第26話



「しまったなぁ……」


 大石は一人暮らしの自分の部屋で一人悩んでいた。

 色々あって同じ学校の保険の先生である保永愛奈の告白をオーケーしてしまった大石。

 クリスマスから一夜明けた今日、大石は朝から目覚めが悪かった。


「はぁ……あの後何があったんだっけ? てか、なんで俺は裸なんだ?」


 大石は昨日の出来事をすっかり忘れていた。

 大石はあの後、愛奈と共に酒を飲みに町に向かい、そのあとの記憶がなかった。


「あれ? 俺はあの後何を……そうしてなんで俺の部屋にワインが?」


 大石はそんな事を考えながら布団から起き上がる。


「ん……う~ん……」


「え?」


 布団から起き上がった大石は隣に誰かが寝ている事に気が付いた。

 大石はその瞬間、背中からドバっと汗が噴き出すのを感じた。


「まさか……」


 大石は恐る恐る隣の布団をめくる。


「う~ん……」


「……」


 隣にはやっぱり裸で眠る愛奈の姿があった。

 大石はそっと無言で布団を元に戻す。


「……夢か」


 大石はそう言うと、再び布団の中に潜る。

 再び眠ればこの悪い夢から覚められると思ったのだろう。

 しかし、いくら目を閉じても夢から覚めることは無い。

 そして、大石は徐々に気が付く。


「……なわけねーよな……」


 大石は現実逃避をやめ、再び起き上がって状況を整理し始める。

 

(したのか? 俺はしたのか?)


 大石は自分で自分に問いかけながら、ベッドの周りを見る。

 脱ぎ散らかされた自分の衣服、そして自分の部屋には似つかわしくない女性物の下着と衣服。

 

(したのか!? 俺はしたのか!!)


 状況を確認しても全然思い出せず、大石は焦り始める。

 大石はとりあえずパンツを履き、いつものようにコーヒーを淹れる。

 愛奈は全く起きる気配がなく、大石はどうしたものかと頭を悩ませる。


「はぁ……いっ! 俺は一体どんだけ呑んだんだ? はぁ……」


 大石は頭を押さえながら、コーヒーを飲む。

 外はこんなに天気が良いのに、大石の心の中は大荒れだった。


「う、う~ん……」


「あぁ、起きましたか」


「ん~……おはようございます……先に起きてたんですね」


「まぁ……」


「なんでこっちを向かないんですか?」


「その前に服を着てください!」


 そこで愛奈はようやく自分の今の姿に気が付いた。


「あぁ、昨日の夜のままでしたね」


「そ、そうなんですか?」


「もぉ、なんですかぁ~昨日散々見たのに、今日は見ないんですかぁ~?」


「昨日!? 見た!?」


 大石は愛奈の発言を聞き、さらに冷や汗をかく。

 冬だというのに、大石はすでに汗だくだ。


「ま、待ってください! も、もしかして俺たちはその……」


「……もう、私に言わせないでくださいよ……きゃっ!」


「マジか………」


 大石は愛奈の言葉を聞き、顔を真っ青にする。

 確かに付き合う事にはなったが、まさか当日のこんな事になるなんて思わなかった大石。

 

(しかも酔った勢いかよ……俺最低すぎるだろ……)


 大石は頭を抱えながらキッチンで固まってしまった。


「あ、大石さん私にもコーヒー下さい」


「その前に下を履いてください……」


「えぇ~履いてますよ?」


「それは下着です!!」


 大石は大きなため息を吐き、ソファーに座って愛奈と話を始める。


「あの……昨日はあの後何があったんでしょうか?」


「えぇ、忘れちゃったんですかぁ~、私たちの燃えるような夜を……」


(俺は燃えたのか……)


 大石はなんだか愛奈の話を聞くのが怖かった。

 しかし、何も覚えていない大石は聞くしかなかった。

 しっかり状況を把握しなくては、愛奈に失礼だと思ったからだ。


「あの……その……私たちは……したんでしょうか?」


「何をですか?」


「いや、だからナニです……」


「ふふ……それはどうでしょうねぇ~」


「濁さず教えて下さい、自分はその……正直何も覚えてなくて……」


「ですよねぇ~そうとう酔ってましたし」


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