第26話
*
「しまったなぁ……」
大石は一人暮らしの自分の部屋で一人悩んでいた。
色々あって同じ学校の保険の先生である保永愛奈の告白をオーケーしてしまった大石。
クリスマスから一夜明けた今日、大石は朝から目覚めが悪かった。
「はぁ……あの後何があったんだっけ? てか、なんで俺は裸なんだ?」
大石は昨日の出来事をすっかり忘れていた。
大石はあの後、愛奈と共に酒を飲みに町に向かい、そのあとの記憶がなかった。
「あれ? 俺はあの後何を……そうしてなんで俺の部屋にワインが?」
大石はそんな事を考えながら布団から起き上がる。
「ん……う~ん……」
「え?」
布団から起き上がった大石は隣に誰かが寝ている事に気が付いた。
大石はその瞬間、背中からドバっと汗が噴き出すのを感じた。
「まさか……」
大石は恐る恐る隣の布団をめくる。
「う~ん……」
「……」
隣にはやっぱり裸で眠る愛奈の姿があった。
大石はそっと無言で布団を元に戻す。
「……夢か」
大石はそう言うと、再び布団の中に潜る。
再び眠ればこの悪い夢から覚められると思ったのだろう。
しかし、いくら目を閉じても夢から覚めることは無い。
そして、大石は徐々に気が付く。
「……なわけねーよな……」
大石は現実逃避をやめ、再び起き上がって状況を整理し始める。
(したのか? 俺はしたのか?)
大石は自分で自分に問いかけながら、ベッドの周りを見る。
脱ぎ散らかされた自分の衣服、そして自分の部屋には似つかわしくない女性物の下着と衣服。
(したのか!? 俺はしたのか!!)
状況を確認しても全然思い出せず、大石は焦り始める。
大石はとりあえずパンツを履き、いつものようにコーヒーを淹れる。
愛奈は全く起きる気配がなく、大石はどうしたものかと頭を悩ませる。
「はぁ……いっ! 俺は一体どんだけ呑んだんだ? はぁ……」
大石は頭を押さえながら、コーヒーを飲む。
外はこんなに天気が良いのに、大石の心の中は大荒れだった。
「う、う~ん……」
「あぁ、起きましたか」
「ん~……おはようございます……先に起きてたんですね」
「まぁ……」
「なんでこっちを向かないんですか?」
「その前に服を着てください!」
そこで愛奈はようやく自分の今の姿に気が付いた。
「あぁ、昨日の夜のままでしたね」
「そ、そうなんですか?」
「もぉ、なんですかぁ~昨日散々見たのに、今日は見ないんですかぁ~?」
「昨日!? 見た!?」
大石は愛奈の発言を聞き、さらに冷や汗をかく。
冬だというのに、大石はすでに汗だくだ。
「ま、待ってください! も、もしかして俺たちはその……」
「……もう、私に言わせないでくださいよ……きゃっ!」
「マジか………」
大石は愛奈の言葉を聞き、顔を真っ青にする。
確かに付き合う事にはなったが、まさか当日のこんな事になるなんて思わなかった大石。
(しかも酔った勢いかよ……俺最低すぎるだろ……)
大石は頭を抱えながらキッチンで固まってしまった。
「あ、大石さん私にもコーヒー下さい」
「その前に下を履いてください……」
「えぇ~履いてますよ?」
「それは下着です!!」
大石は大きなため息を吐き、ソファーに座って愛奈と話を始める。
「あの……昨日はあの後何があったんでしょうか?」
「えぇ、忘れちゃったんですかぁ~、私たちの燃えるような夜を……」
(俺は燃えたのか……)
大石はなんだか愛奈の話を聞くのが怖かった。
しかし、何も覚えていない大石は聞くしかなかった。
しっかり状況を把握しなくては、愛奈に失礼だと思ったからだ。
「あの……その……私たちは……したんでしょうか?」
「何をですか?」
「いや、だからナニです……」
「ふふ……それはどうでしょうねぇ~」
「濁さず教えて下さい、自分はその……正直何も覚えてなくて……」
「ですよねぇ~そうとう酔ってましたし」
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