第6話 世代を超えて

 魁達は豊橋組詰所の前に立つ。

「燐花の奴は今、うちの預かりでしてね。身寄りがないもんですから。ここで面倒を見てるんですよ。帰ってると聞いてますから、ちょっと待っててください」

 魁とサクラを応接室に通し、誠司は奥へと入っていく。

 魁は直接不動のまま動かないが、サクラは落ち着きなく周りを見回す。

 その時扉が開き、体格のいい強面の男が二人入ってきた。

 サクラは鳥肌が立つような様子を見せたが、魁は黙って会釈をする。

「よ、坊主。久しぶりだなぁ」

「元気にしてたか?」

 二人の男は魁を肩を叩き、隅で怯えるサクラに目をやる。

「ん? 誠司の連れか?」

 サクラは大げさに首を横に振る。

「私の友達です」

 魁の言葉に驚きと称賛の声を上げる。

「隅に置けないねぇ」

 と魁の肩を更に叩く。

「ところで、あの鎧。走れる鎧、百式走甲、今日は着てないのか?」

 ええ、まあ。と頷く魁に構わず二人は会話を続ける。

「アイツ近頃調子良くね?」

「道場変えた」

「いや」

「刀変えた?」

「いや」

「走れる鎧に変えたんだ」

「「レーサーひゃく!」」

 最後に声を合わせて大笑いを始める。

 魁とサクラは何が可笑しいのか分からずにきょとんとしていた。

 そうしていると誠司が戻ってくる。

「坊ちゃん、すみません。燐花の奴、どこにもいねぇ」

 昨日から帰っていないらしい。

 燐花の保護責任者に当たる者も不在で、他に事情を知っている者もいないと言う。

「今までも結構ふらふらしてるやつでしたからね。人攫ひとさらいに遭う心配もないですし」

 むしろ変異して騒ぎを起こさないかの方が心配だが、それならそれで居所が分かる。

「さすがにアイツも警察沙汰になったらマズイ事くらい分かってます」

 今までも問題なかったし、さすがに捜索願にも早い。

 戻ったら一報入れてもらうという事にして、その場を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る