登場人物紹介

一章:森の野営地の話



鈷人ドワーフの老爺


『軽口が減りましたな。』


鈷人の醸造職人。名をバルタサールと言う。元は名うての冒険者だったが、冒険のさなかに足を失い一線を退いた。200年前は勇者とともに戦場を駆けたこともあったと言うが、真偽は定かではない。現在は森の野営地の酒場で鑑定士の真似事をさせられている。



主計


『酒を飲むのが好きで、酒を集めてたら、店に成ってましたよ。』


野営地の酒場を切り盛りする主計であり看板娘。名はモニカという。眠りが浅いためか常に眠たそうな目をしている。おっとりとした顔とは裏腹に、その体には無数の入れ墨が刻まれている。若く見えるが既婚者で子持ち。彼女もまた冒険者であり、酒場の荒くれ者に勝るとも劣らない実力を持つ。



丁稚の少年


『いつか一緒にカウンターに立つこと。――少年の目標』


酒場で下働きする少年。主計に密かに思いを寄せているが、彼女が既婚でかつ子持ちとは知らないらしい。



門番の冒険者


『一杯で酔うなら、せめて上等なものがいい。』


三度の飯よりも酒が好きな冒険者。男とばかり徒党を組んでいたために、女性がやや苦手。最近の悩みは婚期が過ぎていくこと。ちなみに、一番酒場が賑わう時間帯の門番をやらされているのは、彼が酒好きの割に下戸だからである。



野営地の冒険者たち


『剣担いで、験担ぎよ。――冒険者の常套句』


かなりの実力を持つ一線級の冒険者たち。彼らが力を合わせれば森の魔物などおそるるに足らないが、簡単に纏まらないのが我が強い冒険者というものだ。


◆◆


二章:宿場町の話



獅子飾りの大剣使い


『獅子飾りなど必要ない、彼こそが獅子だ。――宿場町の冒険者』


宿場町の組合代表ギルドマスターを務める疵面の冒険者。名をマクシミリアンと言う。巨大な剣を自在に振るう膂力で持って獅子奮迅の活躍を見せる。階級もそれに見合った上級三位の緋緋色金ヒヒイロカネ。実は彼も貴族下りではあるが、それをひけらかさないからこそ彼の等級は高いのだ。



仏頂面の女神官


『神の名に於いて、不死者イモータルは抹殺せねばなりません。』


大剣使いの一党に所属する神官。名をレベッカと言う。不死者に対して並々ならぬ敵意を持つ以外は、経験なる神の僕である。そろそろ結婚して冒険者を引退したいと思っているが、その日頃の武勇伝の数々から、誰にも相手にされていないため、大剣使い相手に既成事実を作ろうとしている。



細剣使いの老魔剣師


『冒険者を続けている老人は、侮るべきではない。――冒険者の常套句。』


大剣使いの一党に所属する魔術師。名をジョシュアと言う。一党の切り札と呼ばれる凄腕の魔術師であり、二本の細剣レイピアを使いこなす熟達の剣士でもある。実は大剣使いが研鑽を積むために冒険者になると屋敷を飛び出した際に付いてきた護衛の騎士であり、大剣使いのよき理解者でもある。



貴族下りの青年


『出がらしではあるが、それでも可愛い息子だ。――ジョナサン・トールボット男爵』


数年前に冒険者になるために屋敷を飛び出し、それでも街をとびだせなかった貴族下りの青年。名をジェイムズと言う。実はそれも表向きであり、実は吸血鬼である父親のために冒険者を生贄として差し出していた。臆病で卑怯で、無能ではあるが、それでも父親想いではあった。冒険者としての階級は下級最上位の黄札。



手下の大男


『俺を怒らせて神殿の世話にならなかったやつはいない。』


宿場町で生まれ育った貧民街出身の冒険者。名をブランドンと言う。腕は立つが気性が荒く、問題騒ぎを起こしていたが、貴族下りの青年が金を握らせて手綱を握り、多少はましになった。喧嘩騒ぎでよそ者に負けたことに怒り、貴族下りの青年を殺そうとしたため吸血鬼の怒りに触れた。



吸血鬼の男爵


『酷く、悲しいくらいに、甘美だった。――愛する妻の血液の味について』


宿場町で貴族議会に名を連ねる貴族だった吸血鬼。名をジョナサン・トールボット男爵と言う。もともとは議会の重鎮だったのだが都に送り出していた息子二人が盗賊に襲われて落命し、それを切欠に死霊魔術ネクロマンスに傾倒するようになったという。残った三男を、吸血衝動を押さえつけるほどに溺愛している。

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