第31話 捜索

 この地域では壊滅状態となった姫騎士達の中で唯一、頼れる存在が真由だった。

 彼女はすぐに修行中の俊哉の元に訪れる。

 サッと障子を開くと、そこには悶々とする俊哉の姿があった。

 テレビから流れる卑猥な音と映像。

 それを見た真由はスッと障子を閉める。慌てて、俊哉が真由を追い掛ける。

 「あ、あの、真由さんっ!」

 廊下に飛び出ると、わなわなと肩を震わせる真由の背中があった。

 「こ、これは修行でして・・・」

 「解っています。お母さまに命じられた事でしょ」

 困惑した表情で真由は振り返る。

 「あ、あの・・・俊哉さん・・・また、鬼が出たそうです」

 「お、鬼ですか・・・。あれで終わったわけじゃ」

 「鬼に終わりはありません」

 「そうですか」

 俊哉はあの酷い戦いがまた訪れるのかと不安になる。

 それを見て取ったのか真由は少し興奮気味に言う。

 「だ、大丈夫です。どんな鬼であってもあなたとなら負けませんから」

 真由の言葉に俊哉は自分が弱気になっては駄目だと思い、笑顔で頷いた。

 

 邸宅には事態を説明する為に刑事が訪れていた。

 「警察庁の池田警部と楠木警部補です」

 二人の男性刑事は捜査資料の一部を佳奈美に見せて説明を始める。

 「新しい鬼はすでにこの街で活動をしています。多分、被害は増えているかと思われますが」

 刑事の説明を受けて、佳奈美の美しい顔に微かに怒りの色が入る。

 「このまま、鬼が男の精気を得続ければ、再び、危険な事態になりますね。今度は姫騎士の数も居ません。この地域は壊滅的な状況になる可能性は必至」

 佳奈美の言葉に刑事達は深い溜息と共に絶望的な表情となる。

 「佳奈美様・・・我々、警察は最大限、鬼の所在を探ります・・・ただ、我々の力ではそこまでが限界かと・・・最早、手に負える相手ではありません」

 「解っています。こちらも御刀様が最大限、力を発揮が出来るように仕込んでいます。だが・・・巫女が確実に鬼を仕留めるにはそれなりのお膳立てが必要・・・ここで巫女を失えば・・・終わりですから」

 「御意・・・それでは逐一、連絡を取ります。我らは戻ります」

 刑事達はそう言い残し、去って行った。

 佳奈美は立ち上がり、その足で道場へと向かった。

 道場では一心不乱に木刀を振るう真由の姿があった。

 「真由。稽古、ご苦労」

 道場に現れた佳奈美に気付き、真由は木刀を下げた。

 「お母さま・・・何か不穏な空気を感じます」

 「そうね。力を失いつつある私も何となく感じる程に強い」

 「鬼ですね」

 「そう・・・すでに被害者が多く出ている。多分、これからも増える」

 「早急に退治せねば?」

 「警察が捜索をしている。かなり頭の切れる奴みたいね。だけど、性欲を隠し切れない。その内、ボロが出る。その時、討って出る」

 「だが、今回は姫騎士は殆ど、使えないのでは?」

 「そうね。聖剣もかなり失われた。多分、10名も残っていない。危険な仕事になるわ」

 「問題ありません。鬼に人々が苦しめられるわけにはいきませんから」

 真由は堅い決心を口にする。

 「それで・・・御刀様の相手はしっかりしているの?」

 佳奈美はそう言うと、稽古着姿の真由の袴の脇から手を入れる。

 その手は彼女の股間にスルリと入った。

 「や、やめてください」

 真由は抵抗するも、佳奈美の体術によって、身体を抑え付けられる。

 「まだ、体術が甘いわね。これでは鬼に勝てぬわよ」

 「も、もうしわけ、あっ」

 佳奈美の指は真由の花びらを押し広げ、その花弁に指を滑らかに差し入れた。

 「あぁあああ!やめ!やめて!」

 真由は抵抗するも佳奈美の慣れた手つきに成す術なかった。

 そして、数分後には真由はその場に崩れ落ちるのであった。


 警察の捜索は一般の警察官も含めて、大規模に行われていた。

 ただし、大概の警察官は真相を知らずに参加している。

 相手は麻薬を所持していると思われる女子高生。

 そんな情報をもとに探す警察官達。

 片っ端から女子高生達が補導される。

 確かに犯罪性のある女子高生は何名か逮捕されたが、鬼とは無関係だった。

 だが、毎日、謎の死体が街の彼方此方で発見される。

 零係の刑事はそれが鬼の仕業だとすぐに解っていた。

 干乾びたような男性死体。

 死体は恍惚な笑みを浮かべていた。

 あまりに不気味な死体に検死をする鑑識課の職員も困惑している。

 鏑木警部補は事件を追っていた。

 彼の家系は陰陽師である。

 特殊な術によって、鬼の気配を感じ取る人形が指差す方に彼は向かっていた。

 この術の精度は約4割。

 あまり当たるとは言い難い精度だが、何も無いよりマシだった。

 彼はとある賃貸マンションの前にやって来た。

 築30年は経つだろうマンション。

 少し古びたマンションのエントランスに入る。

 古びたマンションでもちゃんと集中ロックであった。

 「ここに居る可能性があるか・・・どこかは解らない」

 鏑木はすぐに上司に報告をして、エントランスから立ち去った。

 それから零係による監視が始まった。

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