第24話 それでも。

 私はどうしたいんだろうってずっと考えた。


 伊月とりんと仲直りしたくて、また一緒に楽しい時間を過ごしたくて。……それは二人の邪魔になるってことはわかってる。


  相容れない願いだってわかってる。


 そう、これはただのわがまま。


 私だけがそうしたいって思ってる。


 幼馴染三人がまた仲良くなるには……やっぱり、伊月があんな態度をとっている理由を知らなくちゃって思う。


 たとえ緑川くんに、伊月に、りんに関わるなといわれようと。


 伊月に聞かなくちゃいけないんだ。



  ☆★☆



 ホームルームが終わって放送部室まで走った。


 そおっと覗くと、伊月だけがいた。


「伊月」


 私は伊月をじっと見つめた。


 伊月は読んでいた本から目を離さないで「帰って」とだけつぶやく。


「……やだ、帰らない」


「……」


「よく考えたら、こっちに戻ってきて話したの二回目、かな。……私、伊月とりんと、また仲良くできるって思ってた。そう期待して、戻ってきたのに……」


 違う。私が言いたいのはこんなことじゃない。


 これじゃまるで伊月を責めているみたいだ。


「伊月はさ、昔はおとなしかったよね。その時は……その時もまあ不愛想だったけど、たまに笑ってくれて、その笑顔がすごく好きだった」


 伊月はバタン、と荒々しく本を閉じた。


 伊月が遠くに行った気がした。


 ——私、間違えちゃった。


 伊月がさらに遠くに行ってしまう前に畳みかけるように言った。


「どうしてそんな風になっちゃったの!」


「……そんな風?」


 びゅうっと冷たい風が通った。


 伊月はこっちに戻ってきてから私の目を見たことがなかった。


 その時、初めて私の目を見てくれた。


 うれし――


「お前のせいだよ」


「え……?」


 伊月は目を鋭くした。





「うそつき」






 その声は耳にこびりついて離れなかった。


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