第4話 旅行

 彼女も自分の生活がある。俺に構ってばかりではいられない。

 だから、彼女が俺を置いて旅行に行くことだって普通の事なんだ。


 出発前、俺はそう思っていた。そして、彼女は俺を撫で回してから旅行へと行ってしまった。


 俺は、本当に彼女がいないと生きていけないんだ。彼女に飼われているペットなんだから。

 だから、彼女のいない間は死んだも当然だった。

 彼女は実家で両親と暮らしているから、エサは毎日お母様が用意してくれる。でも、何でだろう。彼女がくれるのと同じ物のはずなのに、味気ない気がする。

 だから、食も進まなかったし、ケージから出してもらってもいつもみたいに遊ぶ気力がわかなかった。

 病気なのかな、ってお母様には心配をさせてしまったけれども、その後は何とか無理矢理にいつも通りを装ってみせた。

 そんな日も過ぎ、彼女が帰ってくる日。ケージから出してもらっている俺は落ち着かず、部屋の中をうろうろしていた。そして、しばらくすると玄関の開く音が聞こえた。


「ただいま」


 彼女の声だ。俺は思わずドアの前まで走って向かった。そして、無意識の内にピョンピョンとドアの前で跳び跳ねていた。しばらくすると、ドアが開いて彼女が現れた!


「わっ!ビックリした。何、寂しくってここまで来てくれたの?ありがとー!私も寂しかったよ」


 跳び跳ねている俺を見て本当に驚いていたけれど、すぐに嬉しそうにしてくれた。笑顔で幸せそうな表情。俺も幸せだよ。寂しかったよ!


「あらあら、昨日までは元気なかったのに、よっぽど懐かれてるんだね」


「えぇ、そうかな?だったらもっと甘えてきてよー。私は寂しいぞー」


 お母様!それは言わないでください!恥ずかしいから!後、そんなに撫でないで!久し振りでそんなにされちゃうと、幸せすぎてどうにかなっちゃうから!

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