12日目 企画提案書

「じゃあコタン君には提案書のこの部分、機能一覧書の〈死亡者自動リスト作成〉の部分を作ってもらうからね。よろしくお願いします。書式はイムシャ支社のタリス部長が作成してくれたテンプレートに沿ってお願いします。チェックと修正の時間も必要だから、今から3日後くらいには完成させてね」

「え? え? え?」


 アムラトから企画提案書の指示がコタンに下った。さらっと指示を受けたコタンは混乱してしまった。手のひらと額に汗がぶわっと湧き出した。


「ちょっと聞いてもいいですか?」

「うん、もちろん。何でも聞いて聞いて」


「死亡者自動リスト作成ってなんですか?」

「うん、そうだよね。わからないよね。これは、戦争で今回の魔機構システムを使った場合の、一度の戦で死んだ人の名前を自動で書類にする仕組みなのね。会議でも言ってたんだけど。戦が終わった時、指揮官の手元の書類か、王都の管理事務所の書類が自動で作成される仕組みなんだよね」


「そうなんですか、それで、自分は何を……?」

「こういう機能ですよっていうのを、お客さんに知らせてあげないといけないでしょ? それをこの書式に従って書いてほしい」


「え? でも自分、その機能の詳しいところを知らないんですけど……」

「誰も知らないよ」


「え? え?」

魔機構システムはこれから作るんだから。これから考えるんだよ。さらに言うと、コタン君が考えるの。魔機構システムほかの部分はそれぞれほかの人が考えてるよ」


「マジですか……。え、でも自分魔法使いでもないのに、魔法の仕組みを考えるんですか?」

死霊術ネクロマンシーだから、一言で魔法っていうのとはちょっと違うんだけどね。うん、自分なりにほかの呪文書を見たりして、調べながらつくってね。でも、今回は概要みたいな感じで、かるくこんな感じですよ、っていうノリで作成しようって、呪文書作成士デザイナー部で決まったから。まずはざっと作ったものを見せてくれる?」


 それから数時間後、コタンの机には何冊かの呪文書と、白紙のままの原稿が置かれていた。

 コタンは混乱したままの頭で支社を後にした。

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