第4話 初めての奉仕

「お邪魔しまーす」


「どうぞどうぞ」


秋の家に三人で上がり込む


秋のお家はごくごく一般的な様子で

変わった物はないが、少し家具や

置物などからは女の子寄りだなと感じる



今に通されると小学生くらいの男の子が

座っていた

雰囲気としては田中と秋を足して2で割った

ような、優しくておっとりしている感じがする


田中が秋の弟の前まで行き屈み

目線を合わせ、笑顔を作る


「えっと、僕はお姉ちゃんのお友達の

田中って言うんだ」


「僕は幸田」


緊張しているのか、言葉は辿々しい


「そっか幸田くんか、良い名前だね!」

「こっちの怖い顔のお兄ちゃんが優くん

こっちの美人のお姉ちゃんが志穂ちゃんって言うんだ」


「よろしくな幸田」

「よろしくね幸田君!」


「よろしくお願いします」


ペコリと頭を下げるがやはりこんなすぐには

緊張は取れないようだ


「さてさて、じゃあ早速準備しましょうか!」


学校での作戦会議の末に、弟の好物

の中にこっそり入れちゃおう!となった

弟の好物はハンバーグ

良いね、俺も好きだよ

どれくらい好きかといえば、風呂上がりの

コーヒー牛乳くらいに好きだ

分かりづらい?まあ、そんな事はどうでも良い


作戦はいったってシンプルにみんなで楽しく調理して、隙を見て少し投入

違和感無く食べたところに、実は入って

たことを明かして克服してもらおうとゆう

魂胆だ


秋が後ろから幸田の肩を掴み

台所へと連行する


「今日はお姉ちゃん達と一緒にハンバーグ

作ろうね〜」


「え、いいよ!僕は二階でテレビでも見てるから!」


どうにが逃げようとするが、流石に体格差で

無理そうだ

俺も知らない年上といきなり料理とか嫌だな

と、同情しているとここでも田中大活躍である


「僕、幸田君と一緒に料理したいんだけど

ダメかな?」


「ダメじゃない…」


「じゃあ一緒に作ろう!」


幸田の手を掴み台所まで一緒に向かう


その光景を見たセレスが耳打ちしてくる


「ねえ、何か田中くん凄くない?」


「ああ、さすがだ」


こうゆうのが無自覚にできるタイプなのだ


「私達も負けてられないわね、行くわよ!」


セレスも台所に楽しそうに向かっていく

その後を少し怠そうについて行った


一通り調理器具と材料を並べていく


「じゃあまずは、玉ねぎを微塵斬りにしていくぞ、幸田お願いしていいか?」


「う、うん」


「じゃあまず、お姉ちゃんお手本お願いします」


「はーい!」


慣れた手つきで綺麗に切っていく


「こんな感じだよ幸田、じゃあやってみようか」


「う、うん」


「難しそうなら手伝うのでゆっくりやってみてください」


そう言ってるセレスなのだが、包丁のスキルはまだまだなのだ


ゆっくりながらも、正確に切っていく

どこかのアホみたいに見ていて安心できる


「うわ、染みる!」


「あー、切ってると涙出てくるよな」


あれは俺も苦手だ


「ここはこの僕に任せろ!」


自信満々にまな板の前へと立つ

結構料理は得意なのだろうか

と思ったのも束の間、包丁が高くあげられたかと思うと


「フアチャアアアアアアア!」


よく調理実習で見るタイプの適当みじん切りを発動させていた


玉ねぎは大小様々な形にピョンピョンと

跳ね回る


「こら、変な切り方するな!」


「さすが田中君、期待を裏切らないね!」


みんな大爆笑である


「次は合挽き肉にさっき切ったのとパン粉、そして調味料を入れて混ぜるんだけど幸田

頼めるか?」


「うん!」


材料を混ぜていく


「お、うまいぞ」


これやるのなんか楽しいんだよなぁ

これは結構分かってくれると思う


「そして、一人分取ったら、それを

キャッチボールする様にこうやっていくんだ」


「て、お前ら食べ物で遊ぶな!」


田中と秋が楽しそうにキャッチボール

が本当のキャッチボールを始める


「あの二人みたいな事はしちゃダメだよ」


「うん、分かった!」


「ふふ、素直でいい子ね」


よしよしと髪の毛を撫でる


「ありがとうございます…」


顔を赤くし俯く


「幸田たら、照れちゃって」


「てっ、照れてない!」


とかなんとか会話しながらも着々と

作業を進めていく


「後は寝かせるだけだから、先にみんなで

休んでてくれ」


みんなにあらかじめ伝えていたとうりに

目配せを行う


「よし、じゃあ幸田君僕とトランプしようぜ!」


「面白そう、私もうやる!」


「じゃあ私も!」


「じゃあ、あと頼んだ優」


「ああ、任せろ」


みんながリビングに行ったのを確認した後

最後の仕上げを行う


冷蔵庫に入れて置いたピーマンを取り出すと

かなり入念に刻んでいき、一個のハンバーグ

に混ぜ込んでいく

これに焼き目をつけ、ソースをかければ

さらに見えづらくなるはずだ


「うまく行くといいな」


こっそり一人笑う


後は普通に手順をこなすだけだ




「みんなー、出来たぞ」


ハンバーグをトレーに乗せ席に座るみんなの元へと運ぶ


配る際にはきちんとピーマンのハンバーグ

が幸田のになるようにした


「うわぁ、美味しそうだぜ!」


「本当ですね!」


「さすが私の弟が作っただけあるわ!」


「やめてよ、お姉ちゃん!」


「冷めないうちに食べてしまおう、頂きます」


「「「頂きます!」」」


みんなが見守る中幸、田がハンバーグを口に運び口に入れる


「どうかな、幸田君?」


緊張の瞬間だ


「美味しいよ!すごく!」


みんなため息をこぼし、ひとまず安心する


「実わね幸田、それにピーマン入ってるんだ」


「嘘でしょ、お姉ちゃん」


まだ信じていないようで、笑顔を崩さない


「いやいや本当、みんなで幸田が食べられるようにこっそり入れといたんだよ?

よーく見てみて」


疑いながらも切り口からハンバーグを

覗き込む


「うわ、本当だ!僕ピーマン食べてる!」


「さすが幸田君、僕飲み込んだ男だけあるぜ!」


「おめでとう、幸田君!」


「うん、ありがとう!」


「これで一件落着かな」


みんなで楽しく会話しながら食べ進め

お皿お洗い、リビングで遊ぶ


「お、もうこんな時間か」


「そろそろ僕たちも帰らないとね」


帰る支度をそれぞれ始める


「まだ遊びたかったな〜」


幸田が名残惜しそうに呟く


「なに、またいつでも俺たちは遊びに来るさ」


「ほんと?」


「本当だ、俺は今まで嘘をついたかとがないのが自慢なんだ」


「うわーこの人、どの口がそんな事

言っちゃってるんですかね、私気になります」


秋顔をしかめドン引きである


セルセがうんうんとうなずく


「まあまあ、またいつでも来れるのは

本当だし、また遊ぼう幸田君!」


「うん、お兄ちゃん」


綺麗に二人ハイタッチすると

みんな準備が整ったようで玄関に移動して

帰り始める


それぞれ挨拶をして帰路へと着いた


「じゃあ、俺らこっちだから」


「そっか、じゃあね、優と志穂さん!」


「はい、また明日」


バイバーイと手を振りながら去っていく

俺らも家へと向かって歩く


「ねえ、優」


「なんだセルせ」


「私このやり方でよかったと思うわ」


「そう言って貰えると頑張った甲斐があった」


街灯がポツリとポツリと照らす道を

二人歩く


「地球は面白いわね」


「これで面白かったらお笑いなんて

見たら死んじゃうな」


「本当ね、退屈しなくていいわ」


「なあセルス、お前結局どれくらい

奉仕したら帰れるんだ?」


「分からないけれど、月でいうところの

二十歳になったらどうやっても戻ると思うわ」


「それはまたなんで?」


「私が結婚しなくてはいけないからよ」


「強制なのか?」


「ええ、コンピューターで相手を選ぶようになったのも少子化が一つの理由なのよ」


「そうゆう事か」


「それが月で言うところの当たりなのよ

だからね」


少し駆け足で前に出ると振り返る


「それまでたくさん遊びましょ!」


一呼吸おき答える


「そうだな!」


アスパルとを踏みつけ走り始める


「先に家に着いた方が勝ちな!」


「あっ、待ってずるいわよ!」


二人で走ってアパートまで向かった

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