第10話

「お前はここで隠れてろ。動くんじゃないぞ、絶対に。」


 ユウスケは首元に手を当て、していたネックレスを豪快に引っ張った。チェーンを引きちぎる。


「全部が終わったら、これを警視庁のヤマギシって刑事に渡して欲しい。」


 私は受け取る、そのネックレス。ちぎれたネックレス。この後きっと、ユウスケは姿を消す。私の前から消える。その前に。


「待って。」


 私はユウスケの腕を掴んだ。


「…何なの?さっきから何言ってるの?私のこと連れ回すんじゃなくて、振り回してるだけじゃん!」


 ユウスケの溜め息なんて聞きたくなかった。悲しい目なんて見たくなかった。


「俺は潜入捜査をしてる。」

「潜入…。」

「俺も刑事だ。」


 嘘。


「お前が持ってるものは、俺の最後の仕事になるだろう。」


 嘘。


「だからお前は、俺の最後の希望だ。」

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