それはとても可愛らしいお弁当だった。おそらくその弁当は古谷先生の手作りのお弁当ではないだろう。誰かが作ってそれを古谷先生に渡したお弁当なのだ。

 鈴音が大切な話があると伝えると古谷先生はお弁当を食べることを途中でやめて、鈴音の話を聞いてくれることになった。

「ありがとうございます」鈴音は古谷先生にお礼を言った。

「別にいいよ」

 にっこりと笑って古谷先生はそう言った。

 鈴音と古谷先生は職員室を出てゆっくりと話ができる空き教室に移動した。そこで鈴音と古谷先生は椅子に座って話をすることになった。

「木下さんが僕に話があるっていうのはすごく珍しいことだよね」と古谷先生は鈴音に言った。

「松山さんのことについて聞きたいことがあるんです」と鈴音は言う。

「松山さんの欠席理由が気になるってこと?」

「はい。そうです」と鈴音は答える。

「気になるって言っても松山さんのことは木下さんにも話せないよ。こちらには『こちらの事情』というものがあるんだ」と古谷先生は言った。

 古谷先生はとてもぼさっとしていていつも頭に寝癖を作ったまま学校にやってくるような先生だったのだけど、その性格はとても温和でなによりとても頭が良かったことから男子にも女子にも人気のある先生だった。(つまり、信頼できる大人の人だった)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る