あのレシピ本(3)

 メアリーは、エミリーの服を元に戻し、3人は外へ出た。

 すると、エミリーとクッキーは驚いた。

 3人の目の前には、たくさんの木が積まれ炎が燃え上がり、その上は星空が綺麗で、ここは温かい。

「凄いでしょう? キャンプファイヤー。前からやって見たかったの」

 どうやら、この星空の下で食事をするようで。


 メアリーは魔法の杖を持ち、魔法の呪文を唱えると。丸いテーブルが現れ、テーブルに料理が並び。3人は椅子に座り。クッキーには申し訳ないが、魔法で背丈を小さくした。

 いい匂いがする。エミリーは、見たこともない料理にワクワクしている。


 その料理とは。鍋が2つ用意され。1つ目の鍋には、メアリー特製のカレーフォンデュ。2つ目の鍋には、たっぷりのチーズブレンドしたチーズを溶かした鍋、特製チーズフォンデュ。それをIH調理器で温めている。その隣の大皿には、茹でたじゃがいもにブロッコリーとにんじん、他にも野菜がのり。ソーセージに鶏の唐揚げ。3種類のカットされたパン。それらを柄の長いホークにパンを刺し。それをカレーにつけて食べる。チーズ鍋も同じ。あとはサラダに飲み物


 クッキーはパクパク食べ、食べるのが早い。

「このカレー、美味しいよ! ピリッと辛いけど、すぐに消える辛さだね」

 メアリーは喜んでいる。

 2人も食べ始め。エミリーも美味しそう食べていたが、急に目頭が熱くなり。それに、メアリーが気づき。

「エミリー、どうかしたの?」

「ごめんなさい。なんか嬉しくって、こんなに楽しい食事は生まれて初めてだから」

「あれー、誰でしたっけ!? 泣かないって言ったのは?」

「別に泣いてなんかないわよ! これはいいの! あっ、クッキー! ダメ! チーズを……」

 クッキーは、カレーが入っていた鍋にチーズ全部入れてしまい。しかし、これが意外と美味しいことが分かり。メアリーは、今まで別々に食べていた。

「そういえば、おじいちゃん、言ってたけ。料理は工夫が大事だって」

「私にもそう言ってよ。メアリー、このカレーって初めて食べたけど、この国の食べ物なの?」

「わかんない。お母さん言ってたけど、カレーだけは私が作った方が美味しいんだって」

「そうなの? 確かに美味しい……。わかった! 美味しさの秘密。これって魔法なんでしょう? 魔法得意だし」

「えー!? 何!? 魔法って思ったの? 失礼しちゃう。これは手作り! 手作りに決まっているでしょう!?」

「ごめんなさい」

「いいわよ、謝らなくても。確かに魔法でも作れるけど、手作りにはかなわないの!」

「そうなんだ、あっ! クッキー食べすぎー!」

「えー!? 何でー? もう終わりなの?」

「じゃ、食べてもいいけど、デザートはなしね」

「食べるのやめる」

 やはり、クッキーはあのデザートは食べたいようで。これで、あとの2人はゆっくりと食べられる。美味しそうに食べる2人。その光景をクッキーはうらやましそうに見ていた。

 40分くらい経ち。テーブルにあった食べ物は全て完食し。メアリーは、魔法の呪文を唱え。

 すると、テーブルも椅子もテーブルの上にあった全ての物が一瞬で跡形もなく消え。エミリーは感激している。

「やっぱり魔法は凄いね……。ところで、あの皿とか鍋って何処に行ったの?」

「面白いこと聞くのね。あの山小屋の中に戻ったの。あっ、言っときますけど、ちゃんと洗ってますからね」

「えっ!? そうなんだ……」

「あっ、今、片付け全部、魔法でしてもらおうと思ったでしょう?」

「えっ!? 何でわかったの?」

「だって、顔に書いてるし」

「えっ!? そうなの? 顔洗をわないと」

 顔を触るエミリー。思わずそのしぐさに笑うメアリーに、エミリーは。

「面白かった?」

「面白くない」

「今、笑ったのにー」

 不機嫌な表情をするエミリーに、クッキーが笑い出し。

「クッキー、そこ笑うところじゃないの!?」


 キャンプファイヤーの火も消え。3人は山小屋に入って行き。楽しみにしていた、デザートの時間になり。あの2人は夕食の前にケーキ作りを見ていた。

 メアリーは、どんなケーキなのかはわかっている。おそらくとびっきりの工夫があると、ワクワクしている。ところが、テーブルの上には何の工夫も見当たらない、ただのイチゴのショートケーキ。


 クッキーは、美味しそうにあっという間に食べ、ケーキを催促している。一方、メアリーは。

「何これ!? 何なのこの味!? 美味しい! 美味しいよ、これ。こんなの食べたことがない。ねぇ!? どうしたらこんな味がだせるの!?」

 特別な材料を用意したわけではない、それなのにどうしてと思うメアリー。

 ところが、デザートはこれで終わりではなかった。次は、シンプルだが、バニラアイスとストロベリーアイス。

 それを見てメアリーは目頭を熱くさせ、美味しそうに食べ。涙をこぼしていた。まさか、こんな時にこれを作ってくれるとは。

 クッキーは、やはりあっという間に食べ、アイスを催促している。しかし、デザートはここまでで、残りは明日に。そう言われ、がっかりするクッキー。


 エミリーは後片づけをしていると、メアリーが手伝いに。

「アイス、ありがとね」

「いいえ、どういたしまして。ここはエアコンが効いてあったかいよね」

「そうだね。ところで、魔法の催促はしないの?」

「……」

「何? その期待している感の目は?」

「えー!? そんな目してた!?」

「さてと、私も手伝うから、洗い物、魔法なしだからね」

「はーい」

「じゃないでしょ!?」

「はい!」


 2人はまるで仲のいい姉妹に見え。そんな雰囲気の中、洗い物が終わると。クッキーは、椅子に座ったまま、寝ていた。


 メアリーは紅茶を入れ。

「エミリー、明日からがんばろうね」

「ありがとう。私、がんばるから」

 紅茶を飲み終え。クッキーは起こさずに、魔法で部屋へ移動。ついでにティーカップは魔法で元の位置。

 すると、その光景にメアリーは。

「えー!? 何で、ここで魔法なの!?」


 エミリーは、前王のことが心配だが、心強い味方、親友がそばにいる、そう思い。2人はおそろいのパジャマに着替え眠りにつき。クッキーは既にお休み中だが。この部屋、エミリーとメアリーの部屋は、2人分のベッドしかなかったのに、ベッドが1つ増え、部屋まで広く変化し。変幻自在凄すぎる部屋だった。

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