第9話 オオカミと七匹の子ヤギ
丘の上の一軒家に、お母さんヤギと、七匹の牝の子ヤギが住んでいました。
ヤギたちはみな、ヤギ耳にヤギ角にヤギ尻尾、ヤギグローブとヤギブーツだけを身に着けた、裸です。
お母さんヤギが洗濯物を干して、エプロンを解くと、巨乳で括れで巨尻な裸身が露わに。
買い物かごを下げたお母さんヤギが、娘たちに言いました。
「お母さんはこれから、町へおつかいに行ってきます。いいですか、お母さんが帰ってくるまで、決して扉を開けてはいけませんよ。悪い狼が来るかもしれませんからね」
裸な七匹の子ヤギたちは、元気に返事をします。
「「「は~い」」」
お母さんヤギが街へ出かけるのを、木立の影で、オオカミが見ていました。
「しめしめ。子ヤギたちだけで留守番をするようだぞ」
特に腹ペコというわけではなくても、とにかく狩猟の本能が刺激されて堪らないオオカミは、嬉しそうに舌なめずりをします。
しばらくすると、一軒家の扉がノックされました。
–トントン。
「お母さんですよ。開けておくれ」
酷くガラガラなその声に、娘ヤギたちは言い返します。
「お母さんは、そんな汚い声じゃないわ。あなたはオオカミだわ」
雑な成りすましがバレてしまったオオカミは、草原のミントをたくさん食べて、声を綺麗にすると、また一軒家の扉をノックしました。
–トントン。
「お母さんですよ。オオカミはいないから、開けておくれ」
今度は、誰が聞いても疑わないほど、綺麗な声です。
しかし娘ヤギたちは、窓から見えた前脚が黒かったので、お母さんではないとわかりました。
「お母さんの前脚は、黒くないわ。あなたはオオカミだわ」
雑な成りすましが再びバレてしまったオオカミは、おしろいの実を砕いて前脚に塗って白くすると、三度、一軒家の扉をノックします。
–トントン。
「お母さんですよ。お土産もいっぱい買ってきたから、早く開けておくれ」
声も綺麗で、前脚も白いので、娘ヤギたちはお母さんだと思って、喜びました。
「わあい、お母さん。おかえりなさい」
扉を開けると、しかし立っていたのは、狩猟本能を刺激されたオオカミでした。
「あっ、お母さんじゃないわ」
「美味しそうな子ヤギたちだ。比喩ではなく物理的な意味で、食べちゃうぞー」
七匹のヤギ少女たちは、裸のまま、家の中を慌てて逃げます。
一番目の娘ヤギは、机の下に逃げ込みます。
二番目の娘ヤギは、ベッドの中へと潜り込みます。
三番目の娘ヤギは、暖炉の中へと逃げ込みます。
四番目の娘ヤギは、キッチンへと逃げ込みます。
五番目の娘ヤギは、本棚の上へと逃げ上がります。
六番目の娘ヤギは、伏せた洗面器の中へと隠れます。
七番目の娘ヤギは、柱時計の箱の中へと隠れました。
「隠れても、見つけて、頭から丸呑みだぞお」
オオカミは、隠れているヤギ少女たちを次々と見つけ出し、六番目の娘ヤギまで、頭から丸呑みにしてしまいました。
お腹いっぱいで狩猟本能が満たされたオオカミは、七番目のヤキ少女の事を忘れて、一軒家の近くの川へと向かいます。
「ああ、満腹だ。川で水でも飲もう。それよりも、お腹いっぱいで眠くなったぞ」
日差しも暖かな川沿いの草原で、狼は昼寝を始めました。
お母さんヤギが帰ってくると、家の扉が開いてます。
慌てて家の中に駆け込むと、娘たちの姿がどこにもありません。
「ああ、私の可愛い娘たち。きっと悪いオオカミに、比喩ではなく物理的に、食べられてしまったのね」
涙する放漫裸体の母ヤギに、七番目の娘の声が、聞こえてきます。
「お母さん。わたし、柱時計の 箱の中よ」
お母さんが柱時計の戸を開けると、七番目の娘ヤギが飛び出してきて、お母さんヤギと抱き合いました。
「ああ。あなただけでも、無事だったのね」
お母さんヤギが、なかなか名前を呼ばれない娘ヤギたちの中の、七番目の娘の話を聞いて、一緒に草原の川へと向かいます。
すると、川の近くで満腹になったオオカミが、いびきをかいて、シエスタをとっていました。
しかしよく見ると、お腹のあたりが、モコモコと動いています。
お母さんヤギは、家から裁ちバサミと縫い針と糸を持ってくると、眠っているオオカミのお腹を、無痛で綺麗に切り裂きます。
すると、お腹の中から、丸呑みにされていた裸のヤギ少女たちが、元気に飛び出してきました。
「「「お母さん」」」
「ああ、私の可愛い娘たち」
裸に濡れ濡れな娘ヤギたちを、グラマーボディのヌード母ヤギが、優しく抱きしめます。
お母さんヤギは、娘たちに小石をたくさん集めさせると、オオカミのお腹いっぱいに詰め込んで、縫い針と糸でお腹を縫い付けて、みんなで家へと帰りました。
「ふわわ…よく寝たな。まだお腹が重たいぞ」
一眠りしたオオカミが、水を飲もうと川に首を伸ばした途端。
どぼ~~~ん。
バランスを崩した狼は、川に落ちて、どこまでも流されていってしまいました。
~終わり~
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