008. うん、6:4で死なないわ

「あっちに進んだら……1時間以内に死ぬ。あっちだと10分で死ぬわ。

 こっちだと、うーん、どう足掻いても2日後くらいに確実に死ぬかな?

 こっちの方に行くと、あら、当分死なない……けど、死ぬまで劣悪な環境で扱き使われて、過労死するわね。

 途中まで進んで左に曲がると、向こう1週間くらい、確実な死は無さそう……うん、6:4ろくよんで死なないわ」

「割と死ぬなぁ」


 山本さんの【危機感知:超級】は超級の名に恥じない高性能で、危険度の高低を、かなり正確に測れるみたいだ。

 危険度が比較的低い方には、人里とかあるんじゃないかな。


 あのガチャ、通常ならでかい宝石300個という高額なお布施を払い、99%の即死トラップを潜り抜ければ、その見返りは大きいんだね。


「そういえば、僕は何引いたんだろ。さっき見逃したんだよね」

「私も気になるわ。内容次第で生存率が上がるかも」

「アイテムは出てなかったから、スキルの方だよなぁ」


 ステータスメニューの「スキル一覧」タブを開き、中身を確認する。


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■スキル一覧

 LegendRare(★★★★★)

 ・【ガチャでノーマルしか出ない呪い】

 Normal(★☆☆☆☆)

 ・【敏捷性上昇:下級】

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 呪いの癖に★★★★★星5とは……いや、この排出率設定だと、確かに価値はあるんだけど。


「敏捷性? 動きが速くなるってことね」

「特に実感ないけどなぁ」

「スキル名を長押しすると説明が出るみたいよ」


 え、あ、本当だ。というか、本当にヘルプを実装しろ。


 説明文曰く、【敏捷性上昇:下級】の効果は、「敏捷性が1%上昇(同一効果は重複する)」とのことらしい。


「つまり、100メートル走を16秒で走る僕は、16秒で101メートル走れるようになるってことか」

「えっ私より遅……いえ、でも、効果が重複するのね。毎日ガチャを回せば、意外と馬鹿にならないわよ」


 山本さんはスポーツ得意なんだねぇ。


「ほら、100回引けば16秒で200メートル走れるのよ! すごい! 超人!」


 それまでこの世界で生き延びられたらね。


 僕達は微妙な空気の中、山本さんの指し示す比較的・・・安全な方向へと、歩を進めていった。

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