佐々木仁は全てを忘れ正直に楽しむ。3

 「っで私が呼ばれたわけですか」 

 「なぜかよくTwitterのリプ欄で見る「っで俺が生まれたわけか」って言うニュアンスだったのは置いておいて、そう、だからいのりを読んだわけだよ、頼む」

 「あー分かります。Twitterやってるとその画像よく見ますよね~」

 「確かに分かるけど……。仁、なんか慣れなれしいよね。いのりちゃん最近引っ越してきたばかりなんでしょ?」

 「そうですよ♪」


いのり、生徒会(候補)に経緯を説明する。

 ひと雨降ってしまう窓外同様、伊良湖はムッと問い詰める風でかわいい。どこかの眼鏡と違ってなっ!

 っという事でこちら側にも経緯を説明いたすことにいたしますと、あの後、あのボッチ救出イベントの時に最果ての地でキャッチボールをしたわけだが、その時、いのりには姉が居るらしいみたいなことを聞いたのだ。まぁ誰か教えてはくれなかったけど………。っと言うのは嘘で、ボッチの癖に先輩の名前把握してるの?っという質問にあえなく玉砕したわけだ。なんでこの世界の住民は突っ込みたいけど無駄に芯は通っていることばっかり言うのだろうか?わ~みんなIQ高い~。

 っというこの図書室は月曜日。生徒会選挙まであと19日だ。

 先ほど同様。日すら立ち込める黒ずんだ空は、大量の雨水を蓄えていて振り出すのにはもう十分。もう時間の問題の様だ。

 その気配はこの図書室にも立ち込めていて………ってこれは人為的な物なんですけどね。コミケ雲みたいに。

 会話の内容を追っていけば分かる通り、二人の目間には火花が飛び上がっていた。争い事駄目ぜったい。

 っといのりは黒髪ツインテールをひょこっとさせながら、俺に疑問の意を唱えてきた。


 「まぁ、ボッチに掛けて……貸してあげようとしましたがどーもお友達がたくさんの様で……あれはビジネスボッチ?」

 『ない』

 「始めて俺の擁護によって俺自身が傷つけられた気がするがまぁいい。………って良くないな。友達欲しい!」


どうもキャラ迷走中高校生、佐々木仁です。まぁ本心がバレただけで大して変わってはいないのですがね。

 俺は目尻に溜まった雫をひとかけら拭うと、声音を変え本題へと進むことにした。


 「まぁそんなことはどうでもよくて、いのり文化祭のしおり持ってきてくれたか?」

 「もちろんです♪」

 「なんで仁は兄が居るのに頼まないのよ……」


伊良湖の眉間にしわが寄る。


 「最近忙しそうだし……あと兄弟なんて基本他人だよ。まだボッチ仲のいのりの方が頼りやすい。ちなみに妹も同様。リアルに「キーボード打つな!打つのは向精神薬だけにしろ」だってさ」

 「打つと鬱がかかってる!仁の妹ちゃん、めちゃくちゃうまいし!」

 「血は繋がってるのにね。君を勝手に鬱扱いとは、ほんと兄弟という物は辛辣だわ」


一人っ子らしい羽豆は何か勝ち誇ったように演じていた。まぁ兄弟と言えどガチャに当たった奴は楽しそうなのだがな。例えば板倉君とか。兄弟で大須言ったと中学の時よく楽し気に話してたな~。俺も行ったことあるけどな。荷物持ちで。父と。

 っと俺特有、ネタに困ったら同級生紹介を欠かさず行ない、話はひと段落。って確かに妹うまいな。即座に思いつくなら女流落語家目指せるレベル。俺なんてキーボード打ちながら眉間にしわ寄せてるんだよ!辛辣だよぉー。泣いていいですかね?

 す―――――はぁ―――――――。

 よし整った。続きだ続きだ。

 俺はいのりから文化祭のしおりを受け取ると、ページをペラペラめくりながら日程表のページを見つけ出し、中央に配置されたテーブルに置く。

 無機質な文字列でなされている白黒の日程表を見るに、「へ~2日間にわたってやるんだ~」だとか「文化部の出し物が各教室ごとでおこなわれるんだ~」だとかという直感的な感想が出たが思わず溜息が

出てしまう。それは高校1年生にありがちで今、初めて知ったこと。それは胸中意識だと思う。それは……。 


『思ったよりも何周もしょぼい』


息がそろった。つい数分前までの火花は鎮火されていて出てくるのは生暖かい息だけ。

はい。少し俺たちは夢を見ていたのかもしれない。アニメに染まりきってたのかもしれない。

 っと伊良湖は俺ら共通である意見を請け負うかの様に、一言、一言言葉を繋げていく。それに俺らはいちいち確認しならスピーディーに返答していく。


 「え……ナニコレ?もっとあれじゃないの?クラスの出し物は?」

 『ない』

 「メイド喫茶は?」

 『ない』

 「タピオカで10万稼ぐスーツは?」

 『旅行中』

 「文化祭の屋上でのストーリーは?」

 『まず屋上が解放されない』

 「生徒思いの先生は?」

 『皮肉な佐久先生だけ』

 「一般開放は?」

 『ない』

 「あと片付けは?」

 『全て生徒会持ち』

 「なんだよぉぉぉおおおおおおお。この文化祭!味気なさすぎでしょ!しかも生徒会重労働すぎ!ブラックだよ!無報酬だよ!」


俺はそんな叫びあげる伊良湖を全面的に見ると、俺の父親、社畜の如く作り笑いを作り、口角を上げ歌い文句を言う。


 「そしてなんとっ、生徒会選挙から期末試験も挟むので実質3週間で全てを完成させなければなりません!」

 『アットホームな職場ぁぁああああああああああああああああああああああ!』


はあ、こんな現実に俺らは立ち向かう事はできるのであろうか?

 まぁこんな経験を知れただけ、少しぐらい近づけたんじゃないかな?

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