第13話 懐かしい声

 家に帰ってきてベッドに寝っ転がるとスマホが鳴り出した。


 誰からだろう?


 でも疲れていて出る気にもなれない。


「はあああ」


 もう学校、行きたくない……。


 伊月とはあれ以来話せていないし、りんとも話せてない。


 大変なことになっちゃった……。


 どうしてこうなったのか、はっきり言って、わからない。


 私、何か悪いことしちゃったかな……。


 スマホ、まだ鳴り続けてる。


 とりあえず手に取る。


 もしあの3人のうちの誰かからだったら、絶対にでない。


 あ、美香みかちゃんだあああ!!


 急いで通話ボタンを押す。


「瑠香っち!」


「美香ちゃああん」


 出た瞬間泣きそうになっている私の声を聴いて美香ちゃんはドン引きしているような……。


「瑠香っち、……大丈夫?」


「大丈夫じゃない……けど、大丈夫! 美香ちゃんはどうしたの?」


 転校先で一番の仲良しだった美香ちゃんに心配かけるわけにはいかないもん。


「あー、特に用事はないんだけどね、瑠香っちの声を聴きたくなったっていうか」


 美香ちゃん、私の彼氏になって……!


 あれ。そこで初めて気が付く。


 美香ちゃん、声枯れてる?


「美香ちゃん、部活でなんかあった?」


 えへへ、とばつが悪いように笑った後。


「まあ、何かっていうほど大きくはないけどね。やっぱ瑠香っちは私のこと、何でもわかっちゃうなあ」


「どうしたの? いじめられた?」


「まさか。みんな優しい人だって瑠香っちも知ってるでしょ……まさか、瑠香っちいじめられたの!?」


 ある意味いじめっていうか、うーん、普通にいじめられてる気はするけど、話したくない。


「違うよー、ただ、友達ができないってだけで」


 なんだ、と美香ちゃんは笑う。


「瑠香っちなら大丈夫だよ、こっちでいっぱい友達いたでしょ」


「ありがとう」


 うれしいな。


 励ましてくれる友達がいるって。


「それで、美香ちゃん、何があったの?」


「放送部員が次々に辞めていっちゃったんだ」


 私は青ざめる。


大事おおごとじゃん、やばいじゃん! 何があったの!?」


「それがよくわかんないんだよね……。でも、たぶん瑠香っちが――」


「私が何かしちゃった?」


「違う、違う。そういうわけじゃなくて、瑠香っちが転校しちゃったからみんなやる気がなくなっちゃったのかなあって」


「それで――美香ちゃん、練習しすぎちゃったの?」


「正解。もう廃部かもって思ったら――」


「そんなにやばいの!?」


「うん、実は。全国いかないと、消されそうなんだよね……」


「美香ちゃん、全国いったじゃん、大丈夫だって!」


「あの時は瑠香っちがいたから」


 私も、役に立ってたんだと思うと胸が熱くなる。


「私が応援しに行く」


「ほんとに!?」


「うん、だから大丈夫だよ! 今は正しい発声方法を思い出して、ね」


「恥ずかしい……」


「またいつでも電話してきてよ」


「わかった、ありがとう! じゃあね」


 電話を切る。


 あ、とある考えが頭をよぎる。


 あの三人も放送部だったはず。


 もしかしたら――、ううん、大丈夫、今年の大会では見なかったし。


 でも。


 なんだか気持ち悪い感覚がして。


 私はその感じを早く消しとりたくて布団を頭にかぶせて寝た。

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