侵攻8日目

00:00

10万人のハッピーバースデー合唱。


08:00

B市作戦本部、昨日の「恨み」を晴らすため、住宅地を空襲することで合意。


08:30

朝のワイドショー、全局、昨夜の映像をリピート。

「映画でも見られないジャンプ」

「夜空を舞う散光灯」

「愛が検問を越えた」

花束の美しさも結構、話題に。


09:00

A市民会館、弔問客の出足好調。


10:00

市民葬、始まる。遺影は無く、花輪の中央に本人達が立つ。


10:30

お菓子やチーズといったお供え物の山に、ポチご機嫌。


10:50

B市軍、ヘリでA市住宅地を絨毯爆撃。「爆弾」と書かれた空ペットボトルがパラパラと降り注ぐ。元気な住民は市民葬に出かけており、兵士と犬と老人だけが犠牲となる。


10:51

A市住宅地防衛隊の兵士一人に「爆弾」直撃。ノーヘルで痛い目を見る。


11:00

A作戦本部、先の爆撃による被害状況を確認。マスコミに発表。各メディア、

「民間人弱者を狙った作戦で、人道上問題」

と報道。


11:10

TVを観たA市内各老人クラブより、作戦本部に全面協力の申し出あり。


11:30

B市作戦本部、爆撃の成果が思わしくなかったため、市役所職員、自衛隊、米軍、互いに罵り合う。


12:00

空襲により住宅地全滅のため、恒例の「お昼ご飯」無し。


13:00

住宅地爆撃により死亡したA市兵、やる事が無いので連れ立ってロックフェスへ行く


13:30

B市作戦本部、息子がロックジャンキーでNMTV嫌いの米司令官が、空母ヘッドウェー艦載機でロックフェスを爆撃すると言い出す。新卒自衛隊員一人を除き、本部一同、諸手を挙げて賛成。新卒更迭。


13:45

ペットボトルの直撃を受け、痛い目を見たA市兵の口座へ、保険金が振込まれる


14:00

噂の二階級特進戦死者によるロックバンド「Singing Bodies」ロックフェスに登場。良き時代の名曲を連発。会場はウッドストック状態へ。


14:20

ヘッドウェー搭載のヘリにペットボトルが満載される。爆弾の重量が小さいために速度が大きい戦闘爆撃機は使えない。


14:25

爆撃ヘリ発艦。西へ向う。


14:30

ヘリ、ロックフェス上空に到着。会場混乱。


14:31

機転を利かせた「Singing Bodies」アメリカ国歌The Star Spangled Bannerを演奏。PAエンジニア、ヴォリュームを最大に上げる。観客全員ヘリに向けピースサイン。 


14:32

司令官、爆撃命令を下すが、現場兵士、国歌を前に遂行できない。


14:33

「軍法会議に掛ける」

と司令官に脅された爆撃隊長、部下の合意を得てA市軍に付くことを決意。


14:34

A市作戦本部にヘッドウェー所属ヘリ爆撃隊長より無線が入る。

「投降する。出来れば、貴軍の指揮下に入りたい」

一部職員は、

「罠だ」

と強行に受け入れに反対するが、市長、マイクを奪い、

「歓迎する。ようこそA市へ」


14:35

A市長、市役所駐車場を空けるよう指示。


14:40

B市軍爆撃隊ヘリ乗組員全員、沈黙するロックフェス会場に敬礼。A市役所駐車場へ向う。


14:42

A市長TV会見。ロックフェス会場スクリーンにも映し出される。事実を知らされた観客、万歳三唱。「Singing Bodies」再び、アメリカ国歌を演奏する。


14:45

アメリカ国歌、響く中、A市役所駐車場にヘリ全機着陸。市長と隊長、堅い握手。自衛隊駄目隊長号令、

「正しく勇気ある行動に敬礼!」

見渡す限りの群衆、米投降軍に対し敬礼。


14:50

米軍寝返り事件の始終はNCNNで中継され、アメリカ本土でも物議を醸す。ペンタゴン揺れる。


15:00

B市長、失意の米司令官を励ますため、また芸者を呼ぶ。


15:30

各局ワイドショー、寝返り事件を大きく取り上げる。

「死人の歌、市民を救う」

「胸を打つアメリカ国歌、ヘリを撃つ」

「遺体活躍、また特進か」


16:00

ワイドショーを観たB市長、わざわざ電話回線を接続しA市にクレーム。

「戦死者を戦力に使うのはルール違反だ」

A市長、当然無視。


17:00

A市職員、手土産を下げて、花火名人の様子を伺いに行くが、作業中の名人は相手にしてくれない。


18:00

A市長、最終的に一尺玉を打ち上げる志願兵を募る会見を行う。

「我こそは、という勇士のトライをお待ちする」


19:00

遂にNNHK十九時のニュースで「戦争」が取り扱われる。だがトップニュースではなく「ボトム」ニュース。


20:00

A市役所ロビーにガタイは良いが何だか見窄らしい四人組が現れる。訊けば一人はラグビー代表選考から漏れた実力者、残り三人は道半ばで諦めた元戦友。

「俺達がトライを決めてやる」

「トライ」の意味を取り違えたらしい。四人は何れもA市在住。


20:30

ノリが良くなってきたA市長、先ほどの四人を最終突入隊に任命。四人にそれぞれ、

「打上筒設置」

「着火」

「一尺玉投入」

「補欠」

を割り振る。補欠が不満を垂れるが

「君が居てこその部隊だ」

と其の場凌ぎの言い聞かせを行う。打ち上げ訓練を行っていた落ちこぼれ自衛隊長、意気消沈。


21:00

A市作戦本部、突入部隊編成を受け、訓練用模擬一尺玉一式の作成を手配。


22:00

失意の米司令官と酒の席を共にしたB市長、酔い潰れる。トップの為体を見ていたB市作戦本部長、以下数名、著しく士気、低下。


22:30

どうでも良くなったB市作戦本部長、本部員に対して一週間ぶりの帰宅を許可。


23:00

A市作戦本部、公募も含めて未だ具体的な攻撃策は浮上せず。特に許可もなく、ほぼ全員が帰宅済み。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る