亀いじめキッズと浦島さん

/*登場人物:浦島太郎 こども♂ 亀/

/*可能ならSE:海の音を好きなところに適当に小さく流す/



こども「えい! 亀め! これでも食らえ!」

/*可能ならSE:打撃音/


亀「ひいぃぃぃ、どなたかお助けをぉぉ!」(哀れっぽく)


浦島さん「こら! ナニしてるんだ!」


こども「ナニって、亀で遊んでるんだよ。見りゃわかるだろ」


浦島さん「なんと嘆かわしい! こんな道端の、公衆の面前で亀をいじって遊ぶな!」


こども「だって亀をいじめるの、楽しくない?」


浦島さん「そう言うのは、家でこっそり、母ちゃんに隠れてやるもんだ! それにその歳で亀をいじめるような性癖だなんて、世も末だな! おじさんは、いじめるところまで行き着いてないぞ! せいぜいいじるとこまでだ」


こども「じゃあ、おじさんはどうやって亀いじってんだよ」


浦島さん「まず、ティッシュが近くにあるのを確認してから、首のあたりをそっと握って、きゅっと締めて、それから上下に」

/*可能ならSE:この台詞をフェイドアウトし、情事がテーマのフランス映画や昼メロ風音楽を流し、適当なところでプチ切る/

/*SEがない場合、「以下略」とセクシーに囁く/



浦島さん「というわけだよ。おじさんはノーマルだから、亀をいじめて楽しんだりしないし、人前でなんて無理だし、人のを見るのも無理」


こども「よくわかんないけど、亀は人前でないところで、優しく扱えってこと?」


浦島さん「That's right! 人前だと御用になるし、それよりも怖いのは、なんて小さい亀なのって失笑されることだ。それに、亀に優しくするのは当然だ。傷つけたりするとバイ菌が入って腫れたりするからな?」


こども「よくわかんないけど、腫れたら怖いね」


浦島さん「自己のリビドーヘ向かうタナトスに気持ちが昂るのもわからなくはないが、そういうのはノーマルな段階を経て、酸いも甘いも噛み分けてから発現させた方がいい性癖だとおじさんは思う」


こども「全然わからないや」


浦島さん「とにかくこのことは親御さんには黙っててあげるから、二度と人前でこんなことをするんじゃない」


こども「うん、わかった。わかんないけど」


浦島さん「よし、いいこだ。亀を触ったあとは、ちゃんと手を洗うんだぞ」


こども「わかった!」


/*可能ならSE:朗らかに笑いあう浦島さんとこどもの声が遠ざかっていく。そこへかぶさる海の音。/

/*SEがない場合、少し間を置く/


亀「なんか……なんか、尊厳をすんげー踏みにじられた気がするんですけど!」












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る