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 公共放送の午後3時のニュース。

 男性のアンカーが黒色のスーツに灰色のネクタイを首元まで締めていた。


「午後3時のニュースです。今国会でアンドロイドによる記憶移行を制限する関連法案が可決となりました。与党の雄和党は前回の総選挙でこの関連法案の制定をマニフェストに掲げていたこともあり、早々と与党の賛成多数で可決しました。国会のサカイ記者です」


「雄和党の幹事長、西本幹事長は『この法案が可決となったのはこの国でのアンドロイドに対する不信感や死に対する考えを表明したものであり、可決できたのはとても喜ばしいこと』と記者団に話しており、『キッド社へこの国からの撤退を促す』とも話しており、テクノロジーの発展についても大きいインパクトを残しています。


 記憶移行制限関連法案は、主に4つの項目で制限が設けられます。1つ目にアンドロイドの記憶移行です。キッド社のメネスカーを代表するアンドロイドでは旧型から新型へ記憶を移行することが可能となっていますが、アンドロイドの死に関する配慮からこの国での移行を制限、実質禁止となっています。


 2つ目に故障時の記憶の取り扱いについてです。これまでは正規の取扱店で記憶をバックアップもしくは破棄することが可能でしたが、これからは国が指定した取扱窓口へ提出しデータの消去、破棄することとなります。


 3つ目には人間の記憶をアンドロイドへ移行することの禁止。キッド社のメネスカーは人間の記憶をメネスカーに移行できるサービスを行っていましたがこれらも禁止となります。


 最後に人間の記憶のバックアップ禁止。これらは人権団体である生命の風の意向が強く反映されており、人の死は一代までという考えの元、バックアップを取り扱う企業に対して廃業もしくは罰則を与えることとなっています」


「サカイさん、今回の制定でキッド社から反応はありましたか?」


「はい、キッド社からは今回の法案が可決されたことについてはまだ正式なコメントは出ておりませんが、一部の役員が『風を読みきれなかった』とコメントをしており、業績が悪化しているキッド社には痛手であることは間違いありません。また、人間の記憶を移行できる唯一のサービス・ハードウェアであったメネスカーを規制する動きはこれからのアンドロイドの発展を妨げるものであるとの声も野党から上がっています」

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