第3話

 私達は会話をした。それは静かに、密やかに。でも、穏やかだった。


 相手は私に銃を向けた人。なのにその人の声、話し方、トーンは私に落ち着きを与えた。会話が途切れた瞬間くうかんでさえ、感情を忘れた私の凍てつく心を溶かしそうだった。


 すごく心地が良かった。


 私は19歳の女子大生。コンビニのすぐ近くに住んでいる。その人は28歳。仕事は運送業だって。でもそれは表向き、なんとなくそう思った。この人は何かを抱えてる。きっと独りで。なんとなく見えた、影。


「お前は死にたいのか?」


 私はまた答えに迷う。


「んー…。死んでもいいと…思ってる…。」

「なんでそう思うんだ。」


 難しいことを聞いてきた。めんどくさいけど考える。


「…弱者と強者…。なくならない、境界線…。」


 下を向く私にツバメがつっつく。


「まだ何か言いたそうだな。」


 私はツバメに応える。


「…人は…、…醜い…。」

「『醜い』…か…。」


 据わる目は、孤独の証。透き通る目は、見たくないものを見過ぎてしまった証。


「確かにそうだな。」

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