第十一話『宮殿の最後』③
並んだ二つの銃口が諏訪彩女と『緋雨』を捉え、巨大な魔法陣が現れる。
「バイバイ、彩女」
最後の言葉とともにアリオが引き金を引と、アリアも同時に引き金を引いた。
魔法陣からはより強く光り輝く閃光が放たれた。
強大な力を持つ閃光はその場にある『医療システム』ごと全てを灰燼に帰した。
魔力の開放が終わると、アリオはアリアに向かって恭しく一礼した。
「お姉さま、一緒に戦えて光栄ですわ」
その声が届くと、アリアは優しく微笑んだ。すると、アリアの姿は朧気になり、揺らめいて消えた。アリオはアリアの残り香に浸るように目を閉じた。
全てが終わったかに見えた。
しかし……。
「あれ? 無い!! !!」
セーレの素っ頓狂な声が響いた。
「『緋雨』が無い!! !!」
「は? どういうこと!! ??」
「だって……見つからないんだよ……『緋雨』が。……アリアとアリオの攻撃力が強すぎるから、どっかに吹っ飛んだんじゃないかな……威力、加減してよね」
「余計な事を言ってないで、ちゃんと探しなさいよ!! 」
どれほど探しても、『緋雨』は見つからなかった。『緋雨』は『医療システム』の破壊のどさくさに紛れて、跡形も無く消え去っていたのだ。
残された可能性は『緋雨』が奪われた可能性だけだ。
アリオとセーレの目を盗み、『緋雨』を持ち去る事の出来る存在がたった一人だけいる。それはアスタロト・アルビジオスだ。
「ちょっと、セーレ!! わたしは『Lock, Stock and Barell』に勝ったのよ!! なんで『緋雨』を手に入れる事ができないの!! ??」
捲し立てるアリオに、セーレは耳を塞ぎながら考え込んでいた。
やがて、思い当たるフシが有ったのか、セーレは納得した顔でアリオを見た。
「わかったよアリオ!! 『緋雨』は『Lock, Stock and Barell』の対象じゃなかったんだ。決闘が始まった時、まがりなりにも諏訪彩女は生きていた。だから、『緋雨』は彩女のものだったんだ。決着が着いた後にアスタロトが『緋雨』を持ち去っても文句は言えないよ……。アスタロト、頭良いなぁ~♪」
「感心してる場合じゃないでしょ!! だったらそのアスタロトを追うわ!! 」
「うん♪」
アリオは強く地を蹴って駆け始めた。
セーレもその背中を追い、その漆黒の羽をはためかせた。
× × ×
真琴が目を覚ますと、全壊した研究室が視界に飛び込んできた。
アリオに撃ち抜かれた脚は治療され、包帯が巻かれてある。
彩女が入っていたカプセルも、『かつてヒトであったナニカ』が納められたカプセルも……何もかもが強大な力で一掃された後だった。
もちろん、雅の姿など、見つかるはずもない。
何もかもが遅く、徒労だった。
親友を失う悲しみで視界は昏くなり、喪失感で胸は引き裂かれた。
真琴はただひたすらに自身の無力を呪った。
慟哭する真琴を、崩れた壁の隙間から差し込む日差しが包み込んでいた。
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