第23話
「なんで俺が?」
「引っ越してきたばっかりで友達もいないのよ、それに私この辺りの地理わからないもん」
「まぁいいけど……」
「じゃあ早く着替えて行くわよ」
恭子は土井にそう言うと、土井を置いてリビングに向かった。
「あいつ……まさかまた来るとは……」
どうやら自分は遊び相手として恭子に気に居られたらしい。
そう土井は思いながら、歯を磨き始めた。
歯を磨き、着替えを済ませると土井はリビングに向かう。
すると、リビングでは土井の母親と恭子が楽しそうに話をしていた。
どうやら昨日と今日で土井の母親と恭子は随分仲良くなったらしい。
「あら、やっと起きたのね」
「母さん、勝手に俺の部屋に入れないでくれよ」
「でも、お母さんに起こされるより、可愛い女の子に起こされた方がうれしいでしょ?」
「もう、お母様ったら可愛いなんてぇ~」
そう言いながら笑い合う恭子と土井の母親。
土井は深いため息を吐いた後、準備を済ませ約束通り恭子と買い物に向かった。
「んで、何を買うんだ?」
「えっと……ハンガーでしょ? あとはカラーボックス……それと洗濯機」
「洗濯機!? そんなもんも買うのか?」
「だって部屋に無いし」
まさか家電の買い物まで付き合うことになるなんてと思いながら、土井はまず電気屋に恭子を案内する。
「だから昨日電気屋に居たのか?」
「うん、でもあの店にはそんなに良いのが無くてさぁ~」
恭子と話をしながら、土井は昨日とは違う電気屋に向かう。
平静を装ってはいいたが、土井はかなり緊張していた。
その理由は今まで生きてきた中で、女子と一緒にどこかに買い物に行くなんてことがなく、初めての経験だったからだ。
「そういえばいつ引っ越してきたんだ?」
「昨日よ」
「引っ越し業者なんて見なかったけど?」
「そりゃそうよ、手荷物と配送業者に段ボール三つだけ持ってきてもらっただけだもの」
「荷物少なすぎないか?」
「現地で買おうと思ってたから十分よ」
「よくそんな金あるな」
「まぁね……」
土井が金の話しをすると、恭子は寂しそうに笑いながら土井にそういった。
「あ、あとテレビ欲しい」
「はぁ? テレビ?」
「家にテレビが無いから、持ってきたゲームできないのよ」
「そういう事かよ……」
なんだか大がかりな買い物になる気がしてきた土井。
ため息を吐きつつ、土井と恭子は電気屋に到着した。
電気屋は年末セールで人が多かった。
「初売りで買った方が安いんじゃね?」
「それまで洗濯機とテレビ無しで過ごすのはキツイわよ、大晦日もテレビ見たいのあるし」
「まぁ、そうだよな」
土井と恭子は店内を見て歩き始めた。
「洗濯機はこれで良いわね」
「決めるの早いな」
「洗濯機なんてどれも一緒でしょ」
「多少なりとも違いはあると思うぞ……」
恭子が洗濯機を見つけるのは早かった、洗濯機が置かれているコーナーを一周しないうちに決定し、直ぐに購入の手続きをしていた。
「次はテレビね……」
「テレビはあっちだぞ」
テレビもこの調子で早く決まるだろう。
そう思っていた土井の予想は大きく外れた。
「うーん……やっぱり8Kかしら?」
「いや、どれも一緒だろ?」
「一緒じゃないわよ! 画質が全然違うのよ!!」
「4kも8kも同じ気がするんだが……」
テレビを選ぶ時だけ、恭子は真剣だった。
大きさや画質にまでこだわり、録画機能の性能や内蔵されているHDDの容量まで気にし始めた。
恭子が悩むこと約一時間。
「じゃあ、これでお願いします!」
「お買い上げありがとうございます」
結局恭子が買ったのはその店で一番高いテレビだった。
大きさも50インチとかなりデカい。
「マジかよ……」
「さて、次行くわよ~」
「お前金大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫、カードで支払いだから」
「か、カード?」
こいつ、本当に俺と同い年だよな?
そんな事を考えながら土井は恭子の後ろについていく。
電気屋ではその他にヘアアイロンやドライヤーなども購入した。
合計の金額が15万円を超えており、土井は少しビビッていた。
「いやぁ~良かった~明日には配達してくれるってさぁ~」
「それは良かったな、じゃあ帰るか」
「なんでよ、まだ買う物はいっぱいあるわよ」
「もう既に15万使ってますが……」
「あとは雑貨と家具ね」
「一体いくら使う気だよ……」
土井は金額の大きさに驚きながら、その後も恭子の買い物に付き合った。
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