第14話


「ま、こんな感じだ」


「なるほど……下手をしたら優一さんと八重先輩のホモルートに発展していたわけですね……」


「するかボケ」


「でも、いい話ですね! 優一さん、八重さんと出会わなかったら、今も喧嘩三昧の日々だったんじゃないですか?」


「さぁな……さ、もう話は終わりだ、菓子と飲み物仕舞ってとっと帰れ」


「えぇ~酷いです~!」


 優一の言葉を無視して、芹那は優一の隣に座る。

 

「えへへ~、休みの日は良いですねぇ~優一さんとずっと一緒に居れます」


「はぁ……そうかよ」


「クリスマスの時みたいに、優しくしてくださいよぉ~」


「嫌だね」


「む~けちぃ~」


「うるせぇ、お前今日も夜まで居る気か?」


「はい! だって、優一さんにご飯作らなきゃですもん!」


「なんだよその使命感……はぁ……まぁ、お袋もお前の事気に入ってるみたいだし、好きにしろよ」


「はい! そうします!」


「たく……」


 優一はそんな事を言いながら、立ち上がって自分の部屋に戻ろうとする。

 

「さて、俺はもう少し寝るかな」


「じゃあ、私も……」


「お前は来るな」


「えぇ~、何もしませんからぁ~」


「それでもだ!」


 優一はそう言い、部屋に戻って行った。

 優一は体の疲労を癒すためにベッドに寝転がった。

 疲れがたまっていたのか、優一はすぐに眠りについた。

 隣の部屋からは芹那が何かをしている音が聞こえる。

 

「あいつ……何やってるんだ?」


 そんなことが気になりながらも、優一の瞼は重たくなり、深い眠りについていった。

 それから数時間後、優一は目を覚ました。


「ん……寝てたか……」


 すっかり辺りは暗くなっており、優一は大きく伸びをして部屋を出てリビングに向かう。


「ふあ~あ……あれ?」


 優一が戻るといつの間にか芹那が居なくなっていた。

 どうやら晩飯の買い出しに行ったらしく、机の上にはメモ書きが置かれていた。


「買い物行ったのか……」


 優一はメモを読み終えると、ソファーに座りテレビをつけてスマホを弄り始める。

 優一の母親も今日は遅くなると言っていた。

 おそらく芹那は、三人分の食事を作るために足りない材料を買いに行ったのだろう。


「あいつ……そんな気を使わなくて良いのに……」


 普段は冷たい優一だが、芹那の事が心配だった。

 芹那は優一の家に来ると毎回優一の食事を作っていた。

 だから優一は毎回言っていた、無理して自分の世話をしなくて良いと。

 しかし、芹那は毎回優一にこう言った。


「私が好きでやってるんです! やらせて下さい!」


 少し変わった女の子ではあるが、優一は自分にはもったいないほど出来た女の子だと思っていた。


「ん? 電話か?」


 テレビを見ていると、突然優一のスマホが鳴った。

 スマホの画面を見ると、そこには芹那の名前が映し出されていた。


「もしもし? どうした?」


『もしも~し……聞こえてるか? 優一く~ん……』


「……誰だお前?」


 電話から聞こえてきたのは芹那の声では無かった。

 優一はその声を聞いた瞬間、中学の頃を思い出した。

 その瞬間、優一はその声の主に見当がついてしまった。


「……お前……まさか……」


『流石に分かったか? 中学時代を思い出すぜぇ~』


 声の主は以前、高志を餌に優一を呼び出した、中学時代の先輩だった。

 

「どこに居る……」


『へへ、なんだよ、早く会いたいのかぁ~』


「あぁ、早く会ってお前をぶっ殺してやりてぇよ……」


『おぉ怖い怖い! でも良いのかぁ~そんな事を言っていると可愛い可愛い彼女がどうなるか分からないぜぇ~』


「そいつに何かしてみろ……絶対にお前らをぶっ殺してやるからな……」

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