タイム&リープ

@mileimoon

第一話 序章

 この宇宙は創世神によって作られた。

 創世神はのちに「神」と呼ばれる者たちを産み、育てた。「神」には一人一つずつ星が与えられ、管理していた。

 だが、そんな状態がいつまでも続くわけではない。何万年、何億年・・・永遠にも等しい時を経て、その肉体、心は徐々に朽ちていく。

 仮に、創世神が死んでしまうとどうなるか。

 簡単だ。宇宙のパワーバランスが崩れ、宇宙は崩壊する。そうなってはいけない、そう考えた創世神はある方法を思いつく。

 それは・・・














「後継者選抜試験?」

「えっ、もしかして知らないの?」

 ここは、神々の住処。ここには、ありとあらゆる神々が住んでいる。その一階、食堂の間と呼ばれている階で二人の神が話していた。

 一人は、美しい、澄んだ「青」の髪を持つ少女。肩にかかるか、かからないかぐらいの長さ。

 もう一人は、美しい、魅惑的な「赤」の髪を持つ少女。長い髪をそのまま下ろしている。

「呆れた〜その話題を知らないなんて、ちょっとやばいと思うよ」

 笑いながら、「スパゲッティー」と呼ばれる料理を食べる少女はルルカ。

 神々の中でもかなりの知名度を誇っている。

 逆境に耐え抜く心と適度なサボりは、一定の神々に支持されている。

「しょうがないよ。私は噂には疎いから。」

「疎い、疎くないの問題じゃあないと思うけどな〜第二の創世神さん?」

 その言葉に苦笑いを浮かべるのは、赤色の髪の少女、レクリエスカ。その彼女の苦笑いは、神々の伝統を表していた。


 神々には、生まれ持った髪の色で、様々な能力があるとされる。例えば、青色の髪は、賢く、いつでも冷静な判断が出来るなど。

 そんなある種の差別があるのは如何なものかとレクリエスカは思うが、一応はどの髪色でも平等に扱われる。二つの髪の色を除いて。


 赤と白。この二色は平等には扱われない。

 まず、赤色。赤色の意味は「全知全能」。

 中身がどんなに酷くても、敬われ、妬まれる。そして、様々な事を要求される。

 対人関係、星を他の神よりもすばらしく治める能力・・・

 悲しい色、そうレクリエスカは思う。そんな中で、この少女と同時期に誕生したのは奇跡だろう。彼女は今まで一度も「赤い髪だから」で特別扱いしなかった。それはとても嬉しい。さらに、その姿を見て、他の神々も話しかけてくれるようになった。まだ敬語は抜けていないが。

「ありがとう」とは、面と向かって言えないが、とても感謝している。

 しかし、そんな彼女にも、どうにもならない

 ものがある。それは・・・


「あっ」ルルカが驚いた表情をする。右の方向を向いたまま動かない。何があるのだろうか、そう思い、そちらの方を向くと、「白色の髪」の神が歩いていた。

 そう、白色の髪。それは、意味を持たない。いや、正確には意味を持っている。

「何もない、災いをもたらす色」と。

 そう呼ばれるのには理由がある。






「第一次宇宙間戦争」創世神と白色の髪の色をもつ神の戦い。今の宇宙にも爪痕が残っているとされている。それからというもの、白い髪の神は忌み嫌われるようになった。

 が、白い髪をもつ神など、滅多に誕生しない。その為、神々が忘れかけていた頃・・・


 白い髪の神、ワルキューレが誕生した。


「あの子も後継者選抜試験に参加するのかな?」

「そういえば、気になっていたんだけど、後継者選抜試験って一体どういうもの?」

 この質問にルルカは呆れた表情を見せつつも、丁寧に教えてくれた。


「後継者選抜試験」その名の通り、創世神の後継者を決める試験。どうやって選ぶのか。それは、「管理している星の美しさ」によって決まるらしい。何の美しさかはシークレット。その為、対応の仕方は人それぞれだ。とのことらしい。

「後継者選抜試験ね・・・ワルキューレも参加するのかなって思ったんだけれど、星って

 まだ治めているよね?」

「うん、治めてるよ。確か、天の川銀河の地球、だったと思うけれど。」

 ならば、彼女もライバルになるのだろう。

 彼女自身、選抜試験に参加するのかどうかはわからないが。

「さてと、仕事に戻ろっかな。」そう言いながら、ルルカは席を立つ。私も仕事はあるのでサボりすぎはダメだ。ふと、ワルキューレが向かっていった方向を見たが、彼女はすでにいなかった。







 ワルキューレ、それが、私に与えられた名前。

「はぁ・・・」ため息をつきながら自室に戻る。食料が尽きてしまったので仕方なく外に出たのが間違いだった。久しぶりの外は、偏見と差別に満ち溢れていた。

「出るんじゃなかった出るんじゃなかった出るんじゃなかった・・・」

 再び同じ間違いをしないように何度も何度も唱える。


 そして、数十分ほど経ち、やっと気持ちが落ち着いてきた。ふう、と思いながら顔を上げると、巨大な「地球」のホログラムがある。

 そして、次々と浮かんでは消えていく人の名前。

 天気のせいで死んでしまった人たちだ。

「さてと、いい人はいるかな?」

 最近していること。それは、後継者選抜試験を勝ち抜く為の駒探しだ。

 天気のせいで死んでしまった人を生き返らせ、駒として使う。

 美しさ、それを満たすためには、駒がどうしても必要になる。

 しかし、駒は意外と見つからない。

 私が駒探しの時に設定している条件は全部で三つだ。

 一:若い人である

 二:現実世界に逆行する意思がある人

 三:日常生活は無事に遅れるほどの常識をもつ精神異常者

 一:については、若者の方が行動力があって、現代に馴染んでいる、という推測からだ。

 そして、若い人たちは「ライトノベル」というありえない設定ばかりが溢れた物語を読んでいる人が多いので、受け入れやすいのではないか、という理由だ。

 二:については、言わずもがな。現実世界に戻る意思がなければ役に立たないからだ。

 ちなみに、生き返らせる時には、異世界転生か現実世界に逆行かを選ばせている。

 それくらいの優しさはあるのだ。

 三:については、駒にやらせる仕事が関係している。まあ、ここまでいった時点で気付いている人もいるだろう。









「人殺し」それが駒に頼む仕事だ。

 マイナスの人たちを殺す。そうすることで美しい世界が作られる。私はそう思っているし、これからも変えるつもりはない。


 さて、そんなことを思いつつ、駒を探していく。が、中々見つからない。

「今日も見つからないか・・・」そう呟き、探すのを止めようとした時・・・

「ん?・・・なになに?」

 東の方の国で名前が上がった。

 どうせハズレだろう、そう思いつつ確認すると・・・

「何このスペック!?」

 すばらしい。そうとしか言えない。ラノベを読み込んでいて、常識もある。そして若い!一四歳と明記されていた。そして、異常性。

 文句なし、というべきだろうか。

「早速向かわないと・・・」そんなことを呟きながら、部屋の片隅に移動する。そこには、幾何学模様の白い円があり、そこに立つ。

 そうすると、対面の間に移動できるのだ。

「まさか見つかるなんて・・・ふふ・・・」

 そんな彼女の後ろで光っているホログラムにはある名前が表示されていた。


「一ノ瀬 美郷」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る