第10話『遺跡都市の遺跡に潜ろう!』
俺とアリスは聖剣おじさんの案内で古代遺跡まで向かった。
さすが観光地である道も整備されていて、
目的地まで安全にたどり着くことができた。
遺跡までの道は多くの人が通る道ということもあって、
大地がしっかりと踏みしめられてほどよく固くなり歩きやすい道であった。
石や草もなくとても快適な道であった。
遺跡の前に近づくとその大きさが分かる。
どれくらいの年月と労働力を費やしたのかと
思わされるほどの大きさの遺跡だ。
「でかいな。とにかく、でかい」
「そうね。とっても大きい遺跡ね。子供の頃にママに読んでもらった絵本の冒険物語に登場した古代遺跡にそっくりだわ!」
「ほほほっ。この古代遺跡は遺跡都市の自慢の名所なんじゃ。アリスさん、ブルーノくんに喜んでもらえて何よりじゃ。もうそろそろ付きますですじゃ」
この遺跡は一般の観光客や旅人に解放されている観光の名所だ。
都市に観光客を呼び込むための象徴的な建造物であり、
土産屋には、この遺跡の形を模した木彫りのピラミッドや、
金属製のピラミッドの模型なんかが売られている。
たいていの観光客は帰り際に記念に買っていくらしく、
遺跡都市を維持するのに大いに貢献しているとのことであった。
古代遺跡の形状はピラミッド状で、
あちらこちらに苔やツタが生えたりしている。
いかにも古代遺跡といった雰囲気を感じさせる建造物だ。
おじさんいわく、この苔やツタは雰囲気作りのためにあえて生やしているようだ。
遺跡っぽさをだすためにあえて適度に苔を生やし、
観光客に怪我をさせないように適度にツタを間引いたりしているそうだ。
思ったよりも遺跡を維持するというのは大変なようだ。
この遺跡都市を訪れる観光客のなかには、
ピラミッドに生えている苔やツタを記念に持ち帰る観光客が多いそうだ。
誰がいい出したのか分からないが、ここの苔やツタには、
恋愛成就や金運アップの効果があると信じられているそうだ。
王都の噴水のなかに金貨を入れると願いが叶うと言う、
迷信があるのと同じでどこでもこういう話はあるものだ。
もっとも王都の噂の方は意図的に流行らされたもので、
あとで金貨はこっそり回収されているらしい。
この苔やツタの美観を維持するために、
遺跡の解放時間が終わったあとの深夜や早朝に、
当番制で手入れをしたりしているそうだ。
確かに本当に無造作に放置された古代遺跡であれば、
風雨に晒され更には草や木に覆われて、
こんな美しい外観はしていないであろう。
それどころかモンスターの巣窟になっているはずだ。
この遺跡都市の人々が陰ながら努力しているから、
今もこのように立派な外観を維持しているのだ。
「おつかれさまですじゃ。ここが、遺跡の入り口ですじゃ」
「大きいな」
「確かに。巨人が作ったのかと思うくらい大きい扉ね」
遺跡の内部の石畳にはところどころに丸穴の着いた杭が、
打ち付けられており丸穴のところにはロープが通されていた。
このロープの先は立ち入り禁止という印であり、
観光客がうっかり遺跡に触れられないような工夫がされていた。
「遺跡の中はひんやりしていて涼しいわね」
「そうだな。ゆっくりと涼みながらくつろげそうだな」
「ほほほ。遺跡の一般開放の時間になると、見物客にせっつかれる感じになるのじゃ。残念ながらなかなかゆっくりくつろぐのは難しいかもしれないのですじゃな」
石畳の床をおじさんの後ろについて行きながら歩く。
それだけのことではあるのだがアリスが一緒にいるから楽しい。
巨大な遺跡のなかを歩き回り、巨大な壁画や、展示されている財宝を見て回る。
なお、展示されている財宝は精巧なレプリカだそうだ。
人が多く出入りする場所、盗難を考えたら妥当な対応だ。
「王都の外にはこんな素敵な場所もあるのね。海の見える港町も、山に囲まれたこの遺跡都市もどこも素敵だったわ! ねっ、ブルーノ」
「そうだな」
我ながら思うが、愛想のない返事だっただろうか。
いつものことではあるが、アリスの問いかけに対して、
あまりうまい返しができない自分が情けない。
心の中ではいろいろと感じていることはある。
この遺跡も港町の海も綺麗だと思った。
心の中ではそれが大切な思い出として残っているのに、
それをどうやって言葉で表現したらいいのか分からないのだ。
オフクロも親父も口数が少ないタイプだった。
俺もそれを受け継いでしまったのかもしれない。
俺がもっとうまく話せたらアリスはもっと笑ってくれるだろうか。
そう思うと少し残念な気持ちになった。
そんな俺の顔を見て、何を思ったのかアリスは微笑む。
そして黙って俺の手を握る。
アリスの手のひらの感触がほんのりあたたかかった。
「ここは観光客には案内していない隠し部屋ですじゃ。聖剣を引き抜いたアリスさん、ブルーノくんには、特別にご案内しましょう。聖剣を引き抜くことができたあなた達にはこの先に進む権利があると思いますのじゃ」
何も目印もない壁の上をおじさんが何度か触れると、
石壁がギギギと音をたてて開いた。
その壁のあった先には地下へと通じる通路があった。
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