第14話 夜

 疲れきった体を引きずってキャンプ地に戻ってくると焚き火の前にレイナが座っていた。


「おや、あれはアスカくんの連れかね?」


「え、ええ。そうです」


「ふーん。女の子と二人旅とはねぇ……訳ありな感じがぷんぷんするわねぇ!ちゃんと聞かせなさいよ!」


 ナギサさんが肘で脇腹を突いてくる。


「うむ、じっくり聞きたいものだなアスカくん!えぇ?」


 キムツジさんはキムツジさんで肩を組んで耳打ちしてくる。こう煽られるとレイナのことを話すしかない。やたらと感の良い二人のことだから下手に隠そうとしてもすぐバレる。


「わかりました。ただ彼女に確認を取った上で話させてください」


「構わんよ」


「では、少し彼女と話をしてきます」


 レイナに小走りで近づいて、話しかけた。


「レイナ」


「アスカ。先程の騒ぎは?」


「ああ、それはもう片付いたんだ。彼らのおかげだよ」


 後ろを指し、レイナに二人の顔を確認させた。


「彼らは?」


「仕事でこの辺りに来たらしい。もしかしたらしばらく一緒にいるかもしれない」


 一緒にいるかもしれないという言葉にレイナは顔を曇らせた。


「……どうする?彼らは下手な詮索はしないと言っている」


「……信用はできますか?」


「僕は話しても問題ないと思ってる」


 レイナは1分ほど考えた後、話すことを承諾してくれた。


「皆さん、こちらに!」


 全員で焚き火を囲んで、二人がレイナの姿をしっかりと見た時、キムツジさんは少し眉をしかめた。


「おい、ナギサくんこりゃあ……」


「白髪白眼の少女。思わぬところで出会ったわね」


「……」


 さっきまで眠いといっていたのに目を光らせて真剣な顔でレイナと向き合っている。


「アスカくん。巫女と行動を共にしている理由を聞こうか。心配しなくても良いぞ。我々は正教の人間じゃあない」


 レイナと顔を見合わせて確認すると、頷いてこれまでの経緯を話すことにした。

 あまり長く話すよりも端的に伝える方がわかりやすいものだ。


「成る程な。よくわかった。そうさな……ひとまず我々は君たちと共に広島まで着いていきたいところだ。なあナギサくん」


「ええ、そうしたいところね」


 話を全て書き終えた二人は同じ考えであったようだ。彼らからすれば仕事の遂行の為、それだけのことなのかもしれない。

 しかし、このままレイナと二人で広島に向かうより遥かに旅は安全になる筈だ。

 しかし、レイナは共に行くことは嫌なのか顔がこわばっている。


「レイナ、どうする?」


「……一晩考えさせてください。あなた方が正教の関係者でないことはわかります。ですが……」


「ふむ、君が信用できないようであれば無理にとは言わない。まあ一晩じっくりと考えてくれ。答えは明日聞こう。それで良いかな?」


「……わかりました」


「うむ、それでは明日に備えて眠るとしようではないか!」


「ええそうね。もう眠いわ」


 僕ももう眠くて仕方がなかった。焚き火を消してテントの中に潜り込むとすぐに意識を失った。

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