作戦開始!っと無責任に伊良湖みなみは文芸部を巻き込む。4

 いまだにまとまらないでいたあれから2日たった金曜日の図書室。生徒会会長選まであと28日。

 本来ならば、まだ決まっていない公約を透明化しなければいけないのだが、各々の碧海高校への愚痴りあい会に移り変わっていた。

 まあ確かに意見がポンポンとでることは好ましいことなんですが質がなかなか。もお極地なんて「きれいごとばかり言っている生徒会そのものを消す」みたいな意見に皆、半分納得しかけてしまってるし……。大丈夫なのかこの生徒会(候補)。そこだよ伊良湖さん!頷かないの!なんで今まで意見の中で一番納得しちゃってるの⁈本当に大丈夫かいこの生徒会……(候補)。

 まぁでも実際、俺の中学時代の生徒会には飽き飽きしてしまっている。

 目安箱、挨拶の活性化、部活動の促進、地域とのつながり、無言清掃の徹底、その他etc……。

 結局何もなしえずに内申点だけもらっていくのが生徒会。何の役にも立っていない。ただ過大評価して全校をほめることだけしかしない。つまり無能。

 え?なんでそんなに不満が書けるかって?それは俺の母校の生徒会共が無能だったからだよ!(勿論、磯貝君意外ね?)

 そんな久ぶりの磯貝君の出演は置いておいて、もしも成し遂げるならそれこそ公約はしっかりと達成していきたい。まぁ勝てればの話だがな。

 そんな俺を照らす陽光は、図書室から俺ら一面を照らしていたが、それに一切の眠気をはらんでいなかった。


       ×       ×       ×


 あ~眠い。先ほどの発言を回収してくことにしておこう。政治家ならば一つの失言で人生は変わるだろうが俺、高校生はSNSで何かやらかさないか限り変わりはしない。

 日付はまだ変わらず金曜日。変わったのは時間だけで図書室内はブレイクタイムに入っていた。


 「あーうめ~」


なぜか味噌カツパンを貪ぼるヤリチン。今日もいるよこいつ。はあどんだけサッサー部暇なんだよ……。

 昨日いなかったもんでもう来ないと思っていたが小説は事実より奇なり。居るよこいつ。

 まぁほおっておこう。

 俺はいつもの様に250㎖缶の「ステイオンタブ」をうわ上げる。スカッと鳴り響く「ステイオンタブ」

 嗚呼「ステイオンタブ」だわ~。…………。………。

 ……一様説明しておくと「ステイオンタブ」とは缶の開け口にあるあの開け口。

 軽く滝川が自然に出てしまったが俺が言いたいのはあの八の字みたいなやつの正式名称がステイオンタブっという事。これで明日の君は人気者だぞ♪話す相手が居ればの話だがな。

 っとボッチには辛辣なことを放ったところで俺は鮮やかで、爽やかな色味をした橙色の液体を啜る。


 『すすssssssssss』


伊良湖のホットミルク。羽豆の紅茶。眼鏡のコーヒー。俺のキャロットジュース。ヤリチンのみそかつパン……。

 ヤリチン以外の音はシンクロしてよい和音を奏でていた。ヤリチン以外は。

 ふぅ~っと一息。そして一弾指の沈黙の後、伊良湖はふ―っと息を吸うと議題とは少し的を外したことを放った。


 「そい言えばだけど、みんなは参加してるけど、私が生徒会長になったら役員になるの?仁以外」

 「俺は強性参加なのね⁈まぁ少し内申やばいから喜んで御受いたしますけどね!」

 「無駄にテンション高いけど、敬語だし……。喜んでるし……」


っと羽豆から言葉が飛んできたが気にしないでおこう。

 それでもってこの会話に違和感を持った人も多いことだろう。普通なら生徒会役員は別に選挙で決めるんじゃないかと。俺も中学時代の生徒会選挙はそうであった。だがこの碧海高校は公立高校のくせに少し違うく、「生徒会長」選挙だけで、役員は「生徒会長」自身が決めていくのだ。

 まぁ先生の承認が必要ではあるが基本自由。なので必然とこういう会話が生まれるのだ。


 「っで咲は?」


っと伊良湖のホワンとした声。


 「私は大丈夫かな?どこかの誰かと違って、志望大学の推薦取れそうだし」

 「そうですか。テストの順位は俺の方が高いのによ……」

 「しょうがないよね、君?だって君が授業中寝てるのが悪いし。はぁ。てかなんで私の順位知ってるの⁈」


少し頬を赤面した後にくる軽蔑の眼差し。俺はこの眼差しを短期間で受けすぎじゃないですかね?


  「キモイな仁。ストーカーか何かか?ちなみに俺は生徒会に参加ずるぞ。こんな部活で面接話せる気がしないから」


まあ確かにそうだよな。この部活で俺、何を面接で話せばいいのだろうか?

 そして眼鏡も軽蔑な目線。はぁ俺どんな扱いなの?っという事で俺は羽豆に向かって説明することにした。


 「キモイって心外だな!俺は学年4位だからな。一位はあの……誰か忘れたが東京のお嬢様高校から転校してきた奴だろうし……だからなんとなく分かった」

 「ああ……千歳ちゃんね。私話したことあるよ。ちなみに私は学年2位~♪」

 「何その芸能人扱い。東京民を芸能人扱いするとかほんと田舎民丸出しかよ!しかも後半はタダの自慢だしね!畜生!」


ふふーんっと少し胸を張る伊良湖。胸にあたっているセーラーく服の紺が鮮やかでかわいかった。自慢は忘れたことにしとくんですけどね。ほんと勉強しよ……。 

 っと眼鏡は反射する一筋の光を立ち切る様、眼鏡をかシャリとした後不快な微笑みをし、言葉を発する。


 「ちなみに俺は3位だ」

 「てかさっきから隙あれば自分語りしすぎじゃないですかね!」

 「お前が隙を与える方が悪い」


YouTubeのコメ欄かよ……。居るよなこいつみたいなやつコメ欄で。いつもは鼻でさげすんでたけど現実だとウザすぎる。ネット警察(ニート)さん、おっすおっす。


 「私は10位だよ……はぁ。本当に君に負けてたとは………勉強しよ」


そんなことを脳内でバカやっているとたん、どこかからつぶやき声が聞こえた気がした。まあ気にしないでおこう。

 伊良湖は「ふむ」っと少し頷くと、俺なのか誰なのか、どこか分からない方向を向き、発言した。


 「これだとまだ人が足りないよね……。ほかに千歳先輩とか入れるのはどう?」

 「えっ俺は」

 「お前はいいんだ。お前は」

 「そうだよね!初めて意見があった気がするよ……。ふう」

 「なんで仁!息つくの!」


ヤリチンの猛攻を涼しい顔をして必死に熱く止める俺と眼鏡。そうだよな。こいつを入れるとクラス、学年、学校にバレたら票が一行に集まらなくなっちゃいうよ!

 ヤリチンは半泣きだったが気にしない。俺は伊良湖との会話を続けることにする。


 「確かに2年連続クラス長の千歳先輩がバックについてくれたら確かにどの候補者にも勝てる気がするよ。ヤクザが背中にいる団体みたいに」 

 「何故仁は千歳先輩をヤクザ扱い!でも確かに分からなくないかもあの雰囲気……。目で私殺されたよ……ヤクザみたいに!」

 「だよね!初めて千歳先輩を見たとき、時空が歪んだかと思ったよ!ヤクザみたいに」

 「なんで君らは倒置法でヤクザを強調しちゃうかな!確かに分からないことはないけど。ヤクザみたいに」

 『お前(咲)も倒置法愛用者かよ!』


っという事で2年連続クラス長の千歳先輩はヤクザ決定という事で今日の生徒会(候補)記録簿を占めることにする。………でも千歳先輩、可愛かったけどなあのコメダでのバイト姿。思わずギャップ萌えするとこだったぜ。

 そんな時、羽豆は「えーと」っと気まずそうに空気震わせたあと、言葉を紡いでいった。


 「盛り上がっちゃったと子悪いけど……千歳先輩生徒会選挙出るらしいよ」

 「ま~そうだろうな」


伊良湖の方を向いても茶がかった蜜柑色の髪をふわりとさせながらうなずいている。双方やっぱりな……っという感情が強いからだろう。必然的な気がするし。

 はて伊良湖の方はというと決心したように瞬間的に目を瞑ると、はっと開け拳を上げて言葉を発した。


 「改めて、打倒千歳先輩!皆さん、頑張りましょう!そして、私のためによろしくお願いしますっ」


改めてのことだったので皆困惑してしまったが、1人、2人っと拍手が起こる

 やさしいせかい、やさいせいかつ。俺もささやかではあるが拍手をすることにしよう。

 ブレイクタイムといったな?あれは嘘だ。結局壮行会みたいになってしまったし、まあいいだろう。

 振り向くと太陽が落ちてきた場所に蜂蜜色と、紅赤色地平線が迎え入れていた。

 今日も一日が終わる。

 俺は「解散」っと全員に言い渡すと、50㎖位残ったキャロットジュースを、改めて煽るのであった。

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