35日目 本社への道

「今月からね、コタン君月2回本社勤務になったからね」

「えっ?!」


 コタンは膝から崩れ落ちそうになった。上司のアムラトの言葉には、コタンにとってはそれほどのダメージを与えるものがあったのだ。


「な、なんでですか」

「コタン君も推進メンバーに入ったし、家元の方のプロジェクトもやってるでしょ? 会議とかは実際に本社のメンバーと行ったほうが理解の度合いも強くなるってことで、社長から指示が入ったんだよね。大変だけど、明日からよろしくね」

「あ、明日……」


 コタンは机によりかかった。

 隣の席のナフェルタリが困ったような顔でこちらを見て笑っているのが見えた。


「大丈夫、グリフォン券出てるから。2時間くらいはかかるけど、まっすぐ行けるから、通勤には困らないと思うよ」

「は、はあ……」


 グリフォン券というのは、王国中に航路を張り巡らしている輸送用グリフォンサービスの、企業用乗車券のことである。コタンが勤めている会社(魔)アマルリックでは、月極めの契約をグリフォン会社と結んでいるため、チケットを見せるだけでいつでも輸送サービスを使うことができるのだ。


「じゃ、じゃあこれからは2時間早く家を出なきゃいけないってことですか?」

「うん、それも大変だという話は出たんだよね。だから、1時間だけ家を早く出てもらっていい? 遅刻にはならないから。ただ、グリフォンに乗ってても、携帯型水晶玉モバイルギアで朝のミーティングには参加してね」


 コタンは今度こそ、本当に膝からその場に崩れ落ちた。

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