侵攻3日目

08:00

A市玩具メーカー、起死回生の大チャンスと見なし、新開発ながら売れずにだぶついたエアガン2万丁を提供。置場がなく市役所駐車場に山積みにされる。


08:30

A市作戦会議。状況から国道等からの正面突破よりも住宅地からの侵入を警戒することにする。攻撃面での策は未だ無い。


09:00

エアガンで武装したA市職員、個人の住宅地に展開。一部批判の声が上がるが、ここにきて大部分の市民が協力的になる。


09:30

B市自衛隊、偵察衛星を使わせてもらうためペンタゴンに協力要請。退屈だったペンタゴン長官、OKを速答。


10:00

B市内電子機器メーカー内にペンタゴン直結の偵察センター設置。衛星画像よりA市の兵力展開状況を把握。市役所作戦本部へ報告。


11:00

B市、偵察センターからの報告を元に攻撃策を錬る。自衛隊から戦車部隊による国道正面突破の案が出され、決定。


12:00

住宅地に展開中のA市職員、市民から昼食をご馳走になる。


13:00

B市役所前に戦車部隊集結。国道上をA市方面に向け移動開始。これを見たマスコミの報道加熱。


13:10

TVで状況を把握したA市役所、展開先の住宅一つ一つに電話をかけ兵員を国道方面へ移動。


13:20

A市、水道局職員により、国道下の水道管を破裂させて道路を陥没させる案が浮上。

「どうせなら、水圧で戦車を引っ繰り返せないか。」

という別の職員の発言により水道局を挙げて各部の計算に入る。


13:30

A市、土木局職員より、国道上の歩道橋を転倒落下させて戦車部隊の侵攻を遅らせる案、浮上。市長から作戦に必要な時間を問われた土木局長は、

「10分。手抜き工事だから」 


13:40

A市、交通局の協力により歩道橋にワイヤーを掛けバスで引き倒す。


13:45

A市水道局の計算が終了。巧くやれば戦車を転倒させた後、陥没させた穴に部隊全体を落とし込むことが可能。と同時に、ポンプをフル稼働させると老朽化した設備は3分しか持たないことも判明。


14:00

A市兵員、国道付近に集結。地上での迎撃体制を取る。


14:05

計算により判明した閉じなければならない上水道止水栓をA市水道局員総出で閉めて回る。この姿は偵察衛星に捉えられるがB市作戦本部は目的が分からず、やり過ごす。 


14:10

A市交通局によるバス50台でのバリケード完成。


14:20

国道市境にB市戦車部隊集結。横たわる歩道橋を隔て両側に緊張が走る。


14:22

A市水道局、止水栓閉鎖、浄水場、各ポンプ場、職員配置完了。


14:25

B市戦車部隊侵攻開始。手抜き工事の歩道橋は、あっさり踏み潰される。時を同じくしてA市水道局に作戦遂行命令が下る。全てのポンプ全力稼働。レギュレーターバルブ全開。市内各所から水柱が上がる。


14:26

衛星が水柱を捉え、B市本部に一部議論が巻き起こる。


14:27

水道局目標地点に戦車部隊到達。現場に通じる最後のバルブを開く。一瞬の地響きの後、戦車下から水が吹き上がり戦車は仰向けとなる。尚も勢いを増す水は次々と周辺を陥没させて行き、部隊全て「池」に嵌る。


14:28

A市地上部隊、池の中の兵隊をエアガンで「射殺」。車両内の生き残りは捕虜として確保。実況中継を見ていた市民から歓声が上がる。


15:00

「射殺」されたB市兵、額に「遺体」と黒マジックで書かれB市へ返還される。当然ながら「遺体」は今後の戦闘には参加できない。


15:30

A市、作戦本部を正式に設置。先の戦車攻撃よりミサイルによる市庁舎直撃も有り得る、と判断。庁舎を守るため捕虜を庁舎内に収容。この事実をB市に通告。


16:00

マスコミ各社、国民共に、次第にA市に感情移入するようになる。


17:00

事態の重大さに気付いたB市中央郵便局、やっと召集令状の配達を始める。


18:00

各社終業後、A市役所前に志願兵殺到。駐車場のエアガン2万丁は全て無くなる。


18:30

A市長、市民からの

「水道局に勲章を」

の声に応え、

「水道局員全員に勲章を与える。」

と発表。手抜き工事の土木局は無視される。


19:00

B市本部、自衛隊、ペンタゴンと巡行ミサイルの使用について協議。いつでも使用可能なように、アメリカ第百七艦隊に対し横須賀出港を要請。


20:00

「意気地なし。弱虫」

と部下に罵られた落ちこぼれ自衛隊隊長、A市に協力を買って出る。


20:30

A市、自衛隊と最初の志願兵15人を中心に正式に部隊編成。防衛部隊は再び住宅地へ展開。拍手で迎えられる。


21:00

A市長、エアガン以外の強力な兵器の開発を玩具メーカーに依頼。社員、燃える。

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