どんな事でも貴方となら:3


「先輩、ジャージとシューズ貸してくれてありがとうございます」


「うん、うん。別にいいんだよ。ただね、足もだけど身長にしろ胸にしろ、なんかもう申し訳ない。苦しくないかな?」


「そういう事言わないでください」


「でもね、ほら、色々と彼我の戦力差がね、うん」


「いいから早く始めますよ…」


部長さん…遠藤さんのジャージを借りた祈織はそれはもう凄い見た目だった。遠藤さんの身長より背の高い祈織がそれを着れば丈は合わず、胸なんかもうパツパツである。


それを見て物凄く凹んでいる遠藤さんは既に半泣き状態だ。


若干申し訳なさそうに、それでいて呆れ顔な祈織がボールを持ってコートに入る。先にオフェンスをするのは祈織らしい。


「じゃあ、行きますよ」


「ばっちこいだ」


ダンッ…ダンッ…と音を立てて跳ねるボール。直後、祈織は動き出した。素人の私には細かなルールや技術なんて分かりはしない。


それでも、祈織が凄く上手なのはひと目で分かった。


まるで体の一部かのようにボールを扱い驚くほどの速さで遠藤さんに肉薄したかと思うと、緩急を付けたり手さばきを加えたりして踊るように走る。


次の瞬間にはシュートの1つであるらしいレイアップでボールがリングに吸い込まれた。


「「「すごい…」」」


そのプレイに私だけでなく奏と詩音も目を釘付けにして感嘆の声を上げている。


…詳しい事なんて何も知らないし分からない。それでも、私の目に映る祈織はとてもかっこよかった。


風の様に走り、踊る様にボールを扱うその動きは簡単に私の胸を弾ませる。ずるい、ずるい。これからお互いを知っていこうと話し合った矢先にこんなかっこいい姿を見せられてドキドキしない方が無理である。


惚れた弱みにしろ、やっぱり私はチョロすぎだ。

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