なんでLv.1で!?

 ウサギ討伐成功での報酬とドロップアイテムは、『肉のような物10個』と『1500ジェム』であった。


「これ食えんのかな?食うのか売り飛ばすか…今は金欲しいし、売っちまうかな?取り敢えずは【鑑定】を使ってみてと…スキル!【鑑定】!!」


 ウサギが落とした肉…それは骨つき肉のようなものだ。スキル詠唱の後に出て来たパネルに目を奪われる。


『アイテムを取得しました』


【ウサギのもも肉】

ウサギから採取、またはドロップで取得出来る。食材とし好まれる。絶妙な霜降り…味は絶品だ。

売価価格『80ジェム』


「やっぱり食い物かぁ?でもまぁ、なかなかレア食材みたいだし売ってもいいのかもな?家賃もあるし!今は金だ!そう金、金、金だー!んでもって次は装備!そう装備揃えん事には強いモンスター討伐だって無理なわけで…イコール金無い!稼げない…そうなると破綻!あぁーっ!!それだけは絶対に回避!くそっーー、金っ、金っ、金欲しい!」


 そして大きく息を呑み込む。


「やっぱ、金欲しいぃーー!!」


 仕事を辞め、この世界で生計を立てるともなると、家賃・光熱費・通信費…など含めて軽く10万円は必要である。その現実を改めて実感するとやぶさかではないのだ。


 この光景をもし、他のプレイヤー達に見られるものだったら、さぞ笑われて掲示板行きの光景である。

 きっと出だしはこうだろう。

『【森と泉】にヤバイ奴がいたよ!』

 一躍有名になり、ある意味で炎上必至である……


「待てよ!なんだかんだでモンスター締めて10体以上は討伐したし、レベルアップしてても良いと思うのだが…ステータスっ!!」


 流石にレベル1なのだから、とっくに今頃最低でもレベル2に上がっていてもおかしくはない。レベル1からレベル2に上げるのはそう難しくは無いのだ。序盤は少しの経験値でもレベルアップを図れる。どのゲームもそうだろう?


 クロユキはかるくモンスター10体をも既に討伐している。スキルだって取得はしているが、いっこうにレベルアップの通知が来ないのだ。

 モンスター10体ともなれば通常であれば、最低でもレベル2に…いや、レベル3くらいには上がっているばずなのだ。

 しかし、クロユキのレベル上昇は見られなかった。スキル取得の通知は鳴るのだが……


 ある疑念と共に、自身のステータスを確認することを試みる事にする。


 そして、ここより驚くべき展開が待ち受けてるとは、知る由もしなかったのである。


「ステータス!!」


 その呼び声の後には白い半透明のパネルが現れては、オレのステータス画面が表示された。


『基本情報』

【NAME】クロユキ  

【Lv.】1『カウントストップ』

【HP】60/60     

【MP】20/20


『ステータス』

【ステータスポイント〈+15〉】

【STR】0〈+9〉  

【VIT】0

【AGI】100〈+660〉

【INT】0   

【DEX】0 


『装備一覧』

≪右手≫

【ちょー初心者ダガーナイフ】

〈スキルボックス〉:【空】

≪左手≫

【空】

≪ヘルム≫

【空】

≪アーマー≫

【空】

≪グローブ≫

【空】

≪ブーツ≫

【空】

≪アクセサリー≫

【空】

【空】

【空】


『スキル』

【鑑定】【一重の極み】【電光石火】【無双回避】

【大物残滅(ビッグ・イーター)】


 何かがおかしい点に気付いた。


 それはたったのLv.(レベル)1なのに、カウントストップと表記されているのだ。

 普通のゲームなら、こんなのは全くもってあり得ない状況である。


 ここに記されているカウントストップとはレベル上限に達した時に限っての、カンスト(カウントストップ)となり、どれほど経験値を取得しても、レベル上限に達している場合、これ以上の上昇がない場合に限る物である。


 即ち、オレはLv.(レベル)1の状態でカンスト状態になっているのだ。


 これはこの「セカンドライフ」での生きる術を失ったとも言えるのだ。「Lv.1」という事は、これ以上の成長が見込めない!イコール、この主人公である「黒沢典之」は【AGI】極振りのため、それ以外のステータスはゼロであるのだ。


 したがって、生活の基盤を支える事になるこの「セカンドライフ」では、ステータスの成長・育成が出来ないということは、生活の術を失ったと言っても過言では無いのだ。


「なっ、なんでレベル1でカンストなんだよ?なんでだよぉー!?こんなんでどうすれば良いんだよ?そこまで恨み買いましたか?くそぉー、あの猫の尻尾振り振りしてんのが想像出来ちまうよ!くそぉ……」


 運営にクレーム付けてやると言わんばかりに、メインメニューのサポートセンターを探すのであった。


「ダメだぁー!!サポート画面がないし…待てよ!?もう一回ステータス見てみよ!?ステータス!!!」


『Lv.1カウントストップ』


 それから何度も、間違いであってくれと言わんばかりにステータスと呼び声を挙げてはみるものの、『Lv.1カウントストップ』は変わらなかった。


「なんで?どうして!?…っなんでオレがLv.1でカンストしなきゃいけないんだぁーー!?これじゃあいっこうに他のステータスが……ゼロ!?つっ…詰んだ……」


 それからというものサポートセンターに連絡を取るべく、サポート項目を探すがいっこうに見付からず、怒りと興奮でダガーナイフをブンブン振り回しながら奥へと進む。


 草木をダガーナイフで切り刻みながら奥へと進み…荒れに荒れて正気を失いかけて、今歩いている場所…現在地すら知る由もなかった。


そして……

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