45日目 外患誘致

「えっ、敵国にも売り込むんですか?! それは敵国を利する行為になるのでは……」

「これはね、考え方の問題なんだけど、敵国じゃないのよ! 敵国じゃないの! スティギアにも傭兵あっせん会社とか、戦争請負業者がいるんだけど、そこにご紹介、をしていく、流れになってるのよ」


 〈全自動戦術型ネクロマンシー〉の魔機構システム構築を担当している外注業者の死霊術師ネクロマンサー、ヴァレリウスが会議中、驚きをあらわにした。すぐさま社長がさえぎるように大声で釈明を始める。


「これはね、ものすごく優れたシステムになるということでね、いくつかの団体からお褒めの言葉をいただいてる状況でえ、いろいろな方々に喜んでもらいたい、そんな我々の思いをね、ぜひくみ取っていただけたらなって、そう思ってます」

「……」


 会議内がしんとした。

 社内の人間がなかなか言えないことを、外部の人間なら言えるのか。

 コタンは胃が痛くなると同時に、この後の成り行きがちょっと気になってやや楽しくなっていた。


「いや社長さん、私も死霊術ネクロマンシーなんてものをやってますし、清廉潔白な人間だなんて思ってはいないですよ。でもね、王国軍とスティギア軍がこの同じ魔機構システムを使って戦争したとしたら、きっと目を背けてしまうありさまが目の前に広がっていくだろうなということはわかります。王国の法律的にも、」

「いやあのね、一概に魔機構システムを同時に使用する場面が出てくるとは限らないと、我々は考えてるんですよ。ヴァレリウスさんの会社もね、このきついスケジュールの中、よくやってくれていると評価しています。感謝していますよ。それに、すべての責任はわが社にかかっておりますので。ヴァレリウスさんの社名が出ることはないわけでもありますし」

「……?」


 ヴァレリウスの言葉を遮るように社長がまくしたてる。会議が落ち着かない空気に変わりつつあった。


「いや社長さん、万が一それが起こったら、どうなるかわかってますよね? いつまでも生き返り続ける両軍の死体が、永遠に戦い続けるんですよ。まるで地獄絵図じゃないですか。我々が」

「ではここで時間となりましたので、ミーティングを終了とさせていただきます。皆様、本日はご参加ありがとうございました」


 司会進行役の本社の女魔法使いが話を遮って閉会を告げた。

 すぐさま社長が甲高い声で話し始める。会議の通信が切れるまでこの声は続いた。


「はい、ヴァレリウスさん、本日はありがとうございました! またね、詳細・進捗について、お話しできたらと思います。よろしく頼みますね! 契約金については、この後の」


 コタンの支社内の人間が顔を見合わせた。

 みんな、どういっていいかわからないようだ。


「はい、今日ももうすぐ定時だからね、皆さん報告書の作成お願いしますね」


 アムラトの冷静な声が聞こえ、全員が机に向かった。

 コタンは隣のナフェルタリを見た。彼女の顔が青くなっているのが分かった。

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