4. コウタの電話

  また、電話だ。


「久しぶりですな、秀さん」


 独特な話し方を隠そうともしない、僕の友人。コウタだ。


「本当にな。最近どうなの」


「うーん、就活頑張ってますが、見つかりません」


 コウタは生粋のオタクと言った感じで、アニメの制作に携わるために何社も受けていたが、面接で異常にあがってしまい、ずっと内定がないままだった。


「秀さんは?」


「僕は相変わらずだよ。最近日本に帰ってきた」


「ああ、そういえば結婚式があると言っておりましたなぁ。どうでした?」


 みんなそれを聞くんだな、と辟易する。


「まぁまぁだよ」


「ふふ、秀さんはあまり他人に興味を示しませんからなぁ。妹君と2人だけの世界をつくっておられる」


「由芽と? なんで」


「オフ会で最初にお会いした時、そう感じましたよ。2人の絆、いや、それ以上の力をね」


 コウタはアニメの見過ぎが影響して、ちょっと大げさな物言いをすることがある。


「なんだよそれ」


「本気ですとも。妹君は、お兄ちゃんラブなのです」


「んなわけないだろ」


 笑い飛ばした。あの由芽が僕のことを好いていてくれるなんて、いったい何年前の話なんだか。それに、他人に興味がないなんて言うのも、全くの嘘だ。


 僕は、まだ真梨香に未練がある。

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