002

「うん、それでね。私は愛に生きることに決めたの。」


「はああ?」


「離婚して好きな人と結婚します!」


呆れを通り越してポカーンとした。

何を言い出すのかこのバカ姉は。

冷たい目をした私に、バカ姉はさらにバカなことを言い放った。


「だからさ、”すず”は美咲にあげる。いい感じに懐いてるし、美咲は結婚できない喪女だからちょうどいいでしょ。」


「何言ってるの?ふざけないでよ。」


「なんなら旦那もあんたにあげるわ。私ったら超優しいー。」


私の意見など聞く耳持たない。

そもそも姉の言っていることは嘘だらけだ。

父親とは仲はよくないが捨てられたわけではないし、母は病気で亡くなっただけだ。

お金に苦労したこともない。

結婚はしたけど別居だと聞いている。


私は姉に手を繋がれて大人しく立っている姪っ子、“すず”に視線をやる。

すずは屈託のない純粋な笑顔で私を見た。

そしていつも通り、


「ねえね。」


と私を呼んだ。

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