第29話 油断大敵!
「かかったゴブっ!!」
エルモの声と同時、対岸でゴブローも叫ぶ。
どうやら主がゴブローの釣り竿にかかったらしい。
「コボちゃん! ゴブロー! 今行く!」
俺は地面を強く蹴って二人のいる対岸まで跳躍する。
いくらコボルトの力が強いといっても、巨大魚の力が予想以上であったら池の中に引きずり込まれる可能性がある。
なので、万が一を考えて、もし巨大魚がかかったら俺がそのコンビの元に付いて、危険そうなら手を貸す算段になっていた。
「これはとんでもないゴブ」
「きゃうん」
ゴブローとコボちゃんが必死に踏ん張るが、その足元の土ごと池の方に引っ張られていく。
俺はその脇に降り立ち、ゴブローたちに声をかける。
「大丈夫か?」
「大丈夫に見えるゴブか?」
「見えないな。それじゃあ俺が代わるけどいいか?」
「任せるゴブ」
「ワンッ」
二人の了承を受けた俺は、ゴブローの手から釣り竿を受け取った。
途端にぐいっと、かなりの力で引っ張られる。
「うわっとっと」
そのまま池の淵まで引っ張られるが、なんとかそこで踏ん張ることが出来た。
危うく俺自身が池ポチャしてしまうところだった。
「こんちくしょうめ」
巨大魚の思った以上の力に最初こそ驚いたものの、地力としてはこちらのほうが数倍上。
俺は足を地面に突き刺すと、竿を思いっきり振り上げた。
ばしゃーん!!
大きな水音を立てて水中から巨大魚が空に飛び上がる。
いや、俺の力で打ち上げたといったほうが正しいか。
「ほわー」
「あんな魚みたことないですわ」
対岸の拡声器からエルモとレートの声が聞こえる。
「でっかいゴブ」
「わふんっ」
空中から水を撒き散らしながら落ちてくる巨大魚に、ゴブローたちも驚いた顔を隠せない。
「あっ、やべっ」
あの巨大魚。
このままだと俺たちの真上に落ちてくるじゃないか。
俺は慌てて地面に突き刺した足を抜くと、空に浮かぶ巨大魚に向けて飛び上がった。
そのままグローブで捕まえて地面に着地する予定である。
後は表彰式の後魚拓をとって、皆で巨大魚を文字通り肴にして宴会だ。
「ほいっと」
おれは空中で巨大魚のエラを掴むと、そのまま地面に向けて落下していく。
巨大魚の方も諦めたのかなすがままだ。
「これだけ大きければ皆で食べるには十分足りるな」
俺が着地地点を確認するために下を向いてそうつぶやいた瞬間だった。
突然巨大魚がその巨大な体を大きくばたつかせたのだ。
「なっ」
しかも、その拍子に巨大魚の口に引っかかっていた釣り針が巨大魚の口端もろとももげてしまう。
「往生際が悪いぞお前っ」
完全に巨大魚は諦めていると油断していたせいだろう。
俺は思わず掴んでいた手を離してしまったのだ。
それどころか、巨大魚が頭を振った勢いで巨大魚から離れてしまう。
地面はもうすぐ。
この短時間では空を飛ぶ魔法を使えない俺は、もう一度巨大魚を捕まえることは出来ない。
巨大魚はギリギリ池の水の中に飛び込める位置だ。
このまま行けの中に逃げ込まれては、次に捕まえられるのはいつになるか。
「畜生めっ」
俺は必死に頭を働かせる。
地面に落ちるのは僅かだが俺のほうが先になりそうだ。
だったら、降りた瞬間に巨大魚に向けてもう一度飛びつけば。
「いけるっ」
後で考えれば、その時なぜ行けると思ったのかさっぱりわからない。
だが、その時の俺は思いついた作戦が完璧だと思ってしまったのだ。
巨大魚が水面に落ちる数旬前。
俺の足が地面につく。
同時、足首の力だけで体を巨大魚に向けて射出する。
「捕まえたっ!!」
巨大魚の頭が池に落ちかけた所でギリギリ俺の手が奴の尾ひれに届いたのだ。
そして――
どっぼーーーーん!!
当然のように巨大魚と共に俺は池に落ちてしまったのだった。
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