色欲魔法の大賢者 ~淫魔力9999の最強賢者は、3度目の人生で(性的に)無双する~

是鐘リュウジ

第1話 3度目の人生は、最高効率で成長する。

「ば、ぶぅ……」


 闇の中から意識が浮上し、俺――ゼクス・エテルニータはゆっくりと目を開けた。


 手足を動かすと、ギシギシと周囲が軋む。

 どうやらカゴに入れられているらしい。


 柔らかな木漏れ日。ひんやりとした風。


 街道のようだが、人の気配は感じない。

 母の気配も、父の気配も。


 ……もしかして捨て子からのスタートか?

 だとすれば、三度目の人生にして一番みじめな生まれである。


 これでも前世では【魔導王】、前々世では【剣聖】と呼ばれていたというのに……。


 ともあれ、転生魔法は成功したようだ。

 術式に乱れが感じられないということは、時代の調整も問題ないだろう。


 だとすれば、ここはおよそ二〇〇〇年後の世界。

 俺の“宿敵”の復活を控えた、たいへん危うい時代である。


 さて。のんびりしている場合じゃない。

 三度目の人生は、最高効率で成長しなければ。


 まずはステータスを確認する。



【淫魔力】9999



 よし、【淫魔力】はマックスだ。

 前世の能力が引き継げている証拠である。


 色欲魔法を極めるには、この【淫魔力】の数値が重要なのだ。


 思えば、前回転生したときは、バカ正直に自然な発育に任せてしまった。

 一人で歩けるようになるまでの一年あまりは、母の豊かな乳房のことしか覚えていない。


 あれはあれで本来の自分を解放できる素晴らしき日々だったが、今度の俺は一味違う。



 最高効率で成長し、やがて復活する宿敵――金剛処女神・ユニヴェールを完全封印するために、色欲魔法を極めるのだ!!



 奴の完全封印こそ、俺が転生を決意した理由である。

 色欲魔法――ちょっとえっちな魔法体系は、ユニヴェールを完全封印するための唯一の手段なのだ。


 金剛処女神・ユニヴェール。

 二〇〇〇年前、あまりにお堅い禁欲思想によって世界を崩壊させかけた、金剛石さながらの貞操観念を持つ麗しき女神である。


 奴が強制してきた主な教義は、以下のとおりだ。


・恋愛するのは絶対禁止!

・えっちな本は絶対禁止!

・ひとりでするのは絶対禁止!

・谷間を見せるの絶対禁止!

・短いスカート絶対禁止!


 楽しいことをすべて奪われた前世の俺は、同志とともにパーティーを組み、金剛処女神・ユニヴェールの討伐へ乗り出したというわけだ。


 えっちなことに免疫ゼロのユニヴェールに、色欲魔法は効果抜群だった。


 色欲魔法による完イキ=ユニヴェールの完全封印。

 という状況までは持っていったが、しかし。


 前世の俺の実力では、奴を甘イキさせることしかできず――結局、二〇〇〇年ほどで効き目が切れる簡易封印を施すことしかできなかったのである。


 今度こそは最速で成長し、この人生をフルに使って色欲魔法を極めるのだ。

 そして、復活してきたユニヴェールに、問答無用の大☆大☆大絶頂を味わわせてやる!


「ばぶぅー!」


 俺はカゴの中で右手を掲げ、そこに魔力を集中させた。

 宙に七つの魔法陣が発生し、それぞれが青白い光を放つ。


 使用するのは第七階梯魔法――メギス・グロウ。

 俺が前世で開発した、急速成長魔法である。


 あとは完成形をイメージすればいい。


 そうだな……まず年齢は十代後半。

 すらりとしていながらも筋肉質な身体。脚は長く。

 顔と股間は……この時代の基準で、まあとにかくイイ感じに!


 すると、七つの魔法陣に宿った魔力がうねりを上げて――。


「……ッッ!」


 次の瞬間、俺の身体はイメージ通りに急成長を遂げた。


【淫魔力】以外のステータスはどうなっただろう。



【名前】ゼクス・エテルニータ

【種族】人間

【ジョブ】捨て子、魔導王、剣聖

【装備】なし

【状態】全裸、やや筋肉質、ご立派

【所持金】なし

【HP】1919/1919

【MP】9999/9999

【筋力】19

【防御】19

【敏捷】69

【知力】0721

【性欲】4545

【回数】1日9回(以下の要素が含まれるフィールドでは、11回以上に増発可能。 <状態>微乳~爆乳、むちむち太もも、尻肉たっぷり、乳袋、腹筋に縦ライン、汗まみれ <装備>綿ぱんつ(純白)、しまぱん(白×水色)、Tバック&ガーターベルト(黒レース)、黒タイツ、ニーハイソックス、全裸タイ <体勢>しゃがみパンチラ、階段のぼって尻たぶチラリ、膝まくら状態での授乳、顔面騎乗)



 よし、おおむね正常だ。


【筋力】や【防御】が悲惨なことになっているが、新しい身体に精神が馴染んでくれば、すぐに【魔導王】や【剣聖】としての実力を取り戻せるだろう。

 まあ、【MP】と【淫魔力】が9999ならば、危機に陥ることはないはずだ。


「あー、あー。ゼクス・エテルニータ。ゼクス・エテルニータ。あー、あー」


 発声も問題ない。

 身体の成長に伴って、舌が回るようになった。


 ただし、この状態で話せるのは二度目の人生――二〇〇〇年前の言葉だけだ。

 この地で三度目の人生を送るには、現代語を習得しなければならない。


 その前に、まず服だ。


 起き上がって周囲を見回す。

 街道のようだが、幸い人影はない。


 続いて使用するのは、第五階梯魔法――清浄なる法衣。

 これは衣服を生み出す魔法だ。


 まあ、単に衣服を生み出す魔法なら、二〇〇〇年前にも存在した。

 しかし、俺が改良した術式では……。


 右手に生まれた五つの魔法陣を大地に向けると、俺を中心に、足もとに大きな円形魔法陣が展開した。


 魔法陣が巨大化していく。

 すぐさま山の向こうまで到達し、五十……いや、六十名ほどの人間の気配と、魔獣と魔族の気配を三体ずつキャッチした。

 この魔法陣は、探知結界なのだ。


 どうやら現代にも魔獣と魔族がいるらしい。


 そろそろ、か。

 魔法陣を引っ込めると、閃光とともに魔力の層が俺の全身を包み込んだ。


 まばゆい光が収まり――衣服、完成!

 革のブーツ、布の服、そしてマント。

 魔力でできたそれらの装備は、どこか冒険者風だ。


 探知結界で読み取ったのは人間の気配だけではなく、彼らの服装の情報だ。

 それを衣服生成魔法とミックスすれば、今の時代の平均的な服装が簡単に揃えられるのである。


 服のセンスが二〇〇〇年前と大差ないのは、人類の進歩が停滞しているのか、あるいは一度世界が滅んだりして、文明が一巡してしまったのか……。


 まあ、それは後で調べよう。


 探知結界のおかげで、地理の情報も集まった。

 この世界の名はヴルヘリア。

 ここは神聖アナカリス王国の北東部にある、ファナティコという土地らしい。


 ヴルヘリアという名称は二〇〇〇年前と同じだが、国名と地名は変わっている。

 おそらく世界地図も大きく様変わりしているだろう。


 では、最後に言語の調整だ。


「ゼーランディア。メギス・ゼーランディア」


 うーん。やっぱりすぐには難しいか。


 さきほどの探知結界で、言語の情報も収集できた。

 少し練習すれば、すぐに現代語を身につけられるはずだ。


「ゼーランディア……メギス・ゼーランディア……」


 もう少しか。


「おっぱい……おっきいおっぱい……」


 よし、成功だ!

 もうちょっと練習しておこう。


 俺は腹から声を出し、のびのびと発音練習を開始する。


「おっぱいおっぱいおっぱい。胸。乳房。おっきいおっぱい。ちっちゃいおっぱい。柔らかな膨らみ。安心サイズの柔肉。豊かな丸み。どスケベボディアーマー」


「ねーねー」


「巨乳普乳微乳。巨乳普乳微乳。手のひらにちょうど収まる穏やかな幸せ。淫らな双丘。母性の象徴。たわわに実った双子の果実。いやらしい山々。やわらか砲弾」


「ねーねー!!」


「たぷたぷと揺れる乳肉。お乳様。魅惑のふわふわ地帯。ドレスを突き破らんばかりの暴力的な膨らみ。むちむちスライム。官能的な色香を発する豊満な肉の房」


「ねーったらー! ザコザコおじさ~ん!?」


「ん?」


「あ~っ! やっとこっち向いた~!」


 振り返ると、そこには一人の美少女が立っていた。


 小さいな……。見た目は十歳ぐらいだろうか。


 それはさておき、まず胸だ。


 膨らみは……皆無である。

 黒革のボンデージを着ているせいで、ぺったんこなお胸やぽっこりしたおなか、そして肉づきの薄い腰まわりのラインが大いに強調されている。


 髪の色は薄ピンク。

 艶やかなロングヘアだ。


「ねーねー、暇してるんならアタシと遊んでよ~! おじさんみたいなザコの人、ちょーど探してたんだよねぇ~」


 少女が、キシシッと悪戯っぽく笑う。

 チラリと見えた八重歯が可愛らしい。


 だが、俺は警戒心を尖らせた。


 なぜならば――。


「ほう、ロリサキュバスか。俺に何の用だ?」


 ただの美少女が卑猥なボンデージを着ているならば大歓迎だ。


 しかし、こやつは頭に二本のツノが生えている。

 そればかりか、背中にコウモリのような翼があるし、尻からしっぽが伸びているのだ。

 しっぽの先端は矢印形。

 いわゆる悪魔しっぽだ。


 やはり探知結界は間違っていなかった。

 この時代には、魔族がいるのだ。


「やだなー警戒しないでよぉ~。アタシと遊んでくれればそれでいいんだってばぁ~」


 ケラケラ笑いながら、ロリサキュバスがこちらに手を差し伸べる。


「アタシはサキュバスのスージー。おじさんは~?」


「……俺の名はゼクス・エテルニータ。ちょっとえっちな色欲魔法を極めるために、この地を訪れたんだ」


 彼女に釣られて、こちらも手を伸ばした。


 そのときだ。


「きゃあああああああああああっ!!」


 握手が成立する寸前で、スージーがいきなり悲鳴を上げた。


「知らないおじさんに、おてて握られそうになったあぁぁああ~!! 憲兵さぁぁ~んっ!!」


「なっ――!?」


 俺は瞬時にバッと飛び退き、あたりをキョロキョロ見回した。


 こういう場合、成人男性の立場は限りなく弱い。

 少女をオークとするならば、成人男性は女騎士だ。

 勝ち目はゼロ。

 どうあがいても敗北である。


 しかし――――セーフ。憲兵は現れなかった。


「ぷぷぷっ……ぷくくく……っ」


 慌てふためく俺を見て、ロリサキュバスは爆笑である。


「きゃっははははは! なっ――!? だってさ! ぷぷぷのぷー! おじさんザコすぎ! あ~楽しいっ。大人ってチョロいなぁ~」


 大人に対する尊敬の念など、まったく感じられない。

 成人男性を完全にナメきった態度である。


「どうやら、少々“わからせ”が必要なようだ。……ちょうどいい。新しい身体を馴染ませるためにも、お前には性なる犠牲になってもらおうか」


「ぷぷぷっ、おじさんにはム~リ~! だっておじさん、【筋力】も【防御】もザコザコじゃん。ゼクス・エテルニータなんてウソついたってムダだもんね~!」


 ベ~っと舌を出し、なおも嘲笑するロリサキュバスのスージー。

 俺のステータスを盗み見る程度の実力はあるようだが、肝心の【MP】や【淫魔力】の数値は見抜けていないらしい。


【筋力】や【防御】だけを見て、俺のことをザコ認定するとは……。

 ザコザコはスージーの方である。


 ……だが、『ゼクス・エテルニータなんてウソついたって』とはどういう意味だろう?

 ウソもなにも、俺は間違いなくゼクス本人なのだが……。


 まあいいか。

 それでは“わからせ”を始めよう。


 俺は眼球に魔力を込め、改めてロリサキュバスを見つめた。


 ――審理の魔眼、発動である。


 これを使えば、対象の女性にまつわるいやらしい情報や数値を可視化できるのだ。


 やがて、ロリサキュバスの頭上に文字が浮き出てきた。

 これらの文字は魔力でできており、俺にしか見えないようになっている。



【名前】スージー=ターネッツ・ケプレス

【種族】サキュバス

【ジョブ】メスガキ

【装備】夢魔のボンデージ

【状態】からかい、興奮、嘲笑

【寸法】68・52・67

【恋愛経験】なし

【交際経験】なし

【※※経験】なし

【下着】極小(はいている意味がない)

【回数】週に35回(成人男性をからかうことを好む。その反面、大人のパワーによって組み伏せられて※※※され、※※※される妄想をする機会もわずかながら存在する。)



 くっ……。俺の精神と肉体が馴染みきっていないせいで、読み取れない情報がある。

【※※経験】の意味と、【回数】の詳細が気になる……!


「それじゃーザコザコおじさん、アタシに狩られちゃおっか~!」


 スージーの悪魔しっぽがピンと勃つ。

 彼女の周囲で魔力が渦巻く。


 ちょうどいい。

 新しい身体を慣らすためにも、このロリサキュバスで色欲魔法を試してみよう。


 大人をナメたこと、たっぷり後悔させてやる……!!

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