神や悪魔が現世に、僕はネコマタと好きに生きてます。

榊ジュン

第1話 世界が変わった日

僕、佐伯 比呂は千葉県の公立高校2年生だった、あの時の瞬間は忘れない、夏休みが始まる前日の終業式、俺は教室で先生からの退屈な夏休みの注意点を聞きながら、ボーっと窓の外を眺めていた。


良く晴れた日なのに、雷がちらほらと見え、それに興味を持った僕は先生の話をそっちのけで雷の数を数えていた、3つ、7つ、いやこれ多くないか?

空は快晴で雲一つないのになぜか所々に落ちている雷、その大きさはまちまちだがよく見ると紫色をしていてなんか変だった。


「佐伯君ッ!話を聞いていますか?」


担任の先生の声が響く、僕が外の光景について説明しようとしたその時・・・


ドドーーーンッ!!!


「「「キャアアァアアアーーーッ!!!」」」

「なんだ?爆発か?」

「オイ!、外がおかしいぞ!」

「みんな!落ち着いて!先生のいう事を聞きなさい!」


騒然とする教室、廊下越しに他の教室でも同じ状態になっているのが判る。

どうやら、この学校にもあの変な雷が落ちてしまったみたいだ。


「皆さん、落ち着いて!雷が鳴る時は外に出ちゃダメ!」


担任の声にみんなが従い、大人しくする、僕は外の雷がことに気が付いた。


「先生、雷が消えてないんだけど、そんな事ってあるのかな?」


「佐伯君、何を言ってるの?アレ、本当に雷なの?」


「オイオイッ!中から何か出てきてるぞ!」


クラスの中でもちょっと不良っぽい坂本が指をさしている先を見ると、落ちたままになっている紫色の雷の中から、何かが這い出ている。


それは、ゲームで良く見るドラゴンを思わせる形をした何かだ、大きさはすぐ近くにあるビルと比べてみると30メートルはあるんじゃないだろうか・・・


突然女子たちから悲鳴が上がり、そちらを振り向くと、先生を含めたクラスの何人かが膝を付き悶え苦しんでいた。


「キャアァァァッ!痛いッ!何かが身体に入って、来る、グルウウゥウウゥウウッ!」


「うわぁぁ、先生の身体が、背中が膨らんでるぞ?」


良く見ると、肌の色が変わってきている者や、角が生えてきている者、先生は背中にどうやら鳥の羽が生えてきているようだ。


ビリビリィッ!


苦しんでいた皆の服が破れ、特に先生に関してはブラジャーと見事な胸が見えてしまっている。


少し遅れて、他の数名も苦しみだす、そういう時はどうすればいいんだろう?保健室か?保健委員は誰だっけ?


「保健委員さん、先生たちを保健室に!」


僕は自分が的外れなことを言ってるのが判りつつも、なんとかいつも通りの行動をしようと考えていた、保健委員は吉本さんという女子だったはず・・・


「ヴァアアァァアイィィッ!」


僕は、吉本さんだった緑色の皮膚をした半魚人が返事をしたのを確認し、意識を手放した・・・


それから何時間が経ったのか、僕が意識を戻して起き上がると、既に周りは暗くなっており、僕の周りには血と肉片がこびりついた机や椅子が散らばっていた、教室の窓ガラスも殆どが割れており、僕以外は誰もいない。


注意深く周りを見回して、大きな異変に気付く、紫色の雷が全部消えていること、そして、教室から見える町の明かりが殆どないということ、慌てて自分の鞄を探してスマホを取り出すと19時23分となっていた、そして電波は圏外だ・・・


耳を澄ますと、あちこちから悲鳴や獣の叫び声が聞こえる、そうか、皆あの雷で化け物になったり、殺されたりしたのか、僕は、僕は人間のままなのかな?


慌ててスマホのカメラを起動して自撮りモードにして自分の姿を確認したら、髪の毛が白くなっている他は特に変化が見られなかった、肌の色もそのままで鱗も生えてないし、羽根もない、どうやら僕は人間のままのようだ、吉本さんの変わり果てた姿を見て気を失って、死んだと思われたのか、他のクラスメイト達はどうなったんだろう?


とにかくお腹が空いたので、教室から出ることにする。


自分の鞄を持って廊下を出て、廊下にも血や肉片が散らばっていることに気付き、本当に外に出て大丈夫なのか不安になって来た・・・


一旦教室に戻り、窓からもう一度外の様子を見る、耳を澄ますと聞こえる獣の唸り声や、人のすすり泣く声、遠くに悲鳴・・・

ダメだ、一食くらいは我慢しよう、廊下にある水道に向かうとまだ水が出たので、そこで水をたらふく飲んで、教室に戻る。


「みんなどこに行ったんだろう?なんでこうなったんだろう?」


誰もいないのに思わず声に出してみる、当然返事はない。

僕はそのまま教室で夜を過ごし、次の朝、世界が変わったことを再認識した・・・



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