第33話 壁の子です
ある日自宅。
「ねぇ、お兄ちゃんのクリスマスライブってチケット売れてるの?」
風呂上がりに牛乳でも飲もうと、キッチンに向かった時に千尋に聞かれた。
今回は1000人規模のホールである。俺も詳しい販売状況は聞いてない。歌やダンスに身が入らないと困るので、詳しくは聞かないようにしていた。
「この前に聞いた時は7割かな。まだ席は残っているんじゃないか?」
「ふーん、ガラガラじゃなくて良かったね」
3割席が空いてたら目立つぞ。
流石に1000人のホールで100人しか観客がいない、とかだったらかなり悲しいかも。
「お母さんが行こうかなって言ってたよ」
マジか。観客1万人よりも、母さん1人の前で歌うほうが恥ずかしいな。
あ、昔から風呂で歌ってるのは聞かれている。ならいいか。
身内チケットは2枚貰っている。恵と千尋にあげたやつだ。流石にもう1枚くれとは言えないな。
「無理してこなくてもいいのに。DVDになるからそれ見れば?」
「生で見たいんじゃないの?自分の息子だし」
まだ売っているのか気になって事務所のHPを見た。まだ販売中で残り僅かの表示。
「まだ少し残ってるみたいだけど。チケットはもう貰えないから買うことになるぞ」
千尋は母さんに言っておくと言い残し、自分の部屋に戻って行った。
うーん、チケット1枚申し込んでおくか?でも自分の名前で申込みしたのバレたら恥ずかしいかも。
きっと、
”やだ、上原君が自分でチケット買ってる。売り上げに貢献してるね”
とか言われたら嫌だ。千尋の名前で申込んでみようかな。
学校の教室。
クラスメイトの女の子がクリスマスライブのチケットを買ったらしい。
「ねぇ、上原君のライブに私たち行くからね。大きな声で応援するから、聞こえたらリアクションしてね」
マジか。クラスメイトでも買ってくれた人いたんだ。
「他のクラスの子も一緒に行く。全員で12人だよ」
「もの凄く売り上げに貢献してくれたんだ。ありがとう。気がついたら指をさしながらウインクするよ」
「歌も頑張ってね。何曲位歌うの?」
「それは見てのお楽しみだよ。新曲も披露するから期待して」
「うん、楽しみにしてるね。はい、握手」
クラスメイトが手を差し出してきたので軽く握手をする。
「ありがとう。もう手は洗わない」
「いや、洗えよ。ってお約束の会話だな。ライブ頑張るから応援よろしくな」
今度みんなで写真撮らせてねと、彼女は自分の席に戻った。
ふと視線を感じると、恵が見ていたようだ。
「千秋はモテモテだね」
「それが仕事だからな。歌ってファンを笑顔にさせる。逆に嫌われてたら怖いわ」
「仕事は理解している。だけどあんまりデレデレしちゃダメだよ。デレデレするなら私か彩奈だよ」
分かってるよ。楽しく会話はするけど、みんなはお前たち2人と違うからな。
「恵とデレデレしたい」
「だめー。お泊りの時ならいいよ。たっぷりデレデレさせてあげる」
彩奈の家。
学校帰りに彩奈の家に行く。お家でデートってやつ。
電車で隣町へ。そこから歩いて10分で彩奈の家に着いた。
うわー、なんか綺麗な家だな。壁とかがすごくお洒落。手の込んだ外観?とにかくお洒落な建物だった。
「お邪魔します。初めまして、上原千秋と言います。彩奈さんのクラスメイトで、お付き合いさせて頂いています」
彩奈ママが出迎えてくれた。彩奈ママはすごく若いし、美人だった。ちゃんと娘に遺伝子が受け継がれてる。
「いつも彩奈がお世話になってます。あら、あなたは壁の子ね。彩奈が男の子を家に連れてくるなんて初めてね」
彩奈は照れながらお義母さんに文句を言ってる。ちょっと可愛い。
駅前の洋菓子店で買ったクッキーを渡し、2階にある彩奈の部屋に入る。
彩奈の部屋は白を基本とした部屋だった。窓際に大きいベッド。壁際にはパソコンがのった勉強机。大きめのクローゼットに姿見。女子高生の部屋って感じじゃなくて、できるOLって雰囲気。
「俺の部屋と全然違う。すごくお洒落だ」
あんまりジロジロ見ないでね。恥ずかしいから。
「でも言っていい?一つ気になるもの」
なに?と首をこてんと傾げる彩奈の可愛さときたら。
「壁に俺のポスターが貼ってある」
「西野さんに貰ったんだ。いいでしょ」
いや、自分のポスターはいらないよ。さっき彩奈ママが言ってた壁の子って多分これ見ての発言だよな。
「さっき言ってた壁の子ってポスターのこと?」
「うん、お母さんには話してるよ。お父さんには言ってないけど、千秋のことは知ってると思う。よくお母さんとの話題にでるし」
おうふ。まぁ、いずれは挨拶するんだからね。”娘さんください”ってさ。
それから2時間ほど遊んで帰る。親がいるのにエッチな事できないよね?
いちゃいちゃする位で我慢?
ちゃんとやったよ。声を殺す彩奈にドキドキだったよ。むしろ彩奈のほうが積極的だったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます