第4話 父さん達が帰ってきたよ

その日、朝早くに先触れがきて今日父さんたちが到着することを伝えてくれた。

母さんもイライザも大喜びでみんなを迎える準備をしている。


そんな中でエリーはお父さんが帰ってくると言われてもお父さんという存在が良く判らないみたいだ。

だからエリーだけは普段どおりに振る舞っているよ。


そしてお日様が真上にあがった頃、遠くからこちらに向かってくる小集団が見えてくる。

その姿が見えたとたん、みんなお祭り騒ぎだ。


女達の中には喜びのあまりか泣きだす人もいる。

そんな中でも母さんは冷静だ。

領地の留守を預かっているという気概からだろう。


「さあ、英雄たちの帰還をみんなで称えるんだ」


「「「「おおおお」」」」


おじさんの叫びにみんなが答える。


そしておじさんが歌を歌いだす。

吟遊詩人が英雄を称える物語の中で歌う歌なんだって。

出征した兵士が帰還を迎える際に歌う歌の定番らしい。


歌は何度も何度も繰り返えされる。

歌っている領民たちは皆、喜びと誇らしさで高揚した顔で大声で歌い続けている。

疲れるってことを知らないみたいだ。


みんなの興奮が最高潮に達した時、その集団が村の入口から入ってきた。


「「「「うおおおおおおおお」」」」


感極まった絶叫が場を包む。


「帰ってきたぞう!」


集団のリーダの人が拳を突き上げて僕達に応えてくれる。


「貴方」


普段は淑女の母さんがその仮面を投げ捨てて走り出す。

そして母さんを皮切りに何人もの人が集団に向けて走っていく。


「貴方、貴方」


母さんがさっき拳を突き出したリーダの人に抱き着いている。

ああ、あれが父さんなんだ、これが僕が物心付いてから父さんを見た最初の瞬間だった。


そんな母さんの背中に父さんの腕が廻る、母さんを強く抱きしめる。

その横ではイライザが同じように抱きしめられている。

あの人がイライザのご主人なんだ。


そこからはもう大騒ぎだ。

皆が抱き合い、再会を喜び合っている。

喜びのボルテージが上がり、みんなの気分が高揚してゆく。


「みんな、聞いてくれ」


そんな雰囲気を父さんの声が切り裂く。


「俺達は今日、無事に帰還した。

だが、全員が帰還できたわけではない。ルッツ、シール、ルイーズ、3人は戦いに命を捧げてくれた。

勇敢に戦い散っていったのだ。

我々はこの勇敢な3名を決して忘れない。

彼らこそが本当の英雄だ」


「うおおおおおおお」


3名を称える声が響く。 

でもそんな中、必死にこらえながらも泣き崩れるご婦人たちがいる。

3人の縁者だろう。


父さんが泣き崩れるご婦人に何かを渡している。

亡くなった人の遺品だろうか?


喜びと悲しみが交錯する帰還式。

僕は思うよ。

犠牲者を3名に抑えた父さんの手腕は遠征軍のリーダとして素晴らしいものだ。

それでも戦死者は出て、悲しむ人は生まれるんだ。


そして、無事帰還できた兵士の中にもケガをしている人が散見される。

これが戦争なんだね。


うあ~、僕の体が持ち上がる。

母さんだ、母さんに抱えあげられている。


「カルロス、この子がオイゲンよ、もう3歳だわ」


「おお、オイゲンか。立派な男の子だ。さあ父さんの所においで」


母さんから父さんへと僕は渡される。

そして父さんの抱擁、ああ、お髭が痛いよ。


「いい子だ。エルザ、ありがとう。

オイゲンをひとりで立派に育ててくれたね。

それに僕のいない間の領地経営は大変だったろう。

本当にありがとう、頑張ったね」


父さんの言葉で母さんは感極まってまた父さんに抱き着いてくる。

僕がいるんだよ。


むぎゅうう、父さんと母さんに僕は挟まれてしまう。

うわあ、苦しいよ。


「か、母さま、苦しい、苦しいから」


僕の言葉で母さんの父さんに抱き着く力が弱まる。

助かった。

母さんのおっぱいに潰されるところだったよ。

イライザに比べれば大したことは無いんだけど母さんのおっぱいも僕のせいで大きくなってるからね。

圧迫が凄かったんだ。


「なんだ、オイゲン、苦しかったのか」


「うん、苦しかった」


「そう言えば、エルザ、お前の胸大きくなってないか」


「えっ、胸?

私の胸ですか」


父さん、ここで胸の話をしなくても良いと思うよ。

ほら、周りの目が母さんの胸に集まってるよ。


「あ〜、胸については僕も知りたいな」


父さんと母さんの会話に割り込んできた人。

あれ、この人ってイライザと抱き合ってたよね。

じゃあ、イライザの旦那さんだ。


「なんだ、シャロン、俺達の事なんて気にしないでイライザと甘えてろよ」


「ああ、でもな。そのイライザなんだが」


シャロンさんの目がイライザに向く。

釣られて父さんもイライザの胸を見つめてしまう。


「なっ、イライザか?

あそこにいるのはイライザだよな」


「ああ、イライザだ」


「そうかあ、それにしても...凄いな」


父さん、そのひと言は不味いよ。


「あら、貴方。何が凄いのかしら」


ほら、母さんの声が冷たいよ。


「い、いや、3年の歳月は美少女を美人に変えるんだな」


おっ、上手い。上手いよ父さん。


「なあ、カルロス、正直に言っても良いんだぞ」


「えっ、正直、正直にって?」


シャロンさんのお怒りの声に父さんは戸惑ってるよ。


「あ、貴方、実はイライザにはオイゲンの乳母をやってもらってたの」


母さんが説明を始める。


「そうか、お前のおっぱいだけじゃ足りなかったのか?」


ああ、父さんそれもまずいって。


「私だっておっぱいは一杯出たわよ、この胸なんだから!

でも貴方の代わりに仕事で忙しくて留守をすることも多かったの。

だからイライザにも手伝ってもらったのよ」


「そうか、シャロン、助かったよ」


父さんは呑気にお礼を言ってるけど、シャロンさんが怒っている理由が判ってないんだね。


「それで、貴方、実はオイゲンは魔法を使えるみたいなの」


「魔法?」


「そう、魔法、イライザからは成長魔法って聞いたわ」


「成長魔法??」


「そ、それじゃあ」


「ああ、カルロス。イライザの胸が随分と貴様の息子の世話になったみたいだ」


父さんの顔色がかわったね。


「じゃあ、イライザの美乳が巨乳になったのは」


「ああ、貴様の息子が頑張ってくれたみたいだな」


「そ、それは何と言うか...」


「なあ、カルロス。俺がイライザのどこに惚れていたかは知ってるよな」


「あ〜、良く惚気てたからな。微乳だろう」


なんと、シャロンさんは微乳派だったんだ


「まあ、結婚すればおっぱいだって大きくなるさ。それが男の甲斐性だろう」


「それは亭主が嫁のおっぱいを大きくした場合だけだ」


父さん、まずいって。


「イライザのおっぱいは俺じゃなくてお前の息子に巨乳にされたんだぞ。

くそおおお」


うわああ、怒ってる、怒ってるよ、シャロンさん


「ね、ねえ、取り合えず家にいらっしゃらない。色々と積もる話もあるでしょうから」


母さんがシャロンとイライザを家に誘う。

そうだね、そろそろ周りの目が痛いよね。


父さんとシャロンさんもその目線に気づいたのか、母さんの提案通り家で続きの話をすることになったようだ。

でも、話っていわれてもね、なにを話すんだろう?


どうやら、おっぱい戦争の第二幕が我が家で勃発するらしいね。


は〜っ

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