第1章  衝動

幕明  伺う者たち

 ーー防人の街の先。


 人間では到底行けない場所。


 そこには真っ黒な森に囲まれた“闇の島”と呼ばれる孤島がある。全景としては海の中にぽっかりと、真っ黒な孤島が浮かぶ


 何が潜み生きているのかわからないこの島に、男たちはいた。


「防人は堕ちませんでしたね。」


 高い崖の上に座り、風に煽られるのは黒い髪を靡かせた男。

 その高身長の長い脚を組み、金色の眼が煌めく。


 一日中明けない島ーー、夜の闇に包まれたその島から、海の先を見つめる。


 ここからは何も視えない。

 ある方向を見つめるその眼。


 さらっと靡く黒髪は目元まで、前髪が掛かる。

 少し長めのその髪は、端正でいて品のある顔立ちを際立たせる


 この男の名は、“斑目まだらめ”。

 東雲しののめの側近の様なものである。


 その横で、黒いスーツ姿の男性。

 長い脚。そのズボンのポケットに手を突っ込み、暗い海を見つめる蒼い眼。


 月の出ていないその闇の海面は、風で波が立つ。


「堕ちるとは思ってねーよ。だが“手筈”は整った。奴等の戦力も理解した。後は……“復活”を待つだけだ。」


 東雲ーーは、前髪を降ろしている。

 後ろ髪は長く、襟足まで伸びていた。


 角は無いが鬼だ。


 ふぅ。


 隣りで崖に座る斑目は、息を吐くと頬杖つく。

 膝に肘を乗せた。


「本当に大丈夫なんですかね〜。出て来た途端に“殺られません?”。アッチの方々は“残忍”です。」


 と、その眼を細めた。


「だとしても……“願いは叶う”」


 東雲はそう言うと踵を返した。

 鼻で笑う様に。


 革靴の音をたてながら、そこから歩いて行った。


 ふぅ。


 斑目は息を吐く。


(願いね……。まぁ。もう少し様子を見ますか。)


 意味深な眼をしていた。



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