〖真実の愛〗エピソード①~T枝さんとの初恋編~

YUTAKA

第1話 出会

私はある専門学校へ通っていた。

そして運命の出会いとなるT枝さんと知り合ったのはあるサークルでだった。

彼女は私がサークル活動で分からないことがあると丁寧に内容を教えてくれる存在であり、そして誰とでも会話をする明朗な性格だと感じた。


サークル活動の一環で私が資料を作成していた。

そのデータ管理をする際はT枝さんが私の隣に座り、あれこれと教わりながら作業を進めたことがあった。


『分からないことは何でも質問してね!』


彼女は異性と接近して会話をすることに抵抗はなく、同じノートを共有しながら作業を進めた。

すると、私と彼女の上半身が密接することも少なくなかったのだ。


そんな女性に免疫がない私は彼女を意識しない訳がない。

サークル内には他にも女性が居たが、女性として意識したのはT枝さんだけだった。


ある日、サークル仲間8人で海水浴へ出掛けた時のこと。

先輩が乗っていた4WDのミニバンで8人が乗り、福井県にある松原海岸へ早朝から出掛けた。


福井県でメジャーな海水浴場と言えば水晶浜があるが、そこはファミリー向けで大賑わいになる海岸であった。

昔からよく言う『芋洗い状態』になるほど人が多い海水浴場なのだ。


それに比べて松原海岸の海水浴場は近深なマイナー場所で、数メートル海へと入ると大人でも足が届かないほどだから、ファミリーには敬遠される海水浴場で人影が疎らに感じた。


先輩が用意してくれたゴムボートを皆で乗ったり、外からつかまったりしながら、そのゴムボートを皆で共有して楽しんだ。


『T枝さん!一緒にボート乗らない?』

私がT枝さんを誘って沖まで行くことになった。

そしてゴムボートに二人だけで乗る機会ができ、オールを漕いでいると


『気持ちイイ海風が吹いているね♪』

T枝さんがそう言って私に向かって微笑んだ。

当日は日差しが強い日だったが本当に海風が気持ちよく、そしてT枝さんの水着姿が眩しく感じる日であった。


『今日は晴れてくれて嬉しいです』

当時の私は女性経験がなく、彼女と呼べる存在の人も居なかった。

だから素敵な女性と一緒にボートに乗って居れば、楽しくてワクワクするに決まっている。


かなり沖まで行くと乗っていたゴムボートの空気が抜けてることに気付き、乗っていたボートの真ん中が折れ込むような状態になってしまったのだ。

そして水着姿の彼女と身体が密着し始めた私は、緊張感と嬉しさの気持ちが交互に襲ってきたのだ。


『T枝さん!岸に帰りますね』

私は岸に向けて必死にオールを漕ぎ始めると


『頑張ってね~TETSUOさん♬』と

彼女はそんな状況を楽しむかのように笑顔で私に声援を送ってくれたのだ。


私と彼女は向かい合わせに座っていて、

そして岸の近くまで辿り着いた時にはボートの空気は抜けて小さくなり、お互いの下半身が密着する状態になって私の緊張は最高潮となった。


『ははは♬楽しかったね~TETSUOさん!』

彼女は私の心境など知る由も無く無邪気に笑って見せた。

そして、その頃からと言うもの私はT枝さんを女性と意識し始め、彼女のことをもっと知りたいと思い始める自分がそこには居た。


ただ一つだけ彼女のことを知っているのは・・・


彼女には『彼氏が居る』という事実だけだった。

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