とおい近所のおねーさん

螢音 芳

第1話 思い出ばなし

 両親共働きの家に生まれたアタシは小学校一年生の時から鍵っ子だった。

 学童保育に通うには家から距離があったので通うことが出来ない上、同じ学校の友達も近くに住んでない。そんな状況で放課後、アタシと遊んでくれていたのは隣のアパートに住む、女子高生のおねーさんだった。

 おねーさんは歳が離れていたけど、優しくて、制服が似合う美人で、そして……


 ゲームが鬼っくそ強かった。


 アクションゲーム、対戦格闘、パズル、レーシング、テニス、パーティゲーム、さらには人生ゲームのようなボードゲーム系のものでもアタシがおねーさんに勝てたことはなかった。

 おねーさんと同じ歳になった今のアタシからすれば少しは手加減してやれよ、と思うぐらい容赦がなかった。でも全力で遊んでくれたし、遊び方やコツがわからない時には根気強く教えてくれた。それが嬉しくて勝てなくても、アタシはおねーさんと何度も遊んだ。


 三年経ち、一人で留守番できるようになった頃。おねーさんは推薦で大学に合格し、引っ越してしまうことになった。

 もちろん、アタシはごねた。ごねにごねまくった。お母さんから、やかましい、と拳骨を落とされるまで泣きじゃくった。

 お見送りの日、おねーさんは、目が真っ赤なアタシに笑いながら高校の制服をくれた。


『これが似合う女子高生になれよ』


 事ある事にアタシは制服が羨ましいと言っていた。おねーさんはその事を覚えていたのだ。

 制服を貰った時、アタシはとても嬉しくて嬉しくて皺になるのも構わずに握りしめていた。

 おねーさんが居なくなった後、おねーさんのような可愛くてゲームの上手い女子高生になりたくて、アタシは勉強とゲームを頑張った。

 頑張って頑張って、そして、17歳……。

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