ディスティニー

夏戸ユキ

昭和の始め・れい子・ディスティニー




 高畑家の、良家の子女。れい子お嬢様。


私は、嫌になるほど、そう呼ばれて今までずっと生きてきた。


この家に生まれたのはとても、幸運で、誇らしい事だと教えられてきたけれど。


確かに、私は近所の子供たちよりとても裕福で、・・・例えば、いつもとても良い服を着ている。


お気に入りは紅のかすりの、柄の着物。ワンピース。


通り過ぎれば、うんざりするくらい、みんな私を見ているのを、知っている。


舞踊や、お花、ハイカラと言われている英会話。


使用人の子供に教えてあげれるくらい、ピアノは得意だった。


私はその花嫁修業をこなして、女学校の学業をもこなす日々。


男は女のあとに黙ってついてこい!とお兄様やお父様は言うけれど、自分でも男の人に負けないくらい、なかなか頑張っている方だと思う。


成績だって悪くなかった。お給金をもらいたい、と時に思うくらいだ。


なのに、15歳の誕生日にはすべてのお稽古事をやめる事が勝手に決まっていた。


今は、家に入り、食事の支度やお父様やお客様のお出迎えをする日々だ。


つまり、私は今、花嫁になるための修行をしている。


これが、あなたの幸せなの。


そうお母さまにも教えられてきた。


女学校を卒業したら、私は父の仕事で縁のある方と結婚する事が決まっている。


私は良家の子女なので、不満はないし、その事に対して反発をした事も無かった。


だけど、ひとつだけ気になるのは、どんな人なのだろうか。


嫌な人じゃなかったらいいのだけれど。

 

寝る前は、いつか結婚する、その相手の事を、そうやって考える日々だった。


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