どうやらこの世界は私のことを嫌ってるようだ。

檸檬

第1話 『突然』

「はぁ…なんでこうなったのかなぁ…」


そう呟き目の前の現状を整理する。

高校三年生の夏休み、私は頭が悪いわけでもなく、良いわけでも無いから補習とかは特に無かった為、家にずっと居た。補習を受けてる同級生よりかは有意義な夏休みを送れたと思っている。

そんな夏休みの最終日、私は17時頃に商店街に散歩に出ることにした。理由は特にない。ただ、"気分" がそういう気分だったのだ。段々と暗くなり始めた空、静かになってゆく商店街。

そろそろ家に帰ろうと思い踵を返そうとしたその瞬間、突然激しい頭痛と共に誰かの声が聞こえた。朦朧とする意識の中、その声に耳を傾ける。


「君はこの世界の事が嫌いかい?」


そう、聞こえた。

激しい頭痛のせいで声に出てたかは分からないが、私は


「嫌い…っ…大っ嫌い…」


と、答えた。

理由なんて上げたらキリがない。

いじめ。家庭。理不尽、そして嘘。誰もが他人の顔を伺い、嘘を吐くこの世界が嫌いだった。

だから夏休み中は1度も外に出ずに、同級生と顔を合わせないようにし、家でもずっと部屋に篭っていた。

私は現実逃避するためにこう考えた。

"どうやらこの世界は私のことを嫌ってるようだ" と。

そうすれば楽になれる気がしたからだ。


「ふぅん…んじゃ、僕の世界においでよ。」


私は何を言っているのか理解出来なかった。

『僕の世界においでよ』?

この"僕"と言ってる人はここに住んでいるのでは無いのか、この頭痛はなんなのか。

訳が分からなくなり、混乱していた。すると、


「アハハっ、すまないね、混乱させてしまって。

まず僕の名は "レイ" と言う。気軽にレイと呼んでよ♪」


「れい…?」


「そう!レイ、だよ♪」


名前は分かったが何故、私が今こんな状況になってるのか訳が分からなかった。


「君はさっき『この世界が嫌いだ』と答えたよね?」


事実なので首を縦に振り肯定する。


「だから僕の世界においで、そして新しい"自分の居場所"を探してみないか?」


突然のことで何が何だか分からないが、"自分の居場所"という単語に惹かれた私は、


「探して、みたい…」


と、気付けば口に出していた。


「んじゃ、契約終了だ!また会おう♪」


契約とは何か、聞こうとした時にはもう意識がフェードアウトしていた。

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