第19話 関わらないで

「茜谷さん!」


 私が教室に入るなり元気よく声をかけてくれる男の子がいる。


「緑川くん」


「今日も元気なさそうだね……? どしたの? 話、聞くよ」


「ん……、ありがとう。聞いてほしいけど、ここじゃちょっと……」


「じゃあ、ちょっと外でよっか?」


 うん、と小さく頷く。


 空は快晴で、ぽかぽかと暖かい。


 冬なのが嘘みたいだ。


 私は昨日のことをすべて話す。


「そうだったんだ……。三人は幼馴染なんだっけ?」


「うん。——昔はあんな感じじゃなかったの。伊月も、りんも。りんは……、こっちに来てからすぐは昔とあんまり変わらなかったんだ。だけど、ここ最近様子がおかしくなって」


 緑川くんに相談すると、そんなに考えていなかったことがするっと口からでる。


 自分は実はそう考えていたんだって気づいた。


「もう、二人とはかかわらない方がいい」


「え……?」


 思ってもみなかった言葉に私は絶句する。


 確かに、関わらない方が楽かもしれないけど、二人は幼馴染なんだよ?


「このままじゃ茜谷さんが傷つくだけだ」


「で、でも幼馴染だから――」


「幼馴染でも、ずっと一緒にいるわけじゃ、ないだろう?」


 妙にきっぱりとした声。


「一緒にいれるわけ、ないんだ」


 でもどこか切なげで。


「緑川くん……?」


 緑川くんははっと我に返ったようにこっちを見る。


「ごめん。だけど、やっぱり、二人とは距離を置いた方がいい」


 緑川くんが私のことを気にしてくれているのはわかるよ。


 心配してくれているからそういう風に言ってくれてるんだって、すごく、わかる。


 だけど……、やっぱり、関わらないことは、無理だよ……。


 緑川くんはあきらめた様子で「わかった」とつぶやく。


「どうにか方法を考える。それまでは……、関わらないでいてくれ。頼む」


 その真剣な瞳に、私は思わず頷いた。




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