第3話 人竜族の幼女をテイムした

「お兄ちゃん……誰?」


誰って言われたってなぁ……まぁ名乗っとくか。


「俺はレンジ、旅人だ。お前の名は?」



異種族の幼女は頭を左に傾け、静かに答える。


「名前……ない」


名前がない?記憶喪失なのか?ファンタジー小説ではありがちのヒロインだが、名前がない事態謎だな。


現代なら精神科の病院に連れていくところだが……。


「あ、こんな時こそアレがあるのか」


「?」


幼女の頭上に?が浮かぶ。

俺は幼女に向かって、鑑定を発動する。即座にウインドウを開き、確認した。


名前:無し

LV2

種族:人竜族 種族階級:ドラゴニュート 性別:雌

種族能力:飛翔、竜の鱗、竜爪ドラゴンクロ―

状態異常:衰弱(食事と睡眠を与えれば解除可能)

テイム可能性:大

HP35 MP12


特技

・火炎の息 ・氷の息


成程、正真正銘に名前がないのか。状態異常は衰弱とは……よく生きてたな。

特技は大抵ブレス系の能力か。見た目に反してえげつない能力だな。


衰弱化は食事と睡眠をとれば回復するのか。結構リアルな対処法だな。

まぁ病院がないこの世界じゃ普通か……。


ウインドウを閉じると幼女の腹が鳴る。

恥ずかしそうに俺を見つめてきた。相当腹が減ってるんだろう。


【万物創造】で何か作れないか?

ウインドウを開き、食べ物のリストを開いた。


こんがり肉:消費MP10

こんがり焼けた肉。食べると腹がいっぱいになる。

調味料付きにする場合、さらにMPを10消費する必要がある。


豪華料理:消費MP70

名の通り豪華な料理が出てくる。



他にもあるらしいが、目に留まったのがこの二つ。

取りあえず、こんがり肉を選択して食べさせよう。


選択したとたん、手元にこんがり焼けた骨付き肉が出る。

それを幼女に差し出してみた。


「いい……の?」


「ああ、早く食え。お腹がすいてるんだろ?」


「ありがとう」と言ってがつがつとこんがり肉を食べ始める。

あっという間に骨だけとなり、おかわりを求めてきた。


その表情はとても可愛く、まるで妹でも持ったような気分だった。

流れるようにこんがり肉を生成しまくって、あげた。


それからして幼女は眠りにつく。よく見てみると服はボロボロの布の服と短パンだ。正直、サバイバルに向いていない服装だ。


それ以外にも気になったことがある。

彼女の種族だ。それに種族階級も気になる。

咄嗟に鑑定を発動し、種族と種族階級についてをウインドウでチェックした。


人竜族

人間と竜族の混血種の種族。見た目は人間と変わりないが、顔以外、任意に竜の部分を展開でき、戦闘能力を発揮する。普段、部位を竜化させなくてもブレスを使えるのが特徴で、魔法も習得できる。


種族階級とは

この世界の異種族は人間以外、全て階級を持つ。

昇格……つまり進化は様々。戦闘回数、及び一定のレベルで進化をするのが一般的だが、【魔力進化】を持った者は自分のMPを多大に献上する事で、無条件で進化でき、進化後のスペックも普通の種族進化とは比べ物にはならない。ただ、【魔力進化】を持つ者はこの世界では一握りの人物でしかおらず、習得方法は現在は失われている。


「……」


一応、彼女の種族階級をチェックしておこう。


人竜族

→最下位:ドラゴニュート

下位:ドラゴロード

中位:ドラグノイド、ドラゴエディア

上位:バハムーン、ドラゴケルビム

最上級:ディアボロス、竜熾天使ドラゴセラフィム

超最上級:グレイトドラゴン、エルダードラゴン



やべぇな、コレ。テイムしてもいいけど、野生だよな……?

目覚める前に逃げた方が良いか?


ちらりと彼女を見る。気持ちよさそうに寝ており、一瞬だけ焦った感覚が消える。

いや、今のところ害はなさそうだし、放っておくか。


ピロン♪


「ん?」


突然レベルアップの音が鳴る。異変に気付いた俺は咄嗟に鑑定のウインドウを左にスライドさせ、別のウインドウを確認する。


『人竜族の少女をテイムしました。名前を付けてください』


「ファイ!?」


どうやら俺は知らないうちにこの子をテイムしてしまったらしい。

しかも名前も決めれるのかよ。名前が無いのはそのためか。


名前はなぁ……。


少女を見つめ、考える。だが勝手につけても大丈夫なのだろうか?

不安だが思いついた名はある。


「じゃあ、名は「ティア・キリシマ」。俺の妹で、呼び名はティアだ」


そう言った時だった。


『テイム申請完了。名は「ティア・キリシマ」に決定。血族称号「妹」。【魔力進化】の対象にできるようになりました』


勝手に決まった……。


「これは本人も承知してるのか?」


『本人自身はすでに了解しています。テイム解除は不可となり、金輪際あなたの妹となります』


マジかよ!?モン娘を妹にしてしまったぞ……普通ならお縄確定だ。

しかも【魔力進化】の対象だと!?つまり、俺が魔力を注げばこの子は進化するのか?


いきなりで済まないが、【魔力進化】を使って、どれくらい進化できるか試してみよう。


俺はティアに【魔力進化】を行使する。

100000くらい消費してやったが、全然余裕だ。

半分くらい突っ込んでも良かったが、この森だ。弱い魔物いえど油断できない。


俺は一度、この地点に留まる事にした。彼女が起きるまで、先ほど吹っ飛ばした男を探すが、見当たらない。


途中で逃げたのか?


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