クマさんと、ミリュウトルネード

 張り切って街中を駆け回っていると、


「ダ~リ~ン!」


 ミリュウが笑顔で駆け寄って来ました。


 ラミアのミリュウですので駆け寄って来たという表現が正確なのかちょっと首をひねってしまうのですが、その嬉しそうな笑顔を見ると僕も自然と笑顔になってしまいます。


 元の世界にいた頃の僕が好きだったマンガの1つに、ラミアと同棲している彼氏のお話があったんだけど……あの主人公もこんな気持ちだったのかな……なんてついつい思ってしまいます。

 作者のオルカヤド先生にそのあたりをぜひお聞きしてみたかった気がしないでもないんだけど、1ファンでしかなかった僕にそんなことが出来るはずもありませんし……


「やぁ、ミリュウ。どうかしたのかい?」


 僕が立ち止まって笑顔を向けると、ミリュウも嬉しそうに笑いながら僕の腕に抱きついてきました。

 

 そんなミリュウの様子を、周囲の村のみんなが笑顔で見つめているのがわかります。

 ちょっと前までは、ミリュウのことを、


『凶暴な魔獣』

『言葉が通じないから怖い』


 そんな感じで、あからさまに避けていた感じの皆さんだったのですが……まぁ、実際に言葉も通じないですし、ある意味それは仕方がなかったのかもしれないのですが……今のミリュウは、相変わらず村のみんなと話は出来ないものの、


 いつも僕と仲良くしている

 いつも笑顔

 いつもみんなのお手伝いをしてくれる


 そんなミリュウの姿を毎日のように見続けているうちに、村のみんなの認識も変わってきたってことなのかもしれません。

 うん、僕もすごくうれしいな、それは。


 そんな事を考えている僕の腕に抱きついているミリュウ。


『ダーリンにちょっと手伝ってほしいことがあるの』

「手伝う?」

『うん、ちょっとダーリン以外にはお願い出来ないというか……お願い、手伝ってほしいの』


 そう言いながら、僕に頬ずりしてくるミリュウ。


 こういう仕草を見ていると、ミリュウは女性というよりも女の子……おっさんの僕の年齢から考えれば娘のような、といった感じに思えてしまいます。


 そんな、どこか娘を見守る父親モードでミリュウを見つめていた僕は、


「わかった、僕でよければ手伝うよ」


 力強く頷きました。


『よかった!ありがとうダーリン!』


 ミリュウは、僕の腕を引っ張って邸宅の中にあるミリュウの部屋へと連れていきました。


 その部屋は、元はシャルロッタの家の応接室の1つで、その中にあった机や椅子をすべて片付けて、替わりに大きな布団がおかれています。


 毎晩ここでミリュウは寝ているんだけど、最近はアジョイもここで一緒に寝ているそうです。


 そのアジョイは、今は湖に遊びに行っているとのことでした。

 多分、ドラコさんのところに遊びに行ったんだと思います。


 アジョイは、ラミアのミリュウと、ドラゴンのドラコさんと凄く仲良しになっています。

 これは、アジョイ自身も古代怪獣族という異形に分類されている亜人だからというのがあるのかもしれません。


 ……とまぁ、……そんな事を考えている僕だったのですが……


 そんな僕の前で、ミリュウはその長い尻尾を伸ばしていてですね、


『ダーリン……脱皮を手伝ってほしいの……一人だとうまく出来ないの』


 そう言っているんです。


 ……気のせい……いや、きのせいじゃなく、その顔が赤くなっているミリュウ。


 ……うん……そうだ。


 僕が元の世界で好きだったマンガにも、ヒロインのラミアと主人公の間でこんなイベントがあった気がします。


 その時のラミアって、皮を剥がされる度に、その感触で快感を感じちゃってどんどんその気になっていって……って、なんかそんなシチュエーションだった気が……


 で、今の僕の眼前にいるミリュウ……


 ……目が気持ち潤んでいる

 ……頬が赤い

 ……気持ち息がはずんでいる


 ……これ、発情してるようにしか見えないんだけど?

 

 『あのね、このあたりはうまく剥がせるの、でもね、こっちが難しいの……』


 そう言いながら、ミリュウは尻尾の裏側を指さしています。


 あ


 その時、僕はあることに気が付いきました。

 

 ミリュウは体をモジモジさせながら、その体を床に押しつけているんだけど……ひょっとしたらこれって発情というよりも、単純に『痒い』のかもしれません。


 ……痒すぎて目が気持ち潤んでいる

 ……痒すぎて頬が赤い

 ……痒すぎて息がはずんでいる


 ……そう、とれなくもないというか……とにもかくにも、ミリュウが辛そうなのは理解出来ました。


「じゃあ、ちゃちゃっと皮を剥がしちゃおうか」


 僕はそう言うとミリュウの尻尾に手を伸ばしていった。


* * *


 そして、およそ3時間後……


 浴室でシャワーを浴びてから、僕は自室に戻りました。


 ……いや、うん……ミリュウの脱皮は無事に済んだんです。

 ……ただ……すごかったというか……


『ダーリン、そこ……そこもう少し優しくしてほしいの』


 と言っては尻尾で締め上げられ、


『そこ、あはん! ちょっと気持ちいいの!』


 と言っては尻尾で締め上げられ、


『そこは、じっと見られると恥ずかしいの……』


 と言っては、尻尾でバシバシ叩かれ、


 とまぁ……ミリュウ的には照れ隠し的な意味合いがあったみたいなんだけど、脱皮作業の間中、その尻尾で散々攻撃されまくった僕。

 しかも、その尻尾ってば脱皮途中なもんですから、体液みたいなものでねっとりしていたんです。


 そんなわけで……


 ミリュウの脱皮が無事終了した頃には、僕はミリュウの体液でべっとべとになっていたわけです。

 

 無事脱皮が終わったミリュウは


『ダーリンありがと~、やっとすっきりしたの!』


 そう言うや否や眠り始めてしまいました。


 脱皮の最中に、


『尻尾がむずむずしちゃって、最近眠れてないの』


 とも言っていましたし、その影響があったのかもしれません。


 そんなミリュウを起こさないようにして部屋を後にした僕だったのですが、ミリュウの体液まみれのこの状態ではどこにもいけませんので、とにかくシャワーで洗い流してから自室に戻った次第なんです。


「……しかし、疲れた……」


 超身体能力を持っている僕だけど、ミリュウを傷つけないように気を遣い、なおかつ時折締め上げられたり殴られたりしながらの作業はやはり大変でした……


 精も根も尽き果てた僕は、ベッドに横になり、そのまま目を閉じました。


* * *


 ……それからどれくらい経っただろうか……


 僕が目を覚ますと……目の前にシャルロッタの顔があった。

 寝入っているらしく、シャルロッタは目を閉じて安らかな寝息をたてているではありませんか。


 横向きに寝ていた僕なんだけど……な、なぜここにシャルロッタの顔が!?


 唖然としている僕。

 すると、ここでシャルロッタが目を覚ましました。


「……あ、クマ殿……」


 そう言うと、シャルロッタはにっこり微笑みました。


「ミリュウの脱皮の手伝いお疲れさまだったのじゃ。

 慰労に来たのじゃが、クマ殿、お疲れで寝入っておられたのでな……寝顔を拝見させてもらっておったのじゃが……どうやら妾まで寝てしまったようじゃな」


 そう言って立ち上がろうとしたシャルロッタなんだけど……その視線が、僕のある一点に注がれていた。


 男性なら経験がないだろうか……


 体が心底疲れていると自分の意思とは関係なく、股間の息子がむっくり起き上がっちゃう現象……


 そう……


 ミリュウの脱皮の手伝いですっかり疲れ切っていた僕の息子がですね、不謹慎にもむっくり起き上がっていたわけ。


 で


 シャルロッタがそれに気付いちゃって……その一点を凝視しているわけ。


「あ、あの、これは……」

 思わず股間に手を伸ばす僕。

 すると、そんな僕にシャルロッタは


「……その……よ、よかったら……」


 恥ずかしそうにうつむきながら、シャルロッタは僕にそう言いました。


 顔を真っ赤にしながら、上目使いでボクを見上げているシャルロッタ。

 よく見ると、その胸元が露わになっていて……


 うん、もう、無理……

 大好きな相手に、目の前でそんな仕草をされて我慢出来る男がいるでしょうか……いや、いません。


 僕は、


「よよよ、よろしくお願いいたします」


 そう言いながらシャルロッタをベッドの上に押し倒してしまいました。

 シャルロッタは少し恥ずかしそう表情のまま目を閉じています。

 

 僕は、そんなシャルロッタの服をぎこちない仕草で脱がせていったのですが、焦っているせいで上手くいきません。

 その時でした。


 コンコン


『クマ様、起きた? 食事を持って来たんですけどぉ』


 扉の向こうから、ノックの音とともに、ピリの声が聞こえてきたんです。


 その言葉に、僕とシャルロッタは思わず飛び上がってしまいました。



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