決戦! VSカルキノス!

「一人で吾輩とやるつもりか。今度は手心は加えん。覚悟せい」

 オレと緋刀が睨み合う。


「カルキノス、貴様は海賊の方をやれ」


『はあ? ケンカがしたいなら、あんた一人だけでおやりなさいよ。アタシ様はこの宇宙ロケットで逃亡してやるわぁん!』


 カルキノスがジェットを噴射する。


「汚い! 星雲大帝は忍者より汚いわ!」


 忍者が汚いみたいな言い方すんなよ優月!


『汚くて結構よ! 欠片が手に入ったから、あんたたちは用済みってワケ。あんたはそこで、ガキ共と遊んでなさいな! バッハハアーイ!』


「黙れ、吾輩が手にするのだ!」


 ワイヤーユニットを展開して、緋刀はカルキノスの足に取りついた。しぶとくカルキノスのハサミにユニットを引っかける。


『あーっ! ちょっと離れなさいよ! どきなさいっての! 上に上れないでしょ!』


 カルキノスが緋刀を振りほどこうとした。が、ワイヤーが食い込んで離れない。


「やかましい、貴様など墜落してしまえ! 宇宙のゴミがぁ!」


 緋刀を引っかけたまま、カルキノスが月の輝く空へと消えていく。


「あのままじゃ、欠片を持って逃げられちゃうわ!」


「ああ、それなら平気だ」

 オレは、夜空を見上げ、指を差す。


 夜の闇に、星々が集まってくる。

 いや、押し寄せてくると言った方がいいだろう。

 瞬く星々が、一カ所に集まってくる。

 カルキノスがいた場所を取り囲むように。


「銀河連邦警察?」


「ああ。カガリがあらかじめ呼んでおいた」


 カルキノスは今頃、待ち伏せていた銀河警察にとっ捕まっているはずだ。


「報告が入ったよ。カルキノスを捕まえたって」

 スマホを耳に当てたまま、カガリが言う。


「これで大安心だ。あとは二人を送って……なんだ?」



 空がオレンジ色に染まっている。

 地上にまで、戦闘員達の悲鳴が聞こえてきた。



「見て、宇宙船が炎上しているわ!」

「カルキノスの野郎!」


『おしゃべりは終わったかしら?』


 理不尽は、突然顔を出す。


 オレ達の頭上に、カニのモンスターが舞い降りてきた。今、一番出会いたくない敵だ。


「テメエ、生きてたのか?」


『あんな程度の戦力で、アタシ様の野望は止められないわよ』

 カルキノスはグフフと笑う。


「生きてやがったのか?」


『当たり前よ。アタシ様を止めたければ、あの倍は連れてくるべきね』


 カルキノスの姿もおかしい。さっきまで多脚戦車だったはずが、赤い鎧を着た緋刀の形を取っている。赤と白が混ざったローブを纏う神官のような姿をしていた。


 多脚戦車が巨大なカニ型玉座になり、緋刀が不貞不貞しく座っている。


 異様なのは、緋刀の皮膚がむき出しの機械のようにになっている所だ。これが人間なら、読者モデルと言われても信じそうな容姿なのに。


 緋刀とカルキノスが、遺伝子レベルで組み合わさったのか。

 カルキノス本体は、緋刀の眼帯と組み合わさっている。


「人間と機械の融合なんて、物理的に可能なの?」


『そうよ。年増の身体を使うのは抵抗あるけど、まあ人間になれたことだし、及第点ね』


 緋刀の眼帯から、カルキノスが顔を出す。


 顔半分がカルキノスの司る機会の身体、もう半分が緋刀というアンシンメトリーの姿だ。


「吾輩は、不満だがな」と、緋刀が不服を漏らした。カルキノスに身体を乗っ取られて、不服そうだ。


「ヤバいな。無敵じゃねえか」

 緋刀とカルキノスの仲は悪い。とはいえ、戦闘の相性は悪くなく、厄介である。


「けど、完璧じゃないわ。見なさい。あいつを」


 そういえば、あいつは幼女になりたいと言っていたが、実物の顔はロボットのままだ。造形が細かく、感情豊かではあるが。


「いくら欠片と言っても、万能じゃないみたい。あいつがどこまで世界を書き換えられるのか、そこが問題ね」


『自分を作り替えたのよ。他人も自分も、世界さえ作り替える。これこそ、欠片の力よ!』


 玉座に取り付けられたカニのハサミで、カルキノスは手稿を掴む。機械の腕を伸ばし手のひらを広げた。


『本当はあのまま逃げようと思ってたんだけど、気が変わったわ。この地球をアタシ様のコレクションにしてあげる。アタシ様をここまで苦戦させたご褒美よ!』


 ハサミ状の腕を、カルキノスが掴む。


 ハサミ腕の付け根に付いた銃口へ、光の粒子が集まる。


「やべえ、よけろ優月!」


 オレと優月が飛び退いた。


 白色の光球がカルキノスの手から放たれ、岩を溶かす。



「大丈夫か優月!」

「平気! 助かったわ!」


 爆風で、オレは吹き飛ばされそうになった。



『アンタ達のせいで、アタシ様の計画はメチャクチャよ。アジトは銀河警察に押さえられて帰れない、銀河警察には見つかる。けど、欠片だけは有効に活用させてもらうわん』


『星雲大帝、地球をあなたの好きにはさせません』


 ロンメルが口を挟んだ。


『使われているだけの輩が何を言ってるのよ? あなたはアタシ様の野望を理解できない欠陥品じゃないの!』


「アンタの方がよっぽど欠陥品よ! 人の人生を踏みにじって、平気な顔をして!」


 優月が言うと、カルキノスは不機嫌そうな声を上げた。


『お前も奴と同じ事を言うのね! 父娘揃って、アタシ様の前に立ちふさがる』


 カルキノスの繰り出すハサミを、優月のムーンダンサーが弾く。


「どういう、ことよ?」


 カルキノスと優月が、鍔迫り合い状態になる。


『アンタのオヤジを倒したのは、アタシ様だってコト』

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