夏休みだよ!店舗大会 決勝戦

いよいよ決勝戦

絵里の夜の貴族と僕らゲーム天狗放送室が

勝ち上がった

天狗さんの予想通りに


前の試合で風祭君が相当強いのが分かった上に他の2人も強くて穴が無い


それに比べて僕達の方は紅美ちゃんが

どうしても穴となってしまう。

「これは厳しいぞ」

トーナメント表を見て一人言を漏らすと

絵里が近付いて

「ウフフ、ナイト」

僕の顔を見つめながら甘いくで微笑む

幼い顔をして妖艶なんだよな

「お手柔らかに頼むね」

リョウさんのように握手を求めてみると絵里は無言でスカートを摘まみ貴族の礼で返してきた。


私は、あくまでも自分の様式を通すし

貴方の流儀には付き合わないわ

無言の主張はそう語っているように感じた。

「なんだか肩透かしを食らっちゃったな」

苦笑いの僕


司会に両チームの先鋒が呼び出されると

夜の貴族は雷堂で対するゲーム天狗放送室は

僕らの紅美ちゃん


「お前が相手が楽勝だな」

紅美ちゃんに見下した態度を取る雷堂に

「そんなこと言って、痛い目みても知らないんだから」

奴の挑発にも負けじと言い返して決勝戦が火蓋を切った。


雷堂は激しいラッシュで仕掛けて予想通りに

負けたのだけど許せなかったのが

紅美ちゃんのプリーステスのHPゲージを

あえてギリギリ残し時間いっぱい使えるだけ

使って馬鹿にしながら弄んだ事が許せなかった。

「お前、結局何も出来なかったな!」

「うー」

嘲笑う雷堂の言葉に紅美ちゃんは悔しそうだけど何も言い返せずにいる

怒りが込み上げ僕が敵討ちをしたかったけど、

次は僕の出番じゃない

もどかしく思っていると天狗さんが僕の肩に手を乗せて一言

「任せておけ」

僕の気持ちを察してくれて同じ気持ちなんだ

ここは天狗さんに任せてみよう。

「お前なんか天狗ちゃんにやられちゃうんだから」

「へっ、そうかよ!

それなら続けて天狗の野郎も倒してやるぜ!」

負け惜しみを言う紅美ちゃんに天狗さんは

「紅美よ、お主は負けたのだ

下がっておれ」

そう言って紅美ちゃんを下がらせて

雷堂を見下ろすと

「小僧、よくも紅美をコケにしてくれたな」

天狗さんの言葉には凄みが出ていて

その威圧感で彼は怯んだが

「面白れぇぜ!

オメエを倒せば姫も喜ぶ」

負けじと威勢のいい態度で食ってかかる



決勝戦第2試合


雷神対ゲーム天狗

天狗さんはプロテクションをかけたランサーで

出るのだけれども雷堂のアサシンは4/5以上のHPゲージを残している。

彼の強さを考えれば天狗さんでも無事では

済まないよな

試合が始まると雷堂は早々に攻撃を仕掛けるが

天狗さんのランサーは兎に角逃げ回る。


「敵討つんだろ!

逃げてんじゃねーぞ!」

挑発されても構わず逃げるダメージを受けず

与えずに

得意の時間切れを狙って勝つんだろうなと思った矢先に隙を見付けて攻撃を仕掛けた。

ビシッと隙の少ない単発攻撃で

「クソがぁ」

漂う威圧感の割には地味な戦い方だが、

それでも的確にダメージを重ねて必要以上の

攻撃を受けない。

「チマチマと鬱陶しい野郎だ!」

単発でダメージは受けても、連続攻撃は受けず間合いの取り方も絶妙で雷堂の持ち味の接近戦を殺している。


この戦法は効果的で、イラつく雷堂の動きは

明らかに雑になっていく

あの根気強さは真似したくても出来ないなぁ

ビシッ!

ビシッ!

相手の挑発にも乗らず地道な戦い方で、

あの雷堂相手にHPゲージの半分以上残して

勝利した。

「なんだかんだ言っても強いな」

「クソがぁーー!!」

負けて悔しがる雷堂に風祭君はやれやれと

いった感じで

「雷堂じゃ、そんなもんだよな」

と穏やかに呟くと雷堂はギッ!と風祭君を睨み付ける。

勝利した天狗さんは絵里を指差すと

「次はお前だエリザベート」

「フフフ、流石ね天狗

でも今日こそは勝たせて頂くわ」


第3戦目

絵里のソーサレスは《サンダークラック》を

を落として牽制

天狗さんのランサーは前後のステップで器用に回避

だが距離の優位はソーサレス

遠間で《雷の矢》をあらゆるタイミングで

打ち続けて

ランサーはジャンプでかわしたりガードしても何発かは受けてしまう

そんな攻防の中、隙を見つけたランサーは

槍を投擲して《雷の矢》を打ち消し貫通させると命中してダウンを奪った。

倒れてる間に接近戦を仕掛ける為に近づくと、それを嫌がり逃げるソーサレス

その逃げてる間に投げた槍を拾い絶妙な間合いを取る

「あえて逃がしたのか」

先程の槍の投擲でプレッシャーを与えていたので、ソーサレスの動きに迷いが生じ

それを見逃さず攻撃を仕掛けるランサー

天狗さんの戦いの駆け引きが際立つ

ソーサレスの残りのHPゲージも1/3以下に

なって破れかぶれで大技の《雷の雷》で逆転を狙おうとしたら攻撃範囲外に逃げたランサーが

再び槍を投擲して勝利した。


…凄い、強敵2人を相手に立て続けに勝つとは

思わず感心どころか絶句してしまう

負けた絵里はいつもの澄ました振る舞いで

「さすがね天狗

簡単には勝たせてくれないわね」

とか言って以外と悔しそうにしてない……

訳でも無く

冷静を装っていただけで悔しさが段々と込み

上がって

「ンーーー」

と唸って風祭君にしがみつくと駄々っ子が

おねだりするみたいに

「風神、やっつけちゃって」

風祭君は絵里の頭を優しく撫でながら

「うん、分かったよ

絵里ちゃんの為に勝ってあげるからね」

そう言って筐体に座ると

「参ったね」

と呟いた。


次は天狗さんと風祭君

強敵2人を相手にしたランサーのHPゲージは殆ど残っていない

相手は風祭君のダークナイト

スタートスキルで雷をエンチャント

まず勝てないだろうけど、天狗さんがどこまで

ダメージを与えてくれるかによって

ゲーム天狗放送室の勝敗が決まるので

「天狗さん!

優勝は天狗さん次第なんで頼みますね」

「……」

僕がエールを送っても返事もせずに無言のまま

筐体のモニターを見ているので

集中しすぎて聞こえてないのかな?

それなら次もやってくれるぞ!

と期待できる。


第4戦開始

風祭君は様子を伺いながら細かく前後に動いて

すぐには仕掛けず天狗さんは全然動かない

お互いに牽制すらしない

しばらくして天狗さんが先に動くと風祭君は

慎重に攻撃を出して追いかけるので

それをバックダッシュで逃れるが暇を与えずに追っかけてくる。


風祭君の方は何もしなくても勝てるんだから

戦って少しでも多くのダメージを与えてよ!

なんで逃げてばかりなの?

「このまま繋げられても勝ち目がないよ」

そんな天狗さんが焦れったくてイラついた言葉を吐いてしまうと

「間宮くん間宮くん」

紅美ちゃんが僕の服を引っ張ると彼女は真剣な眼差しの目で

「天狗ちゃんはね

間宮くんに風祭くんの動きを見てもらおうと

頑張ってるんだよ」

「まさか、いつもの逃げでしょ」

「違うよ

天狗ちゃん、口では言わないけど間宮くんに

頑張ってもらいたいんだよ」

「そうなの?」

「だからしっかりと見てあげて」

本当かな?

僕は天狗さんの意図が分からないけど

紅美ちゃんは紅美ちゃんで天狗さんが何を考えているのか理解しているのかもしれない

僕の好きな紅美ちゃんが言うのだから

次に備えて風祭君の動きを目に焼き付けておこう


結局天狗さんは攻撃を一発も出さずに

長い間耐えたけど残り10秒で倒されてしまった。

「ここまで粘られるとはね」

風祭君のブラックナイトはノーダメージなのにようやく勝ったように見える

次はいよいよ僕の番

風祭君の動きを見てたんだ上手くやれるさ


最終戦

試合が始まり様子を伺おうとしたら

ブラックナイトは弱攻撃から繋げて連続攻撃技ブラッディスラッシュを入れてきて

咄嗟のガードは間に合ったがHPは削られてしまう

「流石に入らないか」

《ブラッディスラッシュ》の技硬直に合わせて

攻撃を返すけど浅く技を入れていたようで

綺麗にかわされて反撃を受けHPゲージの1/3を持っていかれた。

隙が無くジワジワと詰め寄る風祭君の

ブラックナイトのプレッシャーに押し潰されてしまいそうになる。

「やっぱり強いよ」

不利な状況なのに反撃が怖くて手が出せなく

思考が固まって動けない

「このまま終わらせるよ」

巧みな試合運びにHPゲージの半分まで減らされてしまうと

ああ、やられちゃったな

心の中で負けを認めた時

「一騎

このまま、やられっぱなしでいいのか!」

天狗さんの喝が入いる。

そうだ紅美ちゃんが見てるのに

ただやられっぱなしは嫌だ!


呼吸を整え心を落ち着かせてブラックナイト

の動きを観察すると攻撃が当たるか当たらないかの位置で微妙に前後して

それによって先か後かで仕掛けるか反撃するかを見極めているようだ

それならタイミングのずらし方が分かる

少し前に進んだので

試しに《パリイ》で攻撃を弾いてみると成功したので反撃に転じた。


有利な状況を生かして連続攻撃を入れると

流れが変わり

彼の得意な攻撃を避けてからの反撃に動きにも

対応が出来てHPゲージも逆転した

「よし、勝てるぞ!」

このまま倒しきろうと攻め続けていたら

「調子に乗るなよ」

《ブレイクブレイド》で強引に割り込まれ

お互いの攻撃が当たると僕のソードマンは

打ち上げられてから落下してる間に

《ブラッディスラッシュ》を受けて止めに

最後で勝ち急いで油断しちゃったよ

「ああ、やっぱり強いな」

結局負けてしまった。


せっかく勝てるかなと思ったのに駄目だったかと落ち込むと

「よく頑張ったな

素晴らしいぞ」

天狗さんは負けた僕なのに拍手をして労って

くれて紅美ちゃんも

「おしかったね」

珍しく優しい言葉をかけてくれた。

「お疲れ様」

風祭君も握手を求めてくれたので握り返すと

「あそこで盛り返して来るとは驚いたよ

ただ君には負けたくなかったんだよ。」

笑顔でそう言ってから天狗さんに

「何で戦わずに逃げ回っていたのですか?

少しでもダメージを与えていたら間宮君なら

勝っていたかもしれないのに」

そうだよ、優勝宣言までしたのに

いくら風祭君の動きを見せるたって

ダメージを与えてた方が勝ちに近かったのに

「……」

質問している風祭君の方ではなく僕を見てから

口を開いた

「一騎が我(われ)次第で優勝が決まると言って

己で勝ち取ろうとせずにいた」

天狗さんに図星を突かれる

確かに無意識で風祭君には勝てないだろうと

戦う前から負けを認め

その上、天狗さんに頼ろうとしていた

自分の弱い心に気付かされて恥ずかしくなってしまった。

「そんな一時の勝利より、お主と同じ条件で

戦うのが一騎の成長に必要だと思ったまでだ」

静に淡々といい放つ

風祭君は何か感心したように僕に

「ふーん、君は随分と目をかけてもらっているんだねぇ

勝てる試合を棄ててまで」

「えっ、どういう事?」

「僕に勝てるのは天狗さんだけだよ

その天狗さんが最後に出ていたら僕達は

負けていたかもしれないね」

「風神よ

それでも一騎はお主をあそこまで追い詰めたではないか

今回は我々の敗北だが得られるものは大きかった」

「そっかぁ

まだまだ楽しめそうだね」

フフフと静かに笑った。


「とうとう天狗に勝ったのねー」

歓喜の声を上げた絵里が風祭君に抱きついて

嬉しさのあまり頬を擦り寄せる。

「絵里ちゃん、くすぐったいよ」

雷堂も来て一緒に勝利を喜び

こうして夜の貴族が優勝を果たした。


夜の貴族の3人は強かった

次は風祭君に負けないよう強くなって天狗さんに頼らなくても優勝できるようにならなきゃ



表彰式も終わって帰ろうとしたら

スクラップワークスのリョウさんが僕の所に

来て

「ボク達これから打ち上げをするけど

ゲーム天狗放送室さんも一緒にどうだい?」

「えっ、いいんですか

天狗さんに聞いてみます」

リョウさんのお誘いを天狗さんに伝えると

二つ返事で了承

紅美ちゃんは不満を言いつつも渋々納得したので参加を伝えると

雷堂が三笠君と雨竜くんの2人とまた口論している。


「オメェら負けたんだ

姫の前に二度と現れるんじゃねぇぞ!」

「そんな約束してねえだろ!

訳分からねえ」

リョウさんはそんな彼等の言い合いにウンザリしていて端から見ても見苦しい

「ボク達は先に行ってるから」

と彼女達は先に店を出た。


あまりにも口論が終わらないので止めに入ろうとしたら紅美ちゃんが

「絵里ちゃんが招いた事なんだから

ほっときなよ」

なんて言って引き留めるけど大事になりかねない

「いや、だって放っといたら殴り合いでも

始まりそうな勢いだよ」

「いいんじゃない」

「良くないよ!

お店にも迷惑かかるし」

紅美ちゃんは平然と言うよりは冷やかに

彼等の言い争いを見ている。

「いいこと教えてあげるね

ホーリーブラッドはね

元は絵里ちゃんが作ったんだよ

三笠くんと雨竜くんを誘ってね

でもね、飽きちゃったんで自分勝手に辞めちゃったの」

えっえっ?

どういう事?

「だから大騒ぎになったら絵里ちゃんが責任

取ればいいんじゃない」

3人の口論は収まることなく

一層白熱し収まる様子もないので止めに入ろうとしたら背後から

「そんなことないもん」

と聞こえてきて、振り向くと絵里が僕と紅美ちゃんの話を聞いていたようで小さい身体を震わせながら瞳に涙を貯めている。

そんな彼女を冷やかな目で見ている紅美ちゃん

「絵里はね、試練を与えただけで

悪くないもん

だから勝手に辞めた訳じゃないもん」

「それって三笠くん達をお払い箱にする口実でしょ」

「仕方ないじゃない

ミカエル、ウリエルが天狗に勝てないから

絵里の血が穢れて夜にしか生きられなくなったんだもん」

えっ、血が穢れたってなんだ?

それに今午後3時だよ

しかも自分のことエリザベートじゃなくて

絵里って言ってるし、ぶれすぎだよ。

「そうだ姫は悪くねぇ

テメェらが不甲斐無いから俺達が召喚されたんだ」

言い訳にならない言い訳を雷堂が庇うけど…

「要するに三笠君達が天狗さんに勝てないから

辞めて勝てそうな人集めたの?」

「それだけじゃないよ

紅美ちゃん好みの顔の男の子が

風祭くんと雷堂くんだったんだよ」

「それで勝手に辞めたの?」

僕は絵里の身勝手さに唖然としたというか呆れてしまった

「間宮くんも誘われたんだし夜の貴族に

行けば面白かったのにね」

何で僕にまで矛先が向いてるの?

紅美ちゃん酷い

「紅美ちゃんって

どうしてそうゆうこと言うの?

絵里が誤解されるじゃない」

「誤解じゃないじゃない」

それが本当なら紅美ちゃんの言う通りで

誤解じゃないと思う

僕の呆れ顔が表情に出ていたようで

絵里は忍びなくなって泣き出した。

「ビエーン」

あっ、出た。

「エリシア」

「エリシア、ごめん僕達が不甲斐ないばかりに」

泣き出した絵里を囲んで三笠君と雨竜君が

慰めるその姿は典型的なオタクサークルの

お姫様とその取り巻きになっているよ。


泣いている絵里に「姫」と両腕を広げ抱き締めようとする雷堂

その横をテテテと通り過ぎて風祭君に抱きつくと

「絵里、悪くないもんね」

を連呼して彼の胸に顔を埋めて甘えて

優しく頭を撫でてもらっている。

嫉妬と嫌悪の目で風祭君を見る三笠君と雨竜君

両腕を広げたままの雷堂は気まずいようで

伸びをしてるかのように誤魔化す


嫌だな、関り合いになりたくない雰囲気で

居心地が悪いなと思っていたら

「よし!我等ゲーム天狗放送室は撤退するぞ」

「おー!」

天狗さんと紅美ちゃんは店を出るので、

放ってもいいのかな?と

気にしつつも2人の後を追って出ようとしたら

背中に視線を感じて振り向いてみると

風祭君に抱きついている絵里がチラッと僕を

見ていて視線が合ったので目を反らして店を出た。


何だか色々とあった大会だったよ。




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