そうとしていたことに気が付いたようで、ハッとした表情になって頭を下げた。


「失礼いたしました」

「いや、問題はない。むしろ初めての人間なら、そうするのが正解だ」

「大概の奴は何とかして、自分だけで答えを出そうとしちまうからな。とは言えルスラーンの酒の好みなんて、聞いてもヒントになりゃしないんだが」


 ひらりと手を振る俺に同調して、マカールもカウンターに肘をつきながらアツシに言葉をかけた。このマスターもなんだかんだで俺と付き合いが長い。俺がこの店で飲むウイスキーが、一つの方向性に留まらないことをよく知っている。

 話に加わってきたマカールに、アツシが視線を向けた。


「マスター様は、こちらのお店に並べているウイスキーで、特に自信を持って提供できるという銘柄をお持ちでいらっしゃいますか?」

「おっと、そう来たか。それなら数本、これぞってやつがあるぞ」


 アツシがマカールに声をかければ、面白そうに目を見開いた彼がすぐにカウンター向こうのウイスキーの棚に向いた。

 それを見て、驚きに目を見張る俺だ。ここまで即座に、酒を選ぶ判断を店のものに任せられる人間は、ヤノフスキー市内にはそういない。

 この青年は店で酒を飲むことに慣れているのか、あるいはプロに任せた方が安心だと知っているのか。いずれにせよ、初対面の人間に酒を勧めるのなら正しい動き方だ。

 果たしてマカールが、ウイスキーを並べた棚の上の方から取り出した瓶を三本、俺とアツシの前に置く。


「『ラーガフェル』21年、『オルドベック』オールウァイネ、『グレンファダッシュ』21年だ。どれも高いが、いい酒だぞ」

「これは……」

「なるほど……」


 並べられた瓶を見て、俺もアツシも、揃って顎の下に手を置いて目を凝らした。

 いずれもブレトン連合王国の、それもスクートッシュ地方にある蒸留所の酒だ。『ラーガフェル』と『オルドベック』はスクートッシュ地方のアレイア島に位置する、泥炭ピートと塩の風味が強い、個性の強いウイスキーだ。『グレンファダッシュ』もそれより落ち着いたニュアンスながら、泥炭ピート香が豊かなことで知られる。

 しかも、いずれも熟成年数が長かったり、ボトリング年数が限定された特殊なものだったり。値段もバカにならないが、それだけの金を出す価値がある酒ばかりだ。

 俺は思わずマカールに不満げな視線を投げる。この三本から一本を、他人の奢りで飲まさせるなど、酷だ。


「グルカロフ、卑怯だぞ」

「俺はこの店のおすすめを提示しただけに過ぎないぞ、ルスラーン。卑怯などと言われる理由はないね」


 俺の批判的な物言いをさらりとかわしながら、マカールは肩をすくめた。

 確かに、彼はアツシに言われた通りにこの店で自信を持って勧められる酒を出してきただけに過ぎない。それは間違いない。

 しかし、しかしだ。このラインナップはいくらなんでも卑怯だ。どれを選ばれても俺が喜ぶことが目に見えている。


「そうじゃない……ただ、どれも俺がいつかは飲みたいと思っていたボトルじゃないか。高すぎて手が出せなかったから飲めずにいたやつらで」

「そんなにお高いのでございますか?」


 俺が頭を抱えるのを、不思議そうに見ながらアツシが言う。

 それに対して頷きを返しながら、俺はそれぞれのラベルを指さした。


「『ラーガフェル』が6,500セレー、『オルドベック』が6,400セレー、『グレンファダッシュ』が7,000セレーだ。いずれもワンショットでそれだけするんだぞ」

「うわぁ……」


 それぞれの値段を言えば、アツシがはーっと長い息を吐いた。

 当然だ、ウイスキーのワンショットで4,000セレーを超えたら高級酒の部類に入る。それがこれらの酒はいずれも、ワンショットで6,000セレーを超えてくるのだ。

 ヤパーナ帝国の通貨であるイェンに換算すると、『グレンファダッシュ』21年で3,500イェンになるんだったか。いずれにせよ高い。

 呆気にとられるアツシに、マカールがくいと顎をしゃくった。


「どうする? 手が出せないってんならもう少しグレードを落としたボトルを出すが」

「いえ、大丈夫です。『オルドベック』オールウァイネをワンショット、ストレートで彼にお願いいたします……私は、うぅん、『グレンファダッシュ』の10年を、ロックで」


 しかしアツシは怯まなかった。提示された中の一本、『オルドベック』の瓶を指し示す。一緒に自分の酒も注文したが、こちらはだいぶグレードを落としてきた。

 『オルドベック』の瓶を取ってメジャーカップに注ぐマカールから視線を外し、俺はアツシに小さく頭を下げる。


「すまないな、負担をかけてしまったか」

「いえ、大丈夫でございます。私も特級エージェントでございますから、資金に余裕はございますので」


 申し訳なく思う俺に、アツシがゆるゆると首を振った。

 彼も特級エージェント、それなりに羽振りはいいわけで。高級酒の一杯くらい、俺に奢って懐が痛むわけでもない。

 しかし、そうであるなら『グレンファダッシュ』10年とは、随分安いところを攻めたものだ。値段のわりに飲みやすく万人受けする酒だが、重たさがないので俺はあまり頼まない。


「その割には、自分で頼む分は『グレンファダッシュ』の10年なんだな。ワンショット1,200セレーだぞ、それ」

「お恥ずかしい話ですが、あまり風味の強いアルコールが得意ではないのでございます……『グレンファダッシュ』は、比較的抵抗なく飲めて、気に入っておりますゆえに」


 そう言いながら恐縮するアツシだ。どうやら酒の好みが、俺とは逆の位置にあるらしい。まぁ、好みなんて得てしてそういうものだ。

 と、マカールが酒を用意し終わったらしい。俺の手元にあったロックグラスを片付けて、代わりに『オルドベック』を入れたテイスティンググラスをことりと置く。


「はいよ、ルスラーン。『オルドベック』オールウァイネだ」

「ありがとう」


 礼を述べてグラスを手に取り、香りを鼻に含む。そうすれば煙たいレベルの泥炭ピート香が鼻いっぱいに広がった。奥の方には潮風を感じさせる塩の香りもある。

 く、と口に少量含めば舌どころか口腔全体を突き刺し、覆うくらいのアルコール感と塩気が押し寄せる。

 この味の強さ、香りの濃さ、それらが高いレベルでまとまっているグレードの高さ。これぞ『オルドベック』と言わしめる味だ。


「ふう……すごいな」

「だろう? この滑らかな泥炭ピート香、ソルティーでオイリーな質感、それらを調和させて一つの作品に仕上げる酒自体の味わいと香味。まさに『オルドベック』の集大成というやつだ。他じゃ飲めないぞ」


 俺が息を吐き出すと、マカールが満面の笑みを俺に向けてきた。自信のほどが伺えるというやつだ。

 これは確かに、自信を持って勧められるというもの。俺のように酒に精通している人間に勧めるなら、余計にそうだ。

 自然と、俺の手がデザート用フォークを取る。


「まったくだ。そしてこれに、生チョコレートを合わせる、と……あぁ、やはり」


 フォークで生チョコレートを刺し、口に運んで。

 そうすれば濃厚な甘みとミルキーな質感が、口の中に残るアルコール感を覆い尽くし、和らげてくれる。それでいて酒の風味を塗りつぶしはしない、いい塩梅で風味を残してくれている。

 これは、絶妙だ。絶妙だからこそ、俺は悩んでしまうわけで。


「参ったな。答えとしてはこの上ない物なんだが、提示したのがサイトウというよりも、グルカロフだからな」


 俺がぼやくと、マカールが大げさに肩をすくめた。


「なに言ってるんだよ。『分からないものを分からないままに選ぶより、分かる者に判断を仰ぐ』という選択を、このヤパーナ人はしたんだぜ。それも立派な選択じゃないか」


 その言葉に、苦笑を返す他ない俺だ。

 自分で酒を選ぶことは大事だ。しかし選びきれない時、プロである酒場の店主に任せるということも、また大事なことだ。そしてその「他人に任せる」という決断を下すには、相応の判断力がなくてはならない。

 これは、一本取られたというやつだろう。


「ふっ、そう言われたら返す言葉もないな。いいだろう」

「ありがとうございます……それで、対価の方はどのように」


 ほうと息を吐くアツシ。彼に視線を投げながら、俺はカウンター下に入れていた鞄を取り出した。


「心配するな、情報はここで渡す……と、そうだその前に」


 と、鞄の中に手を入れながら、俺はアツシにまっすぐ視線を投げた。


「サイトウは、『光の家教会』に乗り込む側か? それとも貴族の家に乗り込む側か?」


 その問いに、アツシの手が彼のシャツの襟に伸びた。襟元をぐっと握り、整えながら、彼が口を開く。


「貴族側の担当を任されております。三番街モニア通りの――」

「あぁ、オブモチャエフ子爵家か?」


 したり顔で彼の言葉に声を重ねる俺だが、しかしアツシは頭を振った。


「いえ、そちらではございません。チェルニャンスキー侯爵家です」

「ん……?」


 そうして零された言葉に、目を見張る俺である。

 チェルニャンスキー侯爵家。当主のイワン・チェルニャンスキーをはじめとして、アニシン領の政治に大きく関わっている、領内きっての名貴族だ。

 押収された教会への寄付リストには無かった名前だが、俺はすぐにそれ・・を思い出す。


「あぁ……なるほど、把握した」

「なんだなんだ、ルスラーン。侯爵様まで教会に黒い金を流しているのか?」


 納得した様子の俺へと、マカールが身を乗り出しながら聞いてくる。チェルニャンスキー侯爵は市内でも五本の指に入る大貴族、スキャンダルがあればすぐに話題に上るだろう。

 マカールの興味深げな視線に目を向けつつ、俺は彼へと言葉を返す。


「『光の家教会』を運営していて、先日逮捕されたレギーナ・ロブーヒナがいただろう。彼女の後援者の一人が、チェルニャンスキー侯爵家の誰からしい」

「はーん、教会そのものでなく、教会の運営者に対しての献金というやつか」


 俺の言葉に、彼も納得した表情をして。

 私営教会である『光の家教会』には運営者がいて、既に警察に逮捕されているのは市民の知るところ。その運営者であるレギーナ・ロブーヒナには、貴族の後ろ盾があることも調査で分かっている。

 その後援者に、チェルニャンスキー侯爵家の誰かがなっている、という話が持ち上がっているのだ。侯爵家の紋章の入った小切手がレギーナの家から見つかっている。

 となれば、そちらの家を調査出来る情報を渡さねばなるまい。俺は鞄の中から、エージェント協会の紋章の入った封筒を取り出した。


「ということは、サイトウに渡すべき情報はこっちじゃないな。こっちだ」


 封筒の中から印刷された紙面を取り出し、内容を確認して、ふさわしい一枚を取り出してはアツシに手渡す。勿論、これらの情報もアニシン領のエージェント協会の確認が入った後だ。


「チェルニャンスキー侯爵家の関係者の名前と住所、そいつらがここ数ヶ月の間に侯爵家の敷地以外に訪れた場所のリストだ」


 手渡された紙面を見て、アツシは目を見開いた。

 当然だろう、その一枚の紙には、チェルニャンスキー侯爵家に出入りする下働きや庭師、使用人の一覧と、彼らが侯爵家以外の場所に出入りした記録が、事細かに記されているのだから。


「これは……素晴らしい。捜査の助けになることは間違いないでしょう。ありがとうございます」

「情報料と振込先の銀行口座はこれになる。異論がなければ、三日以内に振り込んでくれ」


 その紙面とは別に、俺の銀行口座と情報料を記したメモ書きを手渡すと、アツシは恭しくそれを受け取った。


「承知いたしました……しかし、さすがはアニシン領の情報屋のトップに立つお方でございます。ここまで詳細な情報が手に入るとは」


 彼が感心しきりの表情で俺へと向けた目を細めると、俺はそれに苦笑を以て返す。


「飲んだくれの情報網も侮れないものだぞ。それに、昔からヤパーナでは定石だろう? 『情報が欲しければ酒場に行け』とな」

「ははは、確かにその通りです」


 ヤパーナ帝国でよく言われる話も持ち出しながら言えば、アツシも本来の性格を見せたように笑う。

 そうして俺は次の客が来るまでの間、この異国の青年と酒席を共にしながら雑談に花を咲かせるのだった。

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