第7話 強くなるために -リーシャ- ⑵

見えないというのはこれ程までに恐ろしい事なのかと思った。

ただ足を一歩踏み出すという事がこれ程頼りなく感じた事は初めてだった。


頭をぶつけ、足をぶつけ、つまずき、転ぶ。


手探りで辺りを調べたとしても安心出来ない。最初の三ヶ月はそれこそアキリシカさんに頼りっきりだった。

普通に生活する事さえままならなかった。


それでも数ヶ月経つと少しずつその恐怖に慣れてくる。もちろん家具の位置等を覚える事で恐怖が低減したのもある。


アキリシカさんの手を借りずに生活が出来るようになった頃、アキリシカさんにまた家の裏手に呼ばれる。


「リーシャさん。今日から少しずつ弓の練習に入りましょう。」


「はい!」


「今日からは毎日二つの事をやってもらいます。」


「はい。」


「まずは、大木の周りを歩いて下さい。」


「……それだけですか?」


「はい。それだけです。

ただし、大木の枝には毎日別の位置に木の板をいくつかぶら下げておきます。それに当たらない様にして下さい。」


「手で探りながら進むという事ですか?」


「違います。手を使わずにただ歩くだけです。」


「え?!それでは板の位置が分かりません。避ける事は出来ないと思いますが…」


「出来ますよ。私は出来ますからリーシャさんにも出来るはずです。」


「そんな事…どうやればいいんですか…?」


「目を使わずに見てください。」


「目を使わずに…見る…?」


「はい。きっと出来ます。

そして二つ目は、そのぶら下がった板に弓を射て当てて下さい。立ち位置はこの辺がよろしいかと。」


「そ、そんな事…」


「出来ませんか?」


「…………やります。」


「はい。では頑張って下さい。」


「……」


またしてもスタスタと家の中へと入っていってしまうアキリシカさん。

優しい声とは裏腹に割とスパルタという事を一緒に住むことで理解していた。

優しいとは思うけれど、アキリシカさんは絶対に手を貸したりしなかった。

どれだけ私が困っていても本当に無理な事だけしか手伝ってはくれなかった。


でも逆を言えば、私にどうにか出来る可能性がある事柄であるが故に手を貸さない。という事。

ならばきっと私にも出来るはず。


それから毎日の日課としてその2つを行った。最初は板にぶつかってもだえ、矢を放ち地面に刺さった矢を探して回収するという毎日を送っていた。


ニャルイさんは、アキリシカさんの家で過ごす様になってから何度も足を運んでくれていた。

途中経過の観察。なんて言ってたけど心配してくれていた事はわかっていた。ニャルイさんが勧めたという事もあるのだろうけど感謝していた。

街の人達は最初は目隠しをした変な人が来たと私の事を見ていたのに、いつの間にか仲良くなり何かと声を掛けてくれた。

あまりアキリシカさんの家から出る事は無かったけど、街の人達を含めて、このペントルスという街は私にとって凄く居心地のいい暖かな街だった。

ニャルイさんの言っていた様にこの街には昔色々とあった人達が暮らしていた。

すねに傷のあるという事ではなくて、どちらかというと被害者として色々とあった人達ばかりだった。

詳しく聞いたことは無いけれど、きっと皆それぞれで辛い事があったのだと思う。そんな街の人達の大半がニャルイさんに声を掛けられてこの街に来たのだという。

あの怪しさが滲み出る誘い方は昔かららしく、皆感謝はしているもののニャルイさんの行動を呆れたと言わんばかりに見ている人が多かった。

それでもニャルイさんは声をかける事を止めなかった。


アキリシカさんが教えてくれたのは、昔ニャルイさんには凄く優しい妹さんがいたらしい。

非常に可愛らしく明るい子でニャルイさんと歳が離れている事もあって凄く可愛がっていたそうだ。

でもある日、家族で街の外に出掛けた時、氷鳥ひょうちょうに出会ってしまった。Aランクのモンスターを倒せる程の力を両親も、自分自身も持っておらず、氷鳥の思うがままにニャルイさん一家は殺されたらしい。

ニャルイさんの目の前で凍りつき、砕け散る両親。なんとか妹を引きずって逃げ出したニャルイさんはまだ息のあった妹さんを抱き締めて一人森の中で泣いていたそうだ。

その場に訪れたのはアキリシカさん。偶然の事だったらしい。今でも住んでいる場所に一人ポツンと暮らしていたアキリシカさんはたまにモンスターを狩って日々の糧にしていた。そのたまに訪れた森の中で泣きじゃくるニャルイさんと、下半身が完全に凍りつく妹さんを見つけたらしい。

妹さんの息は絶え絶えで後数分も生きられ無い状態だった。回復薬も上級回復薬でなければ治せない状態。一人で住むアキリシカさんがそんな高価な物を持っているはずもなく、為す術は無かったらしい。

そして妹さんは息を引き取る寸前にニャルイさんに向かって言ったらしい。

お兄ちゃんは生きて。と。

あまりにも残酷なお願いだとニャルイさんは泣いたらしい。そのニャルイさんを見て妹さんは微笑みを浮かべながら息を引き取ったそうだ。


アキリシカさんの手伝いの元両親と妹の亡骸を持ち帰り、現在ニャルイさんの家のある庭に埋めたそうだ。


それからニャルイさんは家族の墓のある場所に家を建て、アキリシカさんの元に弓を教わりに来たそうだ。戦闘に関するセンスは欠片も無く断念せざるをえなかったらしいが…

それが分かったニャルイさんは毎日街に出掛けては自分と同じ様に悲しい過去を引きずる人達を呼び集めた。

寂しかったのだろうか…それとも二度とあんな事が起きないようにしたかったのだろうか…本心はニャルイさんにしか分からない。

その話を聞いてからニャルイさんの明るさに少しだけ寂しさが混じっている様な気がした。


そしてアキリシカさん。彼女もまた悲しい過去を背負う人だった。一年も傍にいると何故こんな所に一人で?という疑問を持つのは道理だった。

隠しているわけでも無いとアキリシカさんは自分の事について語ってくれた。


アキリシカさんの家は代々星龍弓術を使う名家だったらしい。父も、母も、姉も星龍弓術使い。アキリシカさんももちろんその教育を小さな時から受けていた。

厳しい家だったらしいけど、アキリシカさんにとってはそこが世界の全てであり、当たり前の事だった。

そんな家に生まれたアキリシカさんは幸か不幸か弓術の才能に恵まれていた。誰よりも弓を上手く扱い、その腕は当主である父を越える可能性を秘めた物だった。


そしてそれが彼女の悲劇を生むことになる。


龍人種は強さに忠実な種族。

それが例え小さな女の子だったとしても、強ければ当主となれる。

アキリシカさんは弓に愛された事で、家族からの愛を失ってしまった。

自分達がアキリシカさんよりも弱いと分かった時、家族が家族で無くなり、アキリシカさんは両親と姉を一瞬にして失ってしまった。

アキリシカさん自身は、厳しい家でも家族を愛していた。厳しい父、美しい母、優しい姉。そんな家族を愛していた。

だけど家族はアキリシカさんを愛してはいなかった。醜い嫉妬や憎悪の感情でアキリシカさんを黒く塗り潰し、そして遂にはアキリシカさんを殺そうとした。

その時アキリシカさんは死ぬ事を受け入れようとしたらしい。

愛した家族が自分をうとましく思うのであれば、それは自分がこの世に生まれてきてはいけなかったということだと。

弓ではなく剣を携えて現れた父と母。アキリシカさんは抵抗しようとはしなかった。

剣を振り上げた父と母の顔を今でも覚えていると教えてくれた。

そう、アキリシカさんは生まれつき目が見えなかったわけではなかった。


剣を振り下ろす父と母の目の前に飛び込んだのは姉だった。

アキリシカさんを庇うように飛び込んだ姉の背に二本の剣が刺さった。


「ごめんねアキリシカ…今まで……ごめんね…」


その言葉をアキリシカさんは死ぬまで忘れないと言っていた。

父と母の手によって死を迎えた姉。

姉を殺してしまった事に耐えきれず狂ってしまった母。わけも分からず父に剣を突き立てる。

アキリシカさんを抱き締めるように死んだ姉の後ろで繰り広げられる絶望。

父が息をしなくなっても剣を突き立て続ける母。そして、最後に自分の喉へと剣を突き立てた。

一晩にして家族を失ってしまったアキリシカさんの取れる行動はあまり多くなかった。


姉とたまに遊びに行っていた森に咲くアキリス。その花はとても香りが良くお茶に用いられる事も多い花。アキリシカさんの名前の由来となった花。

そのアキリスは森の中ではもう一つの花といつも共にある。


ネリスト。


アキリスに寄生する植物でその根には強い毒がある。

自分の名の由来になったアキリス。でも本当はきっとネリストの方が自分に似ているとアキリシカさんは悲しい笑顔を見せて言った。自分は家族という物に寄生する毒だと。


失意の底にいたアキリシカさんはそのネリストの根を食べて死のうとしたらしい。結局死ぬ事は出来なかったのだが…

毒によって気を失っていたアキリシカさんは姉に会っていたと話してくれた。

死のうとした自分を叱りつけ優しく戻してくれたと。

目が覚めた時、世界は暗闇になっていた。両目の視力を失ってしまった。でも、それを当たり前だと受け入れたらしい。自分は家族を殺し、自分を殺そうとした。その罰がこれであると納得したと。

ネリストの毒によって失った視力は回復薬では治らない。上級回復薬は試されなかったらしいが、医者が飲ませた中級回復薬では治らなかったとの事だ。

アキリシカさん程の腕があれば上級回復薬くらい直ぐに買えるだろうけど、それをする事はなかった。

上級回復薬で治るか分からないのに勿体ない。なんて言っていたけれど、多分アキリシカさんは自分に与えられた罰を納得して受け入れているのだと思う。


そして目が見えなくなった事で、逆に人の些細な心の動きや感情を読み取れる様になったらしい。

つまり、アキリシカさんには嘘は通用しないという事。ニャルイさんはそれで良く叱られている。


私はその話を聞いた後、自分の話をした。アキリシカさんとは似ても似つかないものだけど、私が知って欲しかったのはマコト様という存在の事だった。


どれだけ悲しい事があっても、どれだけ自分を憎んでも、その全てを受け入れて包み込んでくれる人がいる事を知って欲しかった。


「……少し羨ましい…のかもしれませんね。」


「アキリシカさんもマコト様に会えば、きっと何か感じるものがあると思います。」


「そうですね……機会があれば是非お会いしたいですね。」


「はい!!」


アキリシカさんは姉が守ってくれた自分の命と技を誰かに託したいと常々思っていたらしい。私が来てくれて幸せだと言ってくれた事の裏に、これ程の思いがあった事を知って私は身を引き締めた。


そんな話をしてから三ヶ月が過ぎたある日のこと。

私はいつもの様に家の裏手に行き、日課をこなそうとしていた。


「今日はいい天気。」


頬に当たる日の暑さを感じる。

微かな風が吹き抜け地面に生えている草がカサカサと音を立てる。


その時、私には確かに見えた。

木にぶら下がる板の位置が。


「え?!」


自分で自分に驚いていた。なんでか分からなかった。暫くその場で固まってしまった程。

でも心を落ち着けると、その理由が分かった。


吹き抜ける風、僅かな温度の違い、音の反響…その全てを体で感じると目で見ていないのにそこにある物が見えているかのように鮮明に、手に取る様に


これが、目を使わずに見る。という事。


あまりの衝撃に私は言葉を失った。感じられる範囲であればどこまで遠くてもそこに何があり、どう動いているか分かる。


私はゆっくりと足を動かしてぶら下がる板を避ける。


離れた位置から矢を放つと全て板に命中する。


「……やりましたね。」


「アキリシカさん!!」


あまりの感動にアキリシカさんに飛びつく様に抱き着いてしまった。


「ふふふ。」


「凄いです!こんなの初めてです!」


「それこそが、私の教える星龍弓術の基礎。心眼です。」


「心眼…」


「これが出来なければ私の弓術は使えません。

まさか半年で会得してしまうとは思っていませんでしたが。」


「そうなのですか?」


「身につかない人もいるくらいですからね。

リーシャさんはエルフの方なので感受性が高いのでしょうか?」


「分かりませんが…とにかく凄いです!」


「ふふふ。良かったですね。」


「はい!」


「それでは本格的に弓術の鍛錬に入りましょう。」


「はい!!」


それからはアキリシカさんに弓術を教わりながら弓の何たるかを叩き込まれた。

時に厳しく、時に優しく教えてくれるアキリシカさんの弓術は全てが新しく、そして完成された物だった。


アキリシカさんはまだまだ発展の余地がある。とは言っているものの恐ろしく次元の高い弓術である事に変わりは無かった。


それこそ弦を引く動作や姿勢に至るまでアキリシカさんに叩きこまれる。

もちろん目隠しをしたまま。


あまりに高いレベルの弓術に私は悪戦苦闘を繰り返し、やっとの思いで吸収出来た時には既にマコト様と別れた時と同じ季節になっていた。


「それでは行きますよ。」


「はい!お願いします!」


アキリシカさんが矢に手を伸ばす気配を感じる。それに合わせて私も矢に手を伸ばす。


キンッ!


矢が私とアキリシカさんの間でぶつかり高い音を奏でる。


キンキンキンッ!


アキリシカさんの放った矢を全て撃ち落としていく。


「…………」


「………凄いですね。一年で全てを体得するなんて信じられません。」


「では?!」


「はい。私に出来るのはここまでの様ですね。」


「アキリシカさん…」


私は思わず涙を流してしまっていた。

あまりの嬉しさに、あまりの感謝に私は涙を流しながらアキリシカさんに抱き着いていた。


「よく頑張りました。私も後継者が出来て嬉しく思いますよ。」


「ふぇー!ありがとうございましたー!」


「ふふふ。」


優しく背中を撫でてくれるアキリシカさんの手はマコト様と同じ暖かさを持っていた。


「ありがとうございました!」


「いえいえ。気をつけて下さいね。」


「はい!」


一年もの間お世話になったアキリシカさんの家を出る事にした。星龍弓術を納めた証として貰った花の紋章が入った矢筒を背中に背負って。

紋章の花はいつもアキリシカさんの庭に咲いている花と同じもの。その花の名前はアキリス。

その蕾が今にも開こうとしているところを見ながら私はアキリシカさんの家を後にした。


私の個人的な目標はアキリシカさんに教わった星龍弓術を身に付ける事。そしてもう一つの目標はAランクモンスターを単独で討伐する事。


マコト様と会ったときには単独でAランクモンスターに挑む事になるなんて考えてもいなかった。

私は奴隷で特にこれと言った特技は無かった。本当にただ弓を射る事が出来るだけ。それなのにこんなにも凄い弓を作って頂けて、加えて奴隷としてでは無く、仲間として扱って下さった。


ガイストルでの晩餐会の後、マコト様は私の所へと来て少しだけ話をして下さった。

私はガイストルの一件で自分のしてきた過去の事を悔い、落ち込んで一人会場の外で星を眺めていた。


「リーシャ。」


「マコト様…主役がこんな所に出てきても大丈夫なのですか?」


「少し風に当たりたくてな。それにしても星が綺麗だな。」


「はい…」


「……」


「………」


「なぁ。リーシャ。」


「はい?」


「リーシャが今までしてきた事とか色々とあると思うけどさ。」


「…」


「それを俺達が全部取り除いてやる事なんて出来ないし分かってやるなんて傲慢は言わない。」


「……」


「でも、俺にはやっぱりリーシャが必要だと思うんだよな。」


「私が必要…ですか…?」


「あぁ。理由をあげたらキリがないけどさ。一番は…やっぱり。かもな。」


「なんとなく…」


「人を好きになったり大切に思う理由なんてなんとなく。だったりしないか?

確かに理由もあるとは思うけどさ。それを突き詰めていくとなんとなく好きだから。なんとなく大切だと思うから。だったりさ。」


「そうかもしれませんね…」


「だからさ。リーシャ。別に落ち込んでも良いし悩んでも良いからさ。俺達とずっと一緒に居てくれないか?」


「………はい。」


「ありがとな。」


そう言って私の頭に手を乗せるマコト様の顔を見て私は理解した。

色々な事があったし私自身が私自身を許せないと思える事をしてしまったのかもしれない。それでもマコト様が私の事を許してくれている限り、私はここに居ていいと。

何度助けられれば私は学ぶのだろうかと恥ずかしくなってくる。

でも、もう迷わない。マコト様に一生着いていき、そして私の一生を掛けて恩返しする事を。どんな過去を持っていても、私を許してくれるマコト様にこの先の私の人生全てを捧げると誓った。


そしてマコト様は私達が強くなる事を望んだ。ならば強くなるか死ぬしか私の前に道は無い。


龍脈山の森の中で目を閉じる。


木々を避けて通り行く風、まだ冷たさの残る地面の上を走る小動物、少し離れた枝の上で私の事を注意深く見ている小さな鳥。その全てを感じる。


この森には本当に多くのモンスターが生息している事を初めて知った。

そして、山に最も近い位置に居る存在を明確に感じ取る。


冷たい冷気を纏う大きな鳥。氷鳥。


私は氷鳥の元へと向かって森を進んでいく。

私の射程範囲内に入った。二百メートルは離れている。氷鳥はまだ私の存在にすら気が付いていない。

そしてもう一度瞼を閉じる。


心眼。その効果は目を閉じたままいろいろな物を見る力。

魔力を少しも使わずにこんな事が出来るなんて、ケン様の事を言えないな…


氷鳥から感じる気配。その中に混ざって伝わってくるのは、どの部分の防御が薄いのか、どの部分の魔力が薄いのか…

心眼は目に見える物を捉えるのでは無く、目に見えないものから得られる情報を元にしている。つまり魔力や魔法もその一つ。物質の弱点や魔法の弱点をハッキリと認識できる。

例えばシールド魔法を使ったとしても、そのシールドは全てが均一にはならない。より均一に近付ける事は可能だけど、完全な均一には決してならない。そしてそれは物質もまた同じ。

薄い部分や濃い部分が必ず存在する。その薄い部分を的確に認識する力。それが心眼の本当の力。


とはいえ、その薄い部分というのは矢に対して考えると針の先程の小さな点でしかない。そこを射抜く為にはそれだけの修練と腕、そして勘が必要になる。


それを私はこの一年間磨いてきた。


弓に矢をつがえる。キリキリと耳元で弦が鳴る。

キュンという矢が放たれた時特有の音が耳に残る。


これ程離れた位置にいる相手に有効打を与える事が出来るのか?

答えは…出来る。

それ程までに心眼で見る弱点というのは脆い部分だから。


矢は放物線を描いて森の木々の間を一直線に飛んでいく。星龍弓術。一矢滅龍いっしめつりゅう

たったの一矢で龍をも滅ぼす一撃を与える弓術。星龍弓術の基礎中の基礎の技。


硬い氷で覆われた氷鳥の首元へと飛んでいく矢に気付けるわけもなく、氷鳥はその矢を無防備に受ける。

体に纏った硬い氷の鎧。その弱点を寸分違わず撃ち抜く。パキッという氷の割れた様な微かな音が聞こえると、氷鳥の体がグラりと揺れその場に倒れ込む。


近付いていき氷鳥の傍に立つ。どうやら即死だったらしい。


ニャルイさんの仇、とまでは言わないけどニャルイさんの妹さんを思い少しだけ黙祷もくとうを捧げる。


「マコト様。」


目を開き私は自身の成長を感じながらマコト様のいらっしゃる方へと足を向けた。

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